戦女神
さて、情緒不安定マンこと俺キンタです。
ポタラさんと雑談しながら待つこと30分、戻った斥候の方を先頭に本隊が俺の目の前までやってきました。
怖い。
すると目の前の隊列が中央から2つに割れ、奥から煌びやかな鎧を纏った人が乗った馬がこちらに進んできた。
「貴様、名は?」
鎧を着た人は鈴のなる様な美しい声で俺の名を聞いた。
お、お、お、女騎士やないか!
まだ身体的に反応しないが、テンションアゲアゲである。
でいうか、こんな格好だし反応しなくてよかった。
「おい、早く名乗れ!」
隣にいた兵士さんが混乱している俺に命令する。
「あ、キンタと言います。」
こいつら5歳くらいの子供に厳しすぎだろ。
と、思いつつも怖いので素直に答えた。
「何故こんなところにいた?」
「それはえーと」
カクカクシカジカ
「なるほど、記憶がないと。そして我々に街まで連れて行って欲しいのだな。」
「はい。」
「しかし、我々には使命があってな。この平原に現れたという翼竜を討たねばならぬのだ。」
……どうする!アイ◯ル!
これはピンチですよ。
倒したのは信じてもらえんだろうし、よしんば信じてもらえてもろくな事にならんだろう。
この人達はいないものを探し続ける事になってしまう。
よって俺は街に行けない。
……まぁある程度調査していない事がわかれば引き返すだろうけど。
でも軍動かしてるって事は確信があって動いてるんだろうしなぁ。
あーめんどくさぁ。
「君は翼竜を見かけなかったかね?」
当然聞かれるよな。
とりあえず森でこの服にしている翼膜を拾った事にしてみるか。
ワイバーンは見てない事にして。
なんでワイバーンの翼膜だと思ったか聞かれたら面倒だが。
「ふむ、鑑定士を呼べ!」
奥の馬車から太ったおじさんが出てきた。
おおぅ、鑑定士か。
俺の素性ばれないだろうな。
「ふむ。間違いなく翼竜の翼膜ですな。」
そりゃそうだろうな。
「しかしあの堅牢な翼膜に穴が開くとは…」
ちょっ!余計なこと言うなや!
「あっ、拾った時にはもう穴は開いてて…。」
「であろうな……。しかし、翼竜の翼膜に穴を開けられるものなど、そうはおらん。勇者、龍、魔王……、他におったとしても凶悪な魔物の類いであろう。」
あー勇者とかいるんかー。
てかワイバーンてそんな強い扱いなの?
レアなの?
……あ、そうですか。
討伐に軍が必要になると。
数年に一度しか出ないと。
薄々気づいてたけどさぁ。
倒した事は墓場まで持って行こう。
♢ ♦︎ ♢
で、さしあたり。
軍の方は伝令を出し、上の命令を待ちながら、この辺りを調査する事になった。
俺は森の中を案内させられるかと思ったが、ガムシャラに進んだと言ったところ免れる事が出来た。
また、この森は結構危険で、森に入ってまでの調査はリスクが高いのでしないそうだ。
先送りにはなってしまったが、俺は街に連れて行ってもらえる事になった。
まぁ素性不明とはいえ、ガキには何も出来んだろうとの判断の様だ。
軍は200名ほどいて、大規模な野営の準備がおこなわれた。
そして保存食の様な物を食ったあと、俺は女騎士のテントに呼ばれた。
そのテントは、他のものよりも大きく、少し離れた位置に設置されていた。
「しつれいしまーす。」
そこには女神がいた。
長い黒髪に青い目。
少しつり目ぎみだが、それがまた強い意思を感じさせる。
軍属だと言うのに真っ白な肌に、細く長い手足。
胸はささやかながらもその存在をしっかりと主張している。
……これはもう女騎士やない!戦女神やでぇ!
椅子に座り、組んだ脚の奥に目が行ってしまう。
「……君は……、まだ幼いと言うのに視線は変態貴族のそれと変わらんな。」
注意されてしまった。
でへへ。
ってあれ?
隊長さんからもねばっこい視線を感じるような……?
「私の名はリリーナ・アリツベルクと言う。今日は収穫無しだと思っていたがな、いい拾い物をした。」
いい予感……嫌な予感がする。
「私は無類の子供好きでなぁ!」
ありがとうございますぅ!異世界!