名前
とりあえず服もできたし、残りの部分は全て食べて、森の肥料とした。
残った骨は邪魔だったので、森方面にぶん投げる。
骨を見て今更だが、このワイバーンがかなりでかいことに気がついた。
羽を広げた大きさは20メートルはあるのではなかろうか。
食べ切るのに2日かかったし。
2日で俺も5歳くらいまで成長した。
薄々気が付いていたが、たくさん食うほど成長するみたいだ。
これ一気に成長してヨボヨボとかないだろうな…?
食うのをやめる気は無いが。
さて、水の準備はできなかったがとりあえず出発だ。
正直もう人恋しくてたまらん。
北に行くか、南に行くか。
南の方を眺めていたとき、かなり遠くに砂埃が舞っているのが見えた。
よく見て見る。
おそらく身体能力強化は視力も強化されている。
……あれは、軍隊?
こっちに向かってきているな。
どうやら、この世界の知的生命体は人型の様だな。
安心した。
先行してくる馬影が2つ、おそらく斥候だろうと眺めていると、こちらに近づいてきた。
そりゃそうだ、だだっ広い草原に少年が一人で突っ立っているんだから。
「貴様!何者っ……?どうしたんだい、こんなところで」
斥候の一人が話しかけてきた。
どうやら子供であった事に混乱している様だ。
「いや、わかんないっす。」
正直に答えた。
「わからないとはどういう事だ?」
「気がついたら森にいまして……、森を抜けてたらここに出たって感じですかね。」
「ふむ……。」
明らかに怪しんでいるな……。
まぁどう考えても怪しいんだが。
こちらとしてはなんとかこの人達に街まで連れて行って貰いたい。
「隊長に相談する、君はここを動くなよ。」
そう言い残し、1人は引き返していった。
隊長かぁ……怖い人だったらやだなぁ。
てか、この世界の事なんも知らねーし、今思えば大丈夫なんかなぁ。
悪い国とか、戦争中とか。
まぁ考えたって仕方ないか。
もう寂しいのはやだし。
そもそも考えるのめんどくせーし。
「喉は乾いてないかい?」
残ったもう1人の人が馬から降り、水の入った皮袋を差し出しながら話しかけてきた。
「あ、ありがとうございます。」
素直に受け取って一口飲む。
「こんなところで1人とは、怖かったろう。」
立膝を突いてしゃがんだ斥候の人は俺の頭をくしゃりと撫でた。
「は、はい……。」
唐突に向けられた優しさに戸惑いを覚えながら、情けない事に俺は涙を止める事が出来なかった。
やっぱ人恋しかったんだな…。
♢ ♦︎ ♢
「君は本当に気がついたらここにいたんだね。」
「はい……。」
俺が泣き止んでから話を始めた彼はポタラさんと言う名前で、やはり斥候だそうだ。
「森で目がさめる前の事は何も覚えてないのかい?」
「はい……。」
「名前はどうだい?」
名前!
名前……?
思い出せる様な……出せない様な……。
……てきとーでいっか!
「キンタです。」
というわけで、俺はキンタになりました。
負けるなキンタ!
キンタまけるな!