成長
朝、目を覚まして、身体の調子を確認する。
うん?
なにやらすごく力が入る。
あのきのこに特殊な能力があったのだろうか?
……いや、手を見たり足を見たり身体を確認していると、成長していることに気がついた。
1歳くらいにはなったのではなかろうか。
歩けそうな気がする。
俺はプルプルしながらも立つ事に成功した!
そして、一歩一歩ゆっくりだが歩く。
まだ身体のバランスがうまく取れず、進むスピードは遅いが、慣れ次第ではなんとかなるだろう。
とりあえず、歩けるようなので歩いて今日の分のきのこを探す事にする。
すぐに3本見つける事ができた。
歩けるっていいな!
あと、歩いてるうちに気がついたが、手がかなり思い通りに動かせる。
今ならキーボードも余裕で叩けそうだ。
とりあえず昨日と同じく、きのこをすりつぶして食べる。
うまい。
さて、こうなると自力での脱出が視野に入ってくる。
いつ獣が襲ってくるかわからない森にいるのはもう嫌なのだ。
問題はどの方向に向かうかと、まっすぐ進めるか。
食べ物はきのこをあつめてきている服で包んで持っていけばいいし、飲み物はその辺に生えている蔦みたいな植物を折れば水がでてくる。……まぁ飲み食いしなくてもいい疑惑はあるが……。
せっせと脱出の準備をととのえる。
きのこをあつめていると、日が暮れてきたので、いくつか食う。(日中に歯が生えてきていたからすり潰す必要がなくなったぜ!)
明日は移動してみよう。
眠りにつこうとしたとき、ガサガサと近くのブッシュから音がして、獣がぬっと顔をだした。
(うわー!!)
ギリギリ声を出すのを我慢した俺は獣と目があった。
その獣は大きなトカゲみたいな見た目で、二股の舌をペロペロしている。
今の俺なんて、一飲みされてしまいそうだ……。
全力で逃げよう!
目線を切らさないまま、ジリジリと距離をとる。
緊迫した空気の中、先に動いたのはトカゲの方だった。
「ガァァ」
唸り声を上げたトカゲがブッシュから飛び出して、こちらに向かってくる。
後ろを向き、全力で走りだそうとしたところ、まさかの滑って転んでしまった。
終わった……!
倒れたまま後ろを振り返ると、トカゲはもうそこまで迫っていて、俺を食べようと大口をあけている。
もうどうしようもないな……。
諦めの境地にいると、足に違和感を感じた。
ガリガリとトカゲが俺の足を噛んでいる。
が、痛みは一切ない。
(???)
状況が今ひとつ掴めないが、とりあえず噛まれていない方の足で、トカゲを強打した。
かかとがトカゲの顔にめり込み、頭部が飛散した。
……こわぁ。