3歳と27歳
約2年続いた自由な日々は終わりを迎えた。姉の旦那さんの仕事がたてこんで来れなかったらしいが、お盆に日本に来れるようになったらしい。
今まで来れなかった理由は個人的には嘘っぽいと思ったが、あの子に会わなくていいかと思うとそれすら嬉しかった。
空港に出迎えにきた私たち。
姉夫婦はすぐに見つかった。そりゃあイケメン外国人がいますから。
「こんなに遅くなってしまい、申し訳ありません」
「いえいえー、3人が無事で良かったよ。
こんなにノアちゃん大きくなったんだねえー」
嫌味か、お母さん。
「ごめんね、お母さん。なかなか都合が合わなくって。雪、これお土産」
「ありがとう、いい匂いだね」
姉夫婦はお土産に茶葉を買ってきてくれた。
それから、なんとなく下から視線を感じた。
「ママだれ」
「ママのママ、えっとおばあちゃんといもうとのゆきだよ」
「私もおばあちゃんねえー」
2年たったあの子は女の子のようにかわいらしく、今から美形のオーラをだしていた。そして、どこか人ではないような空気をだしていた。
「ごめん、私急用思いだし」
「ゆき」
「えっ?」
「ゆき」
恐る恐る目線を合わせるためにしゃがんだ。
「どうしたの?」
"チュッ"
唇に何かがついてはなれた。
「ゆきしゅき」
「ノアゆきしゅき」
聞き流したかった。
「あら、おばあちゃんは好きじゃないの?」
「日本語まだあんまり覚えてないはずなのに」
「雪さんのことまだ覚えていたんですね」
「あー、私やっぱりなつかれてますねー」
声は震えていなかっただろうか。
顔は白くなっていないだろうか。
「ゆき めーっ」
「うん?」
しゃがんだ。
「痛っ」
ほっぺたを爪でひっかかれた。ほんの小さい子どもの爪とはいえ、血はでるみたいで……
「こら、ノアなにしてるの!」
「雪さんに謝りなさい」
「大丈夫だよ……」
ひっかかれたことよりも私が衝撃を受けたのは、ノアが笑っていたことだった。
「ぁあっ」
また始まる、恐ろしい時間が。
「ゆき ノア 見なきゃ めーっ」
神様、私は貴方に何かしましたか?
年月の流れを3年から2年にしました。