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その6 潜入!!……ってお前は言いたいんだろうな

 服を引っ張ってお前も見ろと主張するので指差したサキを見てみると山中に一軒の家が見える。

 そんなに遠くは無いんじゃないか。休憩所への案内を無視して別のルートに進んでしまったのかと思っていると隣からある意味予想道理のセリフが飛んできた。


「あれ見て! 見た? どうみても怪しいわよね、こんなとこに家だなんて。あれが宗教の本部かしら。なんていう宗教かしらね、謎は今私達の手によって明らかになるのよ! こんな巧妙に隠すなんて、私達が見つけたのも気付いてないかもしれないわね。強襲をかけるなら今かしら。悪のボスを倒して一躍有名になっちゃうんじゃない? ワクワクしてきた~~っ」


 それにしてもこのサキ、ノリノリである。

 静止を掛けるのが少し遅かった俺は、元の道に戻ろうとせず一直線に進むサキについていくしかなかった。

 歩きはするが、思ったより土が柔らかく足をとられるため進んでいる気がしない。

 サキだって歩き辛いだろうのに、まるで何事も無いかのように前進する。足場を気にしすぎるせいか俺との距離は開いてった。

 サキは家の横につくとこちらに手招きをする。

 早く来いと言いたいらしい。

 少し手間取りながら無舗装地帯を渡り終えると足元から硬い感触が伝わる。コンクリートで整備されているようだ。

 ようやく歩きやすくなって胸を撫で下ろす俺の隣で、相変わらずサキが怪しい怪しいと興奮している。


「こんな高いところでコンクリートを使っているなんて……それだけ立派に見せなきゃだめってことよね。他の道は舗装されてないし。ここだけ土地を私物化したのかしら……。しかも多分、費用はお布施から出てるとみた。こんなことが許されていいわけないわ!」


 そこまで言うと一息ついて俺の肩に手を置いて、言った。

「突っ込むわよ」

 言うが早いか、玄関らしき方向へ走るとインターホンも使わず来客を告げた。

 例えるならば……道場破りと言おうか。

 やまびこになるほどの大きな声に、近くで休んでいた鳥は一斉に羽ばたいていった。

「たのもーーーーーっ」

 少しの沈黙の後、家からは40過ぎくらいの男が出てきた。……なんというか……気が弱そうだ。

 こんな人と対面するとは……。

 強く出て押し切るに違いない。道に迷ったと言って切り抜けられるだろうか。いや、だがここで事を終わらせれば明日は楽しく過ごせるんじゃないか?

 心の中で天使と悪魔が争う。我々の印象と男性の平穏をとるか、俺の明日の自由をとるか。

 俺が甘酸っぱい誘惑と戦っている間にヤツはやってくれた……。


「とぼけたおじさんのフリしてもだめよ。ここが怪しい宗教の本部だって事は私にはお見通し。箱根に何度も来る人は皆ここに来てる事だってわかってるんだから」


 時が止まったのではないだろうか。

 やってやったと優越感に浸るサキにも、突然おかしなことを言われて戸惑う男性にも声をかけることはできなかった。

 ……フォローのしようがないと言った方が正しいかもしれない。

 多分心の中では「ほらほら、反論してみなさい」と思っていることだろう。

 名も知らぬ男性よ、スマン。

 申し訳なく思いながら表札に目を向けると、扉の横に板が張られているのに気がついた。板には青少年の家と書かれている。

 まさか一般人の家ではなく市だか国だかNPOだかの会館に喧嘩を売ろうとは……。

 あまりのことに真っ白になっていると、こちらの不安をよそにヤツは男性に向かってさらに言葉を続けた。


「こんなところでこっそりと何をしているのか……大体予想はつくわ。こじんまりとした団体を装って毎日とっかえひっかえ信者を招きいれ、お金を騙し取って銃とかそういうのを密輸するんでしょう。そして世界中をあなたの教徒で埋め尽くす。違うかしら」


 戸惑っていた男性は首をかしげた。

 正直、俺ももうコイツが何を言っているのかわからなくなってきた。

 突然教主にされたうえ意味のわからない計画を語られてさぞ困っているだろう。

 これ以上言わせると俺まで不審者として疑われかねない。

 食って掛かろうとするサキを軽く後ろに引っ張ると、二人の真ん中に割り込むようにして入った。


「彼女の言葉は気にしないでください。先ほど遊歩道を外れて斜面を落ちてしまいまして……どうしたものかと困っているとこの家が見えたので向かわせていただきました。彼女は落下のショックでテンパってしまったようでして……よろしければお水をいただけないでしょうか?」

 他に良い言い訳はなかったのか。

 自分で自分の首を絞めているようにしか聞こえない文章を放った自分に、これ以上無いくらいがっかりする。真っ白に燃え尽きた気分だ。

 こうなってしまえば成るように成れ。相手の反応をみるしかあるまい。

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