出会い
前書いていたやつがファイルという歴史の中から掘り出てきた
「ねぇねぇ!おじいさんあの話して!」
と小さな子供たちがある一人のおじいさんを囲んでわんやわんやと何かをせがんでいる
せがまれているおじいさんは「あぁいいよ」と優しく微笑みながら
とても懐かしそうに目を細めればとても楽しそうな声でこう続けた
「おじいさんはね、昔妖怪と旅をしていたんだよ」
と。
まだ自分が若かった頃15~6の頃だったかな?
その時おじいさんはここじゃないところに住んでいたんだ。
そしてそのおじさんが住んでいたところにあるときこんな噂が流れ込んできた
「なぁなぁ、お前さあのうさわ知ってる?」
「ん?噂ってなんだよ」
「俺らの村の裏の山あるじゃん!あそこにさ、めちゃくちゃ古い社あったじゃん?あそこに狗神が付いてるんだって!」
と俺の友人は声をあげて冗談めかしながら笑ってそういいのけた。
狗神とは祟を呼ぶとされている神で、犬神とはまた別だという。
正直そんな違いはよくわからない。
俺のいるこの小さな村でも噂の周りは早くみんなご近所みたいなものでその噂でもちきりだった。
「はぁ、そんなのいるわけねぇだろぉー」
「いやいやまじだって!なんなら今日の夜行ってみようぜ!」
「おぉ、いいじゃんいいじゃん!」
と俺と友人は噂を聞いてから直ぐの夜、軽い身支度をして裏山に行った。
山といっても普段から山菜を取りに行っているし何より一本道で迷子になることなんてない。
頂上とかいってもそんなに高い山ではないから夜でも軽々と行くことができた。
そして頂上につくといつ元からわない赤が変色して若干黒に見える鳥居に
ボロすぎて雨風も防げないんじゃないのか?と思うほどの出で立ちの社。
賽銭箱や鈴はあっても汚れているし賽銭箱は痛みすぎて横穴が開くほど古く腐っていた。
友人と俺は流石に夜の神社は不気味だなと軽く笑いながらもその社の扉を開けた。
社の扉を開ければぬるい風とともに嫌な臭いがした。草木が腐ったような臭い。
それとは裏腹に中は思っていたよりもひどくはなかった。
そして当然の如く中は、空っぽだった。
「なーんだ、やっぱり嘘じゃねぇか」
と俺がそう言って友人に同意を求めるように振り向けば
そこには友人の後ろに何かがいた。
そいつは珍しく赤い髪をしていて片目を隠すように包帯でぐるぐる巻きにしていて
着物も薄汚れていた。
そしてなによりもそいつの放つ違和感はとんでもなかった。
何かが違う。何が違うかと問われてもわからないけど何かがちがかったんだと思う。
その瞬間ゾワリと背中にムカデが這い回るような気持ち悪さが俺の心を蹂躙した。
友人も同じ気持ちだったのだろう。顔を真っ青に染めながらカタカタと震えている。
震えるせいで歯と歯がぶつかってガチガチとなっている。
するとソレが口を開いた
「…ニン、げん」
と確かにそう聞こえた。
すると、そいつはいきなり俺の友人に掴みかかって押さえつけるとギリギリと首を絞め上げた
友人も俺も必死に抵抗をした。でも力が叶わなかった。
俺なんかより全然細くてぱっとみ女か男かなんてわからないくらい華奢なやつだったのに!
友人の顔色がドンドン悪くなって目から光が抜けていき、どんどん抵抗する力が弱くなっていって
もうだめだ!死んでしまう!と思った瞬間。
赤い髪のそいつがいきなり吹き飛んだ。
なんで!?と思って吹き飛んでいった方を見てみればそこには
黒い髪を肩まで無造作にたらし、むき出しの刀を肩にとんとんと当てていかにも面倒くさいといった
表情の小柄な女の子がいた。だけどソレは人間じゃないと人目で分かった。
紫色の吸い込まれるような瞳になによりも耳と尻尾がついていたから。
「ほーらもぉ~、興奮しちゃだめだってばぁ~」
と女の子が語尾を伸ばしながら友人をなだめるような気軽な声で赤い髪に話しかけた。
だけど赤い髪のやつはその子の声も聞こえていないのかなにかブツブツと呪詛のように低い声で
つぶやきながらゆらりと立ち上がってこちらに勢いよく飛びかかってきた。
女の子ははぁとため息を付けばむき出しの刀をさやに収めて構えればそのまま
見本のような姿勢で赤い髪のやつと向き合えば面倒くさそうにまたひとつため息をついた
そしてそのまま刀をゆっくりと振り下ろして赤髪の頭にコツンと
本当にそのくらいの軽さで当てた。
もっと本気でやれよ!と叫びそうになったがその叫びは次の赤髪のやつの行動をみて出てこなかった
赤髪はなぜかその場に立ちすくめば膝から崩れるように倒れていく。
完全に倒れる瞬間に女の子がその子を受け止めれば
「まったくもー、面倒かけないでくれよー。お前らぁー」
と気軽にこちらに声をかけてきた。
そう。これが狗神と鬼との初めての出会いだった。
旅の始まりにはまだ早い