第2話:冬島、爆誕
[あっけね、なさけね、てか何だあの超展開。]
いま僕がどこにいるかなんか知ったこっちゃないけど、まず自分の死に対するそんな感情が頭をよぎった。というか、隕石に殺されるとか用心深い僕でも思わないわ。運命死ね、もっとましな殺し方しろよ。雑すぎんだろ死神。
というか。
「ここ、何処だよ・・・」死んだはずなのに、今は仰向けの状態になっている気がするし、だからこそ視界には天井が見える。ここはあの世か、異世界か。いや、後者だと僕は信じる。そうしないとやっていけない。
というか。
「どうやら、生前よりも声が高いようだ・・・」
というか。
「胸だ・・・胸があるぞぉ・・・」
そろそろ『アレ』の可能性も否定し辛くなってきた。マジでやばい。そう。
これはっ・・・!?
「恐らくは僕が女なんだろう。間違いない、というか間違いであってほしくても否定できない悲しき現状・・・ッ!!」
どうなってんだ。
体は完全に女、しかも金髪。にもかかわらず、死ぬ前と全く同じ服装だ。学ラン、その下にはワイシャツ。典型的な男子用学生服だ。素人の下手な男装じゃん、これ。
「生前でも女っぽい顔立ちって言われることさえあったのに、これじゃ完全に男の娘じゃん・・・あ、胸はあるか」
起き上がり、部屋の鏡を見る。
「金髪、碧眼、ボブカット。唯一の救いは、まあまあ美少女なところだけ。いや、救いなのか?つか、こんなん笑うわ。あはは、あっははははぁ!」
こういう小説だと、大体生きてた頃のままの姿で転生or被召喚するんだけど、まあ、あそこまで派手にやられたからな。あんなん避けられない。今頃地球ってどうなってるかな。まあ哀れな中学生二人の肉片が道端に散らばってるのは確かなんだけど。通りかかった人が「隕石落ちたところにユッケも落ちてるーww」とかなってないかな。なってないといいな。仮にも自らの元肉体を、そんなぞんざいに扱わないでほしい。というか地球自体に天変地異とか起こってるかな。まあ僕にはもう関係ない話だ。
と、自分だけの世界に浸っていると。
コンコン、とこの部屋が外界と繋がっていることを示す扉をノックする音が。
「誰かいますか―?誰か、いまthかー!」
幾分かTHの発音を大切にした声が奥から聞こえた。
「いずぃっとじゃぱにぃーーっず!?」日本語が聞こえた!?
「あ、いるんだね、そんじゃ」ガチャリ。「入るよー!」
黒上柚季だった。
「柚季ぃぃぃぃぃっ!?」
「あのぉ、突然名前呼ばれて『この人大丈夫かな、エスパーかな!』って思ったけど、あなた誰でしょうか?」
「普通じゃ考えられない原因で圧死した中学生って言ったら分かるか?」
・・・・・・。
「うっ、うぅっ・・・こんな,こんな変わり果てた姿で・・・」
「言い方が物騒だよ!?」
「いや、マジで文人なの?」「マジ」
「『文』に『人』って書く?」「そうそう」
「父親の仕事は?」「大学准教授」
「乳親(母親、の意だと信じたい)のjobは?」「人気漫画家Xのアシスタント」
・・・・・・。
「どうやらマジのようね・・・」
というか。
「あなた様はお変わりありませんね・・・つか何で僕だけ!」
「そんなんあたしに聞かれても困るよ。」
「そりゃそうだよな・・・というか」
そろそろ異世界の現地人、金髪碧眼だったりする彼らとの遭遇があってもおかしくないんだけど。まさかのメインヒロイン不在とか、そんな訳、
「あら文人くん、女子が一人目の前にいる中で、メインヒロイン不在とか思っていませんわよね?」「っ!?」完全に読まれてやがった。心を読める少女、ここに実在!
「というわけで部屋を出ようと思う、僕も」
「わっかりましたー。道案内は任せろ、ベイベー!・・・すぐそこまでだけど」
「じゃあ自身気に言うなや」
「というかさ、さっきメインヒロイン不在とか言ってなかったっけ?」
「言ってはない、思ってただけ」
「じゃあそういう訳なんだ」「あ……(ぬおおぁ嵌められた嵌められた、ヤッベェェッッ!!)」
「まあそれはいいんだけど、ヒロイン不在ならさ、」「何すか、柚季さん、なんか突拍子もないこと言う気満々な感じですけど?」
「ヒロイン不在なら、文人本人がヒロインになればいいんじゃないかな」
「うおおおっ何言ってんのこの人!僕はあんたの言いそうなことの斜め上を予想していたのに、まさか更にその斜め上を行く発言をするとはっ!!」もうプロですよね、あーた!
「いやだってさ、そのための性転換でしょう?あたしはそう思うわ」
「全ッッッッッッッッッ力で不本意ですけど!?というか性転換って言い方マジでやめて!」
「いやぁ、でもよかったよ、知り合いがいてくれて。たった一人の異世界転生だと、ほんと心細いと思うし。寂しくて拒食症になってたかもしれない」「マジで!?」
「そんなわけで、私の部屋(仮)に、招待いたしま~す!結構カオスだし、この部屋の管理者誰だよ、って感じだからさ、ちょっと気を付けといた方がいいと思うよ」
「どんな部屋だよ!」
全く。
ホント、長い付き合いになりそうだよ、幼馴染さん。