第1話:市内中学生(15)、隕石衝突により死亡 -TTTヘッドラインー
2015年12月21日。街はクリスマスムード一色だ。何処であろうとクリスマスだ。愛知の常滑だろうが新潟の糸魚川だろうがオーストラリアのシドニーだろうが全世界共通クリスマスだ。
そんな中でも、授業と言うものは確かに存在する。今は自習で、もうやること全部終わらせて暇だから読書でもしている、というワケだ。
おっと、自己紹介が遅れたね。僕の名前は冬島文人だ。初めて会う人には十中八九〈フミト〉と間違えられて、その度にストレスが溜まるが、少しも気にすることはない。こんなに読みにくい名前を付けやがった母上を力の限り恨んでおけば問題ない。
因みに今読んでいる小説というのは可愛い女の子やあり得ないチート能力を持った主人公の無双シーンなどのイラストがふんだんに盛り込まれた、所謂『ラノベ』といわれるシロモノだ。ジャンルは、ほんっとありきたりな剣と魔法のファンタジー、それもテンプレものだ。まあ、こんな異世界、僕には関係ないと思っていた。
昼休み
誰にとっても
昼休み
…あっ、無意識に川柳完成しちゃったよ。
「文人~!」「あ、柚季」柚季というのは、僕のクラスメイト、黒上柚季のことだ。
僕の隣の席で、メチャクチャな美少女だ。しかも、僕と幼稚園の時から一緒という、まさかの幼馴染属性付きだ。
「文人、せっかくだけどさ、地理の課題終わってないから手伝ってくんない?」「他当たれよ、てかわざと言ってんじゃないのー!?」「えー。そんなだから、15年も彼女できないんだよー」「じゃお前は何なの!?」くそ、柚季、ひどい事言うな。心が傷む。
…とは、言ってもなぁ…僕は社会だけは代々大の苦手だ。そして大大大の苦手だ。前回のテストでは21点を取ってしまった程だ。だから、人の課題まで押し付けられると、首が吹っ飛ぶ、否頭がパンクしてしまう。首が飛んだら即死だよな。とにかく、実際は僕が柚季に教えられるほうが合っているのだ。
「ま、文人は社会だけなら壊滅的だからね。頼りにしてないぞ、相棒っ」クリティカル!
うわぁ、はっきりと言い切った。い、いつか見返してやるんだからな!そんでたよりになる相棒になってや…いや、今コイツ僕のこと相棒って言った?言ったと信じよう。そう思わなきゃやってらんない、ネガティブ思考じゃ心が腐る、荒む、壊死する!
昼休み終了。5限、開始…ッ!
とは言いつつも、今はとても眠い。理科とか授業受けなくても大体わかるから、いいや、授業の一回くらい(第三者ナレーション:因みに冬島文人と言う男は、いつも自分にこう言い聞かせ、毎回5限のみ寝ている、サイテーな奴だ!)。
……寝よう。
そして時は(一時間ほど)経ち……
「……クソ、暑いな…よく寝れない…つか誰だよ、ストーブの温度ここまで上げたの……やな奴…」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、文人。火事だよ、火事。音楽室から出火したらしいの」
「なんだよ、柚季。僕は坊さんになる気はないし、主婦でもなんでもない。分かったらもうちょいねかせてくれ……」
「火事だって!しかもあたしが言ってるのは出家じゃなくて、出火!火が出たの!」
「……今、なんて言った」
「だから火事なの!ほかのクラスメイトほとんど逃げたし、逃げてないのあたし達だけなんだって!妙に暑いのもそのせいよ!」
………うぇ。
「はああぁぁぁぁぁっっ!?」一瞬で目が覚めた。覚醒した。
「あの、ドユコト?火事って何!?てかなんで音楽室なんかから出火したんだよ!」
「原因は解らないけど、音楽室があるのは特別教室棟、それも3階。対してこの3年生教室があるのは音楽室から最も遠い、普通教室・職員室等の2階!出火した部屋から距離があっただけラッキーよ。火の手が来る前に、こんな危険な建物からはさっさとおさらばよ!」
「ええっ!?…あ、ああっ!てか、集合とかないんだよな?」
「そんな真面目な奴、全校の2割もいないから!みんな錯乱して、道具とかほったらかしてかえっていくわ!」
「分かった!よし、帰ろう!」
「よっしゃ!道具は最低限のものだけ持って!」
「了解!」
~1階~
「ひゃあああああっ!にげなきゃあああっ!」
「うわっ、うわあああ!」
「だすけでぇっ、ゆ゛きいぃっ、わ゛たしだから゛、灯花…っ!火を、げしてお゛ね゛がいはや゛くあ゛ついっ、あ゛づい゛あづい゛あづい゛い゛たい゛っっ!」
「灯花っ!?待って、今助けるから…」
「やめろ!もう灯花の火を消しても、恐らくは助からない!」
「でも、でもっ…!」
「ゆ゛き、はや゛く、い゛のちの、ひを、けし……っああ゛あ゛ああぁぁああぁぁぁぁああ」
「灯花ぁぁぁっ!」
……そんな地獄絵図にはなっておらず。
「案外、らくに脱出できたね…」
「そう、だな。思い描いてた地獄絵図があるんだけど、聞く?」
「いや、いい。なんか嫌な予感がするから。その話の中であたしの友達の誰かが焼かれるとか、そういった類の。」
「……エスパーかな。」本当に分からない。何でここまで正確に人の心を読めるんだよ。
「まあいいわ。早くしないと火の手が回ってくるかもしれないから、早く脱出よ!」
「了解!」
「よし、ここまでくれば火は来ないだろう。あとは家に帰るだけだ」
もう校舎とかどうなってもいい。明日からはプレハブ校舎だ!
「文人、あれなんだろう?」
「何がだよ……って」
かなり上空から、まっすぐ巨石が落ちてくる。恐らくは落下の衝撃波なども考えれば避けようがない。僕は、一つだけあの石の正体として思い当たるモノがあった。
「……隕石!」
「やっぱり!?しかもこっちに落ちてきそう!」
なんだよ、火事関係ないじゃん、僕ら死ぬじゃん!そう心の中で嘆きつつ。
見積もって20秒後には落ちてきそうな宇宙物質を見上げ。
「文人、何やってんの!?にげようよ!」
焦る柚季を無視して僕は半笑いで叫ぶ。
「あー、えーーっと………あ、はは……あ、諦めない!!!」
しばらくして、脳髄から足の指までがすり潰され、肉片に還る音が聞こえ、その直後、目の前が黒に変わった。
つまり。
中学生、冬島文人、死す!!