ある国の滅亡へ至るおとぎ話
【第71回フリーワンライ】
お題:
囚われたのは王子様
フリーワンライ企画概要
http://privatter.net/p/271257
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
王宮に賊が侵入した――
貴人が攫われた――
人の口に戸は立てられぬもの。王宮は黙して語りませんでしたが、その噂は瞬く間に国中に広がりました。街という街、平野という平野、川という川、山という山、森という森、高所閉所を問わずくまなく行き渡りました。
それは魔物の徘徊する“深き森”でも例外ではありませんでした。もっとも、深き森に訪れたのは噂ではなく事実の方でしたが。
賊は塒に魔法で連れ帰った貴人を下ろすと、丁重に傅きました。
「ご機嫌麗しゅう、王子様」
王子様は少々当惑した様子でしたが、取り乱すことはありませんでした。
「苦しゅうない。そちは誰ぞ?」
「私めは深き森に住まう魔女でございます。恐れながら王子様」
魔女は平伏して言いました。
「許す。申してみよ」
「私を后に召して下さいませ」
その国の王様がお隠れになった時、お世継ぎはただの一人、幼い王子様だけでした。
近臣はただちに王子様を頂くことはせず、摂政を立てて、戴冠式を行える成人の歳まで王子様を補佐することにしました。
摂政はまずその権限をもって、城中の女中を解雇しました。同時に城内を女人禁制とし、王子の身辺へみだりに女性を近づけることを禁じました。
これは王子様に取り入るために女を利用することを防ぐためでした。王子様を擁する派閥から縁遠い貴族は歯噛みしたものです。
それもこれも全ては未来の国王のため。王国の繁栄のため。王子様はその国で一番の教育を受け、君主としての器を磨かれていきました。
王子様も徐々に政にも慣れ、早くも名君の資質を垣間見せるようになりました。とはいえまだ数えで十を越えるばかり。辣腕振るって指揮指導というわけには参りません。
幸いにも重臣は優秀な者たちで、全ての問題は彼らの間で議論され、まとめられ、その後に摂政が王子様へと上げるので、王子様のすることは首肯か、「許す」と許可するか、印を押すだけでした。最終的な判断は王子様の認可を得ることになりますが、その前の段階で、摂政があらゆる不備を取り除いたのでした。
おかげで王子様は一度として何かを否定したことはありませんでした。王子様は全てを受け入れる器量を備えましたが、それは丁寧に丁寧に不具合を取り除かれてきたがゆえの器量でした。
王子様への申し上げに否やはあり得ませんでした。
魔女は平伏して言いました。
「私を后に召して下さいませ」
「許す」
こうして王子様は深き森の魔女と結ばれました。
『ある国の滅亡へ至るおとぎ話』了
「囚われた」成分が少ない気がする。もっとこう、魔女の手練手管を凝らして籠絡する感じが。
慣れないことはするもんじゃないな。