似て非なる者達
音を出しているそれ、いやそれらは、四つ足で地を駆ける獣と己と同じ形を持った者達だった。
四つ足は己と同じ形を持った者に、四つ足が持つ牙、もしくは爪を持ってして襲い掛かりる。同じ形をした者達はその手に持つ丸い物でいなし、また逆の手に持つ鈍く光る棒の様な物で叩いている。獣はその棒で叩かれるたびに、赤い物を迸らている。
その赤い物が出る度に獣の動きが弱まっている。あれは、獣を動かすのに必要な物なのだろう。それは、己にも流れているのだろうか?
試しに己の腕を壁に叩きつけてみるが、多少の衝撃が己の腕に来たものの、あの赤い物が出る事は無かった。己にはあの赤い物は流れていないのか、はたまた赤い物ではなく、もっと別の何かが流れているのかもしれない。
考えてみるが、分からない。
またそれらを観察していると、己と同じ形をしている者達の中には獣と同じ赤い物をその体から流し、地面に横たわっている者もいる。己の体からは赤い物は流れない。
つまり、あの者達は己と似た形ではあるが、己とは全く別の物なのだろう。
暫く観察を続けていたが、ついに獣の牙が己と同じ形をした者に届いた。首に突き立てられたそれが抜けると同時に、赤い物が大量に吹き出し、それが地面に落ちる頃には己と同じ形をした者も倒れ伏した。
獣が吼える。すると、獣が居た通路の奥から、獣と同じ形の小さな物が複数現れた。その小さな獣は己と同じ形をした者に喰らい付き、そこから引き剥がした何かを咀嚼している。獣もまた、その何かを咀嚼している。
そして、何かが剥がされるたびに、己と同じ物が現れる。己の腕や足、また胴にあるそれと同じ物がだ。つまり、己とあの者達の差はあの『何か』があるか、無いかという事、そしてあの『赤い物』が流れているか、いないかという事だ。
あの何かを全て、剥がし終えた獣たちは去って行った。
あの者達は最終的に己と同じになったが、己の様に動くことは無かった。
あの者達が使っていた、棒の様な物と丸い物は己にも使えるだろうか。