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第3話 魔術師のミス

 ある夜、僕は屋敷の留守番をしていた。

 好奇心で屋敷に入って、シグの仲間として、魔術を練習したあの日から、もう何日ほどたったのだろうか。

 昨日、試しに学校に行ってみると、僕は驚いた。

 教室の風景も変わっていない。

 クラスメイトも、変わっていない。

 ただ一つ、違ったこと。

 それは。

 

 ……僕は、そこにいなかったことになっていた。

 

 誰も僕のことを覚えていなかった。

 僕は、クラスメイトだけではなく、僕とシグ以外の全人類の記憶から、完全に消滅してしまったらしい。

 全く、不思議な話だ。

 

 そんなことを考えていると、一人の男の子が入ってきた。

 ああ、気の毒だなぁ、本当に。

 せめて、シグがいる時に来れば、綺麗な姿で人形になれたのにね。

 勿論、シグは鋏で、僕は魔術でやるので、綺麗なのは僕のほうだが、シグの方が失敗はない。

 でも、シグの命令だ。

 シグが言っていたとおり、人形にするしかない。

 僕はニヤリと不気味に笑いながら、呪文を唱えた。

「あ、君も人形にされに来たのか……人形にしてあげるよ? ……『メイキング・ア・ドール』」

「わ、うわああああああ!!」

 そして、今日は、時を繰り返す力を使って、時を繰り返せ、と言われたのだった。

「よーっし、じゃあ時を繰り返さないとな!」

 そうは言ったものの、この魔術は苦手だった。

 時を繰り返すのはシグの特権。

 だから僕は、これの魔術はあまりやったことがなかった。

 そして、一度も成功したことはなかった。

「『ザ・ワールド……我、望む全ての時よ、再び時を刻め』」

 と、その時。

 カチャリ

 シグがもどってきた

「『ザ・ワールド』できたじゃない」

「ありがとう」

「しかも、ちゃんと綺麗に人形に出来ているわ。さすがね」

「ありがとう、シグ」

 人を殺したというのに、褒められることなのだろうか。

「じゃあ、私、もういちど外に散歩しに行くから。よろしくね」

「はーい」

 

 しかし、僕はとてつもないミスをしていたのに気がついていた。

 

 それはこの人形に、心が残っていたからだった。

 

 心が残っている人形には、繰り返す力がうまく働かない。

 心が生きている人間は、今いる場所に留まろうとする力が働いてしまうからだ。

 僕もそのようにしてできてしまったとシグに聞いていた。

 シグが、僕を人形にしようとしたとき、気が散るようなことでもあったのだろうか、ミスに気がつかずに人形にしてしまったらしい。

 そのために僕は、心だけが残った、体だけ人形の姿をした物体になってしまったようだ。

 つまり、この子は、僕と同じように、人形遣いになるのだ。

 かわいそうな人だ。

 僕と同じように、好奇心で来たならいいのだけれど、迷ったとかが理由だったら尚更だ。

 心が残っている、ということを証明する証拠はないけれど、ほかの人形を作る時とは明らかに違和感がある。

 とりあえず、もういちど人形にしてから、もういちど時間を繰り返そう。

 かわいそうだけど、それ以外、なにもできない。

『メイキング・ア・ドール……我が望む者を人形にしろ』

 

 Continue to next loop……


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