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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第五章 支配される街
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042 メイドの思惑と支配録

 アービット鉱山での巨龍種討伐の知らせはギルド本部より全世界へと発信された。

 『たった四人の若き生徒が最強のモンスターである巨龍を討伐し、世界の要所である要塞都市バトランドを救った』――。

 四人の生徒の名前、所属は瞬く間に世界を駆け巡る。


 ギルド本部から報酬を受け、久々に故郷に帰省した頃にはすでに街は人で溢れ返っていた。

 英雄を一目見ようと世界中から集まってきた野次馬達。

 しばらくはこの街も騒ぎが続くのだろう。


 俺はフィメルや生徒らと一旦別れ、テレミウス家の屋敷に戻った。



「お帰りなさいませ、クレル様」


 まるで俺がこの時間に帰宅することを予知していたかのように、シイラが俺を出迎える。

 英雄となって戻ってきた俺に対し、まったく依然と態度が変わらないシイラ。


「只今戻りました、シイラさん。街はすごい騒ぎですね」


 彼女に上着を預け家に上がる。


「ミリアは? まだ学校ですか?」


 長らく家を空けたせいでミリアの顔を忘れてしまいそうになる。

 そんなことがある訳はないが、彼女のことになると気持ちに余裕が生まれなくなるのは何故なのだろう。


「……ミリア様は奥様と共に訓練校におります。今日は面談の日ですから」


「面談? ……ああ、裁縫科の昇級試験の」


 もうそんな時期かと、自分の中に流れる時間の感覚を疑ってしまう。

 ミリアは将来洋裁師ドレスメイカーになることを目指しているのだ。

 こんな日に面談など周囲が騒がしくてまともに出来ないのではないか。


「……帰ってきて早々ミリア様のことばかりですか」


 シイラはそっと俺の背中から手を回し、優しく俺を抱きしめた。

 今は誰も家に人がいないとはいえ、人に見られたら困るような行動をシイラ自ら行うとは珍しい。


「巨龍種討伐、おめでとうございます。街は今、その話題で溢れ返っております。クレル様は何故、生徒らに名誉と勲章を?」


 シイラの言わんとしていることが手に取るように分かる。

 彼女はきっと、俺が全ての功績を受け取り、この街に戻ってくると考えていたのだろう。

 今、この屋敷の周りには野次馬はひとりもいない。

 きっと生徒ら四人の屋敷周辺は溢れんばかりの人でごった返していることだろう。


「……知りたいか、シイラ」


 俺は彼女の手を荒々しく取り、真正面から彼女を自身に引き寄せた。

 目と目が合い、今にもお互いの唇が付きそうな距離だ。


「……はい、クレル様。貴方の英雄譚を。そして、貴方の支配録を――」


 彼女が言い終わる前に、俺は氷魔法を発動した。

 氷の微粒子が屋敷外の空間を覆い、時間が止まる。

 この街で自由に動けるのは俺とシイラの二人だけ――。

 俺は強引に彼女を抱き、リビングのソファへと押し倒した。


 シイラのメイド服が捲られ、細く白い足が目に映る。

 しかし彼女は隠そうとはせず、俺に挑戦的な眼差しを向けるだけだ。


「……くく、シイラ。お前は二重人格者ではないのか?」


 シャツのボタンを一つずつ外し、シイラを見下ろす。


「貴様がそれを言うか。私はずっと貴様の帰りを待っていたのだ。早く私を犯せ。私をグチャグチャにしろ」


 俺からひと時も目を離さず、彼女は大きく足を開いていく。

 真っ白な大股が俺の瞳に映り込む。


「相変わらず何を考えているのか読めない女だ、お前は」


「単純さ。貴様の女になって、私も名誉と勲章をもらう。レイノルム家の再建のためなら、悪魔にでも魂を売る覚悟がある」


「ほう……?」


 シイラから目を離さず、俺は異空間から一冊の書物を召喚した。

 それを彼女の視線の前にゆっくりと翳す。


「……これは?」


「もう一冊の『魔法書』だ。炎を司る禁断の書――」


「!! 炎魔法……!」


 彼女の手が書物に伸びた瞬間、俺はそれを異空間に隠した。

 当然それをシイラに託すことなどしない。

 ただ彼女の動揺する姿が見たいがための所業――。


「これは誰の手にも渡さない。永久に俺が保管する。氷魔法で作った異空間に、な」


「……」


 一瞬だけ歯ぎしりをしたシイラだったが、すぐに諦めたように脱力し、小さくため息を吐いた。

 面白みのない奴め。

 ならば望み通りグチャグチャにしてやろう。


「――――!」


「――――」


「――――!! ――――!」


 ――シイラの声が、無音の世界に響く。

 久しぶりのこの感覚。

 俺は彼女を支配し、この街を支配する。


 まずはテレミウス伯爵からだ。

 奴の耳にもギルド本部での功績は届いているはず。

 早々に外交から引き上げ、この屋敷に戻ってくるだろう。


「クレル……! クレ……ル……!!」



 俺の名を呼ぶ愛しき奴隷を組み敷き――。


 ――明日からの支配録に俺は意識を高めていった。


















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