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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第四章 成り上がる英雄
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040 栄誉と報酬

「戻ってきたか」


 鉱山の入口。

 他の冒険者たちが刻んだ転移紋章の前で待機していたジル。


「チッ、やっぱり生きていたのね」


 舌打ちをしながら物陰から姿を現したアーリア。

 しかし何故か嬉しそうな表情をしている風にも見える。


「お前らだけか。フィメル先生と他の生徒は?」


「リリィとゼシカを連れてギルド本部に応援要請を送りに行ったぞ。かなり慌てた様子で、な」


「……そうか」


 グラッドのことは外部に漏れないようにこのまま秘密にしておくつもりだったが、仕方がない。

 すでにギルド本部長のデウスは俺の監視下にある。

 フィメルであれば真っ先にデウスに報告するだろうし、問題はないはず。


「で? どうなったの? まさか殺したわけじゃないんでしょう?」


 アーリアの質問にジルも同調し俺を見据える。

 俺の秘密を知るこの二人に隠し事は必要ない。

 俺は懐から一冊の書物を取り出した。


「まさか、それは……」


「ああ。《魔法ディザ・ベル》の力を宿した本だ」


「魔法の……本……」


 二人とも生唾を飲み込み言葉を失う。

 世界を破滅に追いやるとされる禁忌の書物を目の前にしたら、誰もがそうなるに違いない。


 俺は軽く息を吐き、氷魔法を唱え異次元への扉を開いた。

 そして亜空間に書物を封印する。


「……どうするつもりだ? その魔法書を」


「どうするつもりもない。ここに隠しておけば、俺以外に誰も手を出せないだろう。この世に神は二人も必要ないからな。永遠に封印するだけだ」


「まあ、そうよね。そんな危なっかしいものを他の人間が手にしたら、あっという間に人生転落するでしょうから」


 まるで俺に当てつけるようにそう言い放ったアーリア。

 俺にこんな口を利いていいはずがないことは分かっているだろうに、懲りない女だ。


「あの男に殺された冒険者たちのことはどうする。相当な遺体の数だったと思うが……」


 眉間にしわを寄せジルが俺に質問した。


「もう手は打ってある。あと数時間もすれば全員無事に目覚めるだろう。グラッドを含めてな」


 俺はあの後、氷魔法で時空を遡り、冒険者らを救出した。

 そして氷の微粒子を脳内に送り記憶を消し、眠らせた。

 もちろん外部に魔法使いディザベラーの存在を隠すための処置だ。

 巨龍どもに喰われたことにするには、あまりにも被害が多い。


「はぁ……。結局ひとりで全て解決しちゃったってわけね。でもこれで課外授業はおしまい。さっさと家に帰ってゆっくりしたいところだわ」


 頭の後ろに手を組み、鉱山を後にしようとするアーリア。

 それを見て苦笑し、後を付いていくジル。


「待て。誰が行っていいと言った」


「はぁ?」


 俺の言葉に振り向く二人。

 そして俺はぶっきらぼうにあるものを投げ渡す。


「あ、ちょっ……! 何よ、これ……!」


 予想以上に大きなものを投げ渡され、慌てるアーリア。


「……重いな。これは、龍宝石……?」


 ジルの言葉に俺は首を縦に振る。


「全部で四つだ。これをギルド本部に持っていき、お前らが献上しろ。あの巨龍種五匹も、お前らだけで狩ったことにするつもりだ」


「ち、ちょっと! それはあまりにも無謀――」


「無謀で構わない。俺が『技』を使えないことはお前らも知っているだろう? いくら魔法で誤魔化しても、気付く奴はすぐに気付く。名誉と勲章を与えられる役はお前らだ。俺は指導役として壇上の隅で見守る役に徹する」


 またいつデウスのように鋭い奴と対峙するか分からない。

 あのギザベラとかいう男や、騎士団長のガイアスも歴戦を潜り抜けた猛者どもなのだろう。

 いちいち魔法を使い記憶を操作していてはきりがない。


「……巨龍種の討伐という最大の栄誉と、この巨大な龍宝石の報酬……。これでシュナイゼル家は……」


 目を輝かせているジル。

 ――そう、これは飴だ。

 少女らの願いを叶えつつ、俺の右腕として生涯を俺に尽くさせる。


 ジルもアーリアも、リリィもゼシカも。

 フィメルもシイラもレイノも――。


「街に戻ったら一気に有名人ね……。なんだか面倒くさいことにならなきゃいいけど」


 二つの龍宝石を抱え、溜息を吐いたアーリア。

 俺はそれを尻目に鉱山を振り返った。


 ――もう、あの大蜘蛛の気配はしない。

 ずっと見張られている気がしていたが、それは気のせいなのだろう。


「……戻るぞ。バドランドに」


 鉱山に背を向け、俺は生徒らと共に要塞都市へと歩を向けた。

















 

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