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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第四章 成り上がる英雄
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036 目をつけられた生徒達

 アービット鉱山。

 ギルド本部のある要塞都市バトランドから北へ半日ほどの道のりにある、巨龍種ドラゴンらの巣窟。

 世界中から集められた90名の猛者達が武勲を上げるために目指す場所――。


「おい、見ろよあれ。学生が遠足気分で鉱山に向かってるぜ」


「ああ。巨龍種ドラゴンの怖さを知らないんだな。泣いて喚いたら俺達が助けてくれるとでも思ってやがんだろうな。胸糞悪いぜホント」


 すぐ後ろを歩く数名の冒険者らに陰口を叩かれているのが聞こえてくる。

 格好から察するに、本部から討伐要請を受けた他の国のギルドメンバーだろう。


「男2人に女4人かぁ。さぞ毎晩お楽しみなんだろうなぁ。おい、そこの兄ちゃん」


 筋肉質の大柄な男がジルに声を掛けてくる。

 俺は事の成り行きを静かに見守ることにした。


「……なんだ」


「提案なんだが、俺らと一緒に臨時でパーティを組まねぇか? これから大物を狩ろうってんだ。俺らと組んでおけば武勲を挙げられたも同然だ。その代わり……」


 ニヤニヤとした表情でゼシカらを舐めるように見回す男達。

 こいつらの魂胆は見え見えだ。

 要は女をよこせと言っているだけの馬鹿共だろう。


「せ、先生……。ここは教師として生徒らを守るために……」


 俺の腕をそっと掴み、恐怖に耐えている様子のフィメル。

 俺の魔法により男性恐怖症を封印しているはずだが、本能で恐怖を感じているのだろう。

 しかし俺は首を横に振り、何も答えない。


「ちょっとあんた達! さっきから黙って聞いてりゃ、言いたい放題じゃないのよ!」


「やめなさいゼシカ。相手にしたら駄目よ」


 ジルに絡む大男に掴みかかろうととしたゼシカを宥めるアーリア。


「あわわ……! ゼシカちゃん……! 落ち着いてくださいぃ……!」


 ゼシカの腕をぎゅっと掴むリリィ。


「おいおい、上玉揃いじゃねぇか。そっちの男はこいつらの教師か? なあ、先生よぅ。ちょーっとでいいんだ。こいつらを俺らに貸してくんねぇかな」


 軽薄そうな顔の別の男が俺の前に立ちはだかった。

 恐怖に顔を引き攣らせたフィメルは俺の背に隠れてしまう。


 相手の冒険者は……6人か。

 どいつも巨竜種ドラゴン討伐を要請されただけあって、実力者揃いなのだろう。

 特にあの筋肉質の大男――。

 恐らくレグザと同等か、それ以上の力の持ち主なのかもしれない。

 

 ――面白い。

 少し余興を楽しむか。


「別に構わないが、お前らの手に負える玉ではないと思うがな」


「はぁ!? 何を言ってんのよ! この馬鹿教師は!」


 俺の言葉に喚くゼシカ。


「はは! おい聞いたかお前ら! 先生からお許しの言葉をいただけたぞ!」


 湧きあがる男達。

 そしてぞろぞろと俺達の周囲を取り囲んだ。


「6対4かぁ……! おい、どの子にする? 俺はこの意気のいい巨乳のねぇちゃんだな!」


「俺はこのクールな子だな。おい、数が足りねぇぞ。誰か2人いっぺんに相手させる子を選べよ」


 徐々に後ずさりをし、一つにまとまる生徒達。


「お、俺……こっちの綺麗な顔の男でも……いい」


「げはは! 確かに女みてぇな顔の奴がいるな! じゃあお前はそいつにしろよ! げははは!」


 青白い顔をした貧相な男はジルを指名する。

 本当はジルは女なのだが、そんなことを知りえる人物は俺しかいない。


「ぜ、ゼシカちゃん……」


「おい、この天然っぽい子にしようぜ! こいつに2人任せて、あとは1人ずつ選べ! ぎゃはは!」


「ひぃぃ!」


 怯えるリリィに手を伸ばそうとする男2人。

 そしてゼシカ、アーリア、フィメル。

 さらにジルにまで伸びる魔の手――。

 俺は囲まれた輪の中から抜け出し、傍観を決め込むことにした。


「……はぁ。何を考えているのか知らないけど……」


 ぼそりとアーリアが何かを呟いているのが聞こえてくる。

 その彼女の手を握ろうとする軽薄そうな顔の男。

 伸びた手をそっと握り返し、何故か自身の胸へと誘おうとするアーリア。


「ちょっと!? 何をしているのよアーリア!?」


 堪らず叫び出したゼシカ。


「こうするのよ」


 そう答えた瞬間、彼女の身体に刻まれた紋章が光り輝いた。


ボギィ!


「ぐあああぁ! こ、この女……! 腕を……!!」


 そのまま脇に男の腕を固め、間接とは逆方向に曲げたアーリア。

 そして屈み込む男の腹部を蹴り上げ、得物である銀絶鎖ストランドを取り出した。


「ちっ! 俺らとやろうってのか!」


 アーリアの行動に反応する男達。


「なるほど。そういうことか」


 意図を汲んだジルは黒曜剣ダークソードの柄を貧相な男の股間にめがけ振り上げた。


「うぎゃあああああ! そ、そこは……! ああああああああ!」


「馬鹿が! おいお前ら! この姉ちゃんらは痛い目を見ないと分からないらしいぜ! 殺さない程度に遊んでやれ!」


 筋肉質の大男が叫び、4人の男が得物を抜いた。

 が、フィメルだけは怯えた表情のまま身動きがとれずにいる。


「ちょっとフィメル先生! ちゃんと立ってくださいよ!」


「あ、う……ご、ごめんなさい……。どうしてか分からないんだけど、足がガクガク震えちゃって……」


 そしてその場にへたり込んでしまったフィメル。

 あれが彼女の『弱点』だ。

 諜報部隊として暗躍する策略師トリッカーである彼女が、戦地に赴かずに田舎の学校で教師をしていた理由――。

 敵地に潜入しても、ああなってしまっては使い物にならない。


「来るわよ! フィメル先生を中心に、四方を守って!」


「ふえぇぇ……! どうして出発したばっかでこんなことに……!」


 アーリアの号令とともにフィメルを守るように立った4人の生徒達。

 折られた腕の回復を終了させた男と股間を押さえたままの男も得物を抜き、6人の冒険者が彼女らを再度取り囲んだ。


(……連携はアーリアを主軸にジルが補佐、ゼシカとリリィがコンビプレイといった感じか)


 脳内で彼女らの今現在の能力値と能力型、そして戦闘での連携をイメージする。

 俺の思い描いたとおりに彼女らが動けば、俺が手出しをせずとも6人の猛者に勝利することは不可能ではないはず。

 問題はフィメルを守りながらどうやって戦うかだ。


「あのクソ教師……! 見てなさいよ……! いつかギャフンと言わせてやるんだから……!」


「ゼシカ。クレル先生のことはいいから、今は集中しよう」


「分かってるわよ!」


 ジルに窘められ意識を冒険者らに向けたゼシカ。

 彼女も短拳剣ナックルソードを抜き、構えの体勢をとった。


 さあ、俺に見せてみろ。

 お前達の戦い方を。

 今までに教えたことを存分に生かしてみせろ――。



 そして冒険者との戦闘が始まった。

















 

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