ありがと
今日もへたくそなフルートの音色が、校庭に響いている。
音階のいつも同じところでつっかかる。そのたびに、俺は転けそうになるのを必死で堪えていた。
「先輩、あの子、またおんなじ部屋で練習してますねー。」
吹奏楽部に妹を持つ先輩にさり気なく言うと、
「ああ、それは姫城ゆあちゃんだね。頑張りやさんなんだけど、なかなか上の練習に上がれないんだって。」
「へえ。」
「でも空、よく気づいたよね。フルートの音って、細くて目立たないから校庭からじゃ聞こえない方が多いんだよ。」
「そういうもんなんですか?」
次の日も、その次の日も、姫城さんの真面目に練習する姿が、校庭からはよく見えた。
ほんと、よくやるよな。一人なのに。俺なら飽きてしまう。
「諦めたらそこで終わりだもん。できる限りの事をして、結果を待つ。何に対しても、そういう自分でありたいの。」
ちょうど窓の下を通過したとき、はっきりとした口調で誰かにそう告げているのを聞いた。純粋に、かっこいいな、と思った。
そんな、とある放課後。
俺の蹴ったボールが、姫城さんのいる教室に飛び込んでしまった。
ボールは窓を割り、教室で跳ね返る音がして……
心臓が止まるかと思った。万が一、怪我でもさせたら!?俺は、どうすればいい?
慌てて飛び込んだ教室には、無傷の姫城さんがいて、心底安堵した。
それから。
ぼぅっとしている時の姫城さんの視線の先には、必ずサッカー部の誰かがいた。
遠目で誰を見ているのかはわからないけれど、それが嬉しいような、でもちょっと嫉妬しているような、そんな感覚の俺がいた。
要するに、姫城さんが気になる。
必死で何かに取り組んでいる姿も、挫けそうで泣いている彼女も。すべての時に隣にいて、大丈夫だよ、と、隣で励ましてあげたい。
そんなことを他人に思ったのは初めてで、そんな思考回路を持ってしまった自分にいささかあきれた。
彼女の中では、いろいろ誤解もあったようだが、何とか今。
「空くん!明日の試合、頑張ってね!」
堂々と声をかけてくれる、君がいる。
「姫城さんも、昇格試験頑張りなよー!」
途端に彼女が膨れた。
なに?なんか悪いこと言ったかな?
「また姫城さんに戻ってる……」
「ん?」
あ、そうか。そういうことか。しょうがないから言い直すことにしよう。
「ゆあ、」
「好きだよ。」
「ばかあ!そんなことは今言ってって頼んでない!」
あれ、怒られちゃった。
まあ、いいか。
今日も僕らの頭上には、きれいに澄んだ青空。
いつか、この空に似た僕らの夢に向かって、走って行けるかな。
二人で。
お、終わりました…
こんなスピード投稿をしたのは初めてです。
弟にパソコンを占拠されてケータイからちまちまと執筆したり、保存ボタン押す前に画面が消えたりして最初から書き直したり……波乱でしたね。もう。
この作品は、我らが友、姫城ゆあさんと州流野空さん、音崎輝璃雅くん、竜樹先生、宮崎紅先輩、宮崎蝶空さん、放課後少年さんよりお名前をお借りし、作成したものです。(空さんは、モデルは女の子なのですよw)
みんなが更新を楽しみにしてくれていて、わたしにとってはいい意味で緊張の作品となりました。たくさんの人によんでもらえるって、嬉しいなー………と、改めて思った次第です。
あまりのスピード投稿だったため、あまりいい出来では無かったかもしれません。物語の展開が少し乱暴になってしまったなあと反省するところも多々あります。
でも、ここまで付き合って読んで下さった方々がいる、それだけで十分幸せです。ありがとうございます。
それでは、お名前を快く貸して下さった皆様と、物語を書く楽しみを教えてくれた友人、最後までお読み下さった皆様に感謝を込めて。
美桜奈