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Sky Step  作者: 珊瑚
7/8

なきむし

どこをどう走って、どこを曲ったのか。

息を切らしてやっとのことで辿り着いた家の前には。


「ど、うして?」

さっきまで川原にいたはずの、黒髪の青年。

「ちょっと来て。」

問答無用で、空くんは私の手を引っ張って今来た道を戻りだす。

握られた右手首が熱い。

これは、君の体温?それとも、私の鼓動?


あっという間に戻ってきた河川敷で、空くんは私の手を離した。

「なんでさっき、俺見て逃げたの?」

その目が、まっすぐ私をとらえる。

「俺のこと、嫌い?」

それを聞いた瞬間、堰を切ったように私の目から涙が溢れだした。

「あーー、ごめん。答えづらいよな。本人目の前じゃ。」

姫城さん、優しいから。なんて言って君は自嘲気味に笑って背を向ける。

「でもさ、なんにも言われない方が俺、つらいよ。昨日試合見に来てくれたのも、少しでも俺のこと気にしてくれてるのかな、なんて思っちゃうし。部活の時も、目が合っちゃうと、今のシュート見てくれてたのかな、とか思うし。」


「何が、いいたいの?」

掠れてしまった私の問いかけは、君に届いているのだろうか。

「もう、限界。」

それは、こっちのセリフだ。

「俺、ゆあのこと、好き。」



今、なんて?



「ゆあが頑張ってるの見ると、俺も頑張りたくなる。ゆあが泣いてたら、どうしたら泣きやんで笑顔見せてくれるかな、なんて考える。」


「でも今、泣かせてるのは、俺だよな。ごめんな。」


空くんはそのまま、私をおいて河川敷を降りようとした。


どこへ行くの?置いていかないで、ねえ!?


咄嗟のことで、空くんには、いや私にも、自分のしたことがわからなかった。

空くんが驚いて立ち止まる。

「初めて、窓を割った教室で会った時。」

Tシャツを掴んだ手が震える。

「私の名前、知っててびっくりしたけど、すごい心配してくれて、嬉しかった。」


「私がくじけそうなときはいつも私がほしい言葉を一番にくれた。その度に、空くんが好きになったよ。」


「私も、大好きです。」








びっくりしたような君の顔がとても印象的で。


なぜか分からないけど、また涙が溢れてきた。






「それ以上泣かせたら殺すよ?」

物騒な声に何事かと目をこすれば。

「ちよらちゃん!」

そうだった、空くんには蝶空がいて……あれ?でもそしたらさっきの告白はなに?

「兄貴も人が悪いのよ、ゆあの家が近いことを知っててここの練習に空をさそうとか。」

兄貴?

どういうこと?

「はは。ごめんね、ゆあちゃん。あんまりにも空がいじりがいがあるもんで。ちょっと悪ふざけしちゃった。」

茂みから出てきた人影は、昨日試合で見た、

「紅先輩?」

「昨日の試合でさ、空がおいしいとこ持って行きやがったじゃん?普段はあんなスーパーキック見せたことないくせに、なんでかな―と思ってさりげなく妹に聞いたら、空くんの好きな女の子が見に来てたっていうじゃない。」

ちょっと待ってちょっと待って。妹ってだれ?

「ん?これ、妹。」

紅先輩が指差したのは、なんと、蝶空だった。

「そ。これ、兄貴。」

蝶空も負けじと指をさし返す。「言ってなかったっけ?」なんてしらばっくれながら。

「聞いてないよ―!!!」

「名字一緒だから気付くかと。」

気付かないって!

「で、今日はオフだし、どうせならゆあちゃんの出没確率の高いところで練習してたら、なんか面白いものみられるかなー、って。まさかここまで面白いものが見られるとは思ってなかったけどね!」

紅先輩は思い出し笑いをしているのか爆笑しはじめた。そんなところも絵になるなんて……イケメンはずるい。


「先輩、そんな理由で俺誘われたんですか?」

「まあそれが9割、あと1割は純粋に君とサッカーがしたかったんだよ?」

明らかに面白がられてるけど!

空くんはあきれたように肩をすくめた。

「まあいいじゃん。晴れて疑いは晴れました!めでたしめでたしってことで!」


空は、今日もきれいに青かった。


良かったー、なんとか二人がくっついてくれて(汗


次で最終章の予定!

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