ドリーム・ガール
ユメ キヲク マボロシ。
私の中のユメ。
私の中のキヲク。
私の中のマボロシ。
ユメから覚めれば、そこにはいつもと変わらない日常があり、現実がある。
覚めたいユメ、覚めたくないユメ。
今の私はどっち?
"ジリリリリ "
携帯電話の3度目のアラームが鳴り止む。
左右へ体をゴロゴロと動かし、美樹は右手で布団をばさっとはぎとる。
ベッドからゆっくりと体を起こしながら、また鳴り始めた携帯電話のアラームを解除する。
『はぁ、眠い』
ドット柄のカーテンを開けると、勢いよく直射日光が美樹の部屋に入り込んできた。
寝巻き姿のまま、テレビの電源をオンにする。
リモコンでチャンネルを切り替えると、昨日から報道されているが、
某テレビ局のアナウンサーが痴漢容疑で逮捕されたという内容のニュースが取り上げられていた。
『せっかくアナウンサーになったのにね』
美樹はポツリとつぶやきなが、
トースターにセットしておいた食パンとハムエッグをガッパードナーの平食器に乗せ、
同じくガッパードナーのマグカップにホットコーヒーを注いだ。
ちなみにガッパードナーとは、美樹が大学時代、美術の授業の中で作り上げた個人のブランド名である。
青と赤と黄色の三色がマーブル状に混ざり合い、カップの柄の部分は、
彼女が好んでやまない蝶々が止まっているデザインとして仕上げられていた。
本棚にはシェークスピアやライ麦畑で捕まえて、など多くの文学作品が並んでいた。
壁面にはダリやピカソなど有名作品がきっちりと飾られている。
美樹は朝食を済ますと、全自動食器洗い機に食器を並べスイッチを入れた。
田舎町から離れて7年。都会の暮らしにも慣れてきた。
けれど、こころのどこかに、なんとなく何か大切なものを忘れてきたきがしていた。
『次は○△駅、降り口は左側です』
『ヤバ!!』
美樹は鞄を前に抱え、大急ぎで席を立ち、ドアからすり抜けるように飛び出した。
『ここ、どこ?』
降りたのはいいが、どこの駅か全くわからない。案内標識を見ると全く別の方向へ来てしまったらしい。
『やだ、もう。とりあえず会社に電話っと。・・・。あ、△△部の坂下です。えっ?あ、そうでした。
すみません。お疲れ様です。・・・今日会社休みじゃん。疲れてるのかな』
休みの日に出勤しようとした美樹。折り返すにも次の電車まで3時間あった。
せっかくだし、そう思って、少しこの土地を散策することにした。