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悪役令息に転生した俺は『原作知識』を駆使して破滅エンドを回避する 〜 原作に無い展開が始まったんだけど、ちょっと待って!?〜  作者: 彼方こなた
第一章

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4. 破滅までのカウントダウン


「旦那様は執務中に急に倒れられ、今は意識がない状態です」


 父の寝室にて。俺たちは皆、死んだように眠る父を囲むように集まっていた。

 そんな重々しい空気の中で、執事長であるバトラーは俺たちにそう説明する。


「なんで……お父様が……」


 信じられないとばかりに目を見開き、呆然と立ち尽くしているアメリア。それも無理はないだろう。


(アメリアは確か幼少の時に母親を亡くしているんだったか。だとしたら、あまりこの場に居続けるのは良くない)


「……話は終わりか? それならば俺は失礼させてもらおう」

 

「なっ!? アルベルト様は旦那様のことが心配ではないのですか!」

 

「心配はしている。だが、ここに俺たちが居てもできることは無い。ならば今、自分たちが出来ることに尽力すべきだと思うのは間違いか?」

 

「そのようなことは……」


 バトラーは震える拳を握りながら押し黙る。その様子を横目に、俺は今しがた思いついたとばかりに口を開く。


「そうだな。俺は当主代理として父上の仕事を請け負おう」

 

「何をおっしゃいますか! 貴方にそのような権限は――」

 

「あるはずだ。確かに正式な手続きを踏めば、当主代理を決めるのは親族同士の会議や執事団の合議が必要だろう。だが、今、それをしている時間はあるのか?」


 バトラーは何かを言い返そうとして、ぐっと押し留まる。暴論じみてはいるが、一応は筋が通っているからだろう。

 

「それは……」

 

「家を支える人間が必要だ。親戚を頼るつもりか? だが、誰が父上が倒れたこの状況で誰がこの屋敷にすぐ駆けつけ、指揮を執れる? 屋敷のことを知っていて、必要な指示を出せる人間が俺以外にいるのか?」

 

「……しかし、アルベルト様はまだ若く、実務の経験も浅いはず」

 

「確かにそうだ。だが、俺は父上の仕事を間近で見てきた。そして、もし執務の細かい部分が分からないのであればそれを支えるのはお前たちの役目ではないのか?」

 

「……っ」

 

「それとも、お前はこの家を混乱に陥れたいのか?」


 バトラーは一瞬何かを言いかけたが、すぐに口を噤んだ。しかし、別の使用人が不安げに口を開く。


「ですが……正式な手続きなしに代理を決めるのは……」

 

「その通りだ。しかし、父上が倒れた今、屋敷が混乱することこそ避けねばならない。無論、俺一人が我が家の決定権をすべて持つというわけではない。父上が信頼していた書記官や執事たちにも意見を聞き、必要な決定を下すつもりだ」

 

「……」

 

「時間はない。父上の仕事を放置しておくわけにはいかないだろう」


 その言葉に、皆は納得をせざるを得なかった。バトラーが一歩前に出ると、俺に謝罪する。


「……差し出がましいことを致しました」

 

「許す。お前も突然のことで混乱していたのだろう」


 納得したかは別として、これで俺が当主代理として動くことに表立って批判することはないだろう。

 そうなればアメリアへの負担が増えることは無い。周囲からの俺の不信感は増すだろうが、そこは捨て置いて良い。


「話は以上だ。父上の世話はバトラー、お前に一任する。……アメリア、お前も立っていないで動いたらどうだ」

 

「ぁ……」

 

「……邪魔になるだけだ。お前も部屋に戻れ」


 こくりと頷いたのを確認して俺は部屋の外に出る。

 

(……これで俺が父上に毒を盛ったとか噂されるんだろうなぁ。別にいいけど)


 少し落ち込みながら歩いていると、後ろから続くはずの足音聞こえがないことに気づく。


「アメリア、どうし」

「はぁ……はぁ……っ」


 振り返ると、そこには壁にもたれかかるようにして荒い呼吸を繰り返すアメリアの姿があった。彼女の顔は真っ青で今にも倒れてしまいそうだ。


 俺は彼女に近づき、体を支える。


「アメリア、大丈夫か?」

 

「だ、だいじょうぶ……です」

 

「とてもそうは見えないが」

 

「ほ……んとうに、だいじょ……うぷっ」


 アメリアの身体が大きく震え、喉を押さえた次の瞬間――。


「っ、ごめ……っ!」


 彼女の体が折れ曲がるように崩れ、胃の中のものが逆流する。押さえきれずに飛び散った液体が俺の袖口を濡らした。


「……気にするな」


 思わず身を引きかけたがすぐに思い直し、震えるアメリアの背を優しく撫でる。


「っ、でも……っ、こんな、姿……っ」

 

 アメリアは小さくしゃくり上げながら、袖で涙を拭う。俺は背中を撫でる手を止めずに周囲を見渡すと、遠くにメイドが通りかかるのが見えた。

 

「フェリシア!」


 俺が声を張り上げると、すぐにフェリシアが駆け寄ってくる。


「――アルベルト様、アメリア様、どうかされたのですか!?」


 廊下に踞るアメリアに、その背中を撫で続ける俺。その異様な光景に戸惑っているようで、俺は簡単に状況の説明をする。


「アメリアの体調が優れないようだ。部屋まで連れていけ」

 

「しょ、承知致しました。……アルベルト様は大丈夫でしょうか?」

 

「何も問題ない。それよりも、父上の診察が終わったらすぐにアメリアの下に医師を呼べ」

 

「承知致しました」


 アメリアをフェリシアに引き渡す。世話に関しては俺よりもメイドに任せた方がいいはずだ。俺は俺でやらなければならないことがある。

 

 アルベルトの父親が倒れる事件。これは原作にあるアメリアルートの展開だ。

 だが、それはゲームが始まってからで、始まる前に同じようなイベントが起きていたとは考えにくい。つまり、この状況は原作と大きく逸脱した展開。

 

 それにどう対応するか、考えなければならないことは色々あるし、今から手を打っておかなければ間に合わないこともある。

 

 原作設定ノートを見ながらじっくりと今後の対策を立てなければならないところだ。だが、まずは――。


 アメリアとフェリシアと別れ、俺は自分の部屋に戻る最中、ちらりと汚れた服を見る。


 ――まずは、この腕をどうにかしなければ。


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