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悪役令息に転生した俺は『原作知識』を駆使して破滅エンドを回避する 〜 原作に無い展開が始まったんだけど、ちょっと待って!?〜  作者: 彼方こなた
三章

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19/22

19. 表でも裏でもシナリオは進む


 ――学園図書館。

 そこには天才がいると言われている。

 その天才の名は、カリナ・アッシュフィール。

 齢14の頃に最年少で魔術協会に参入した異才。


「汗をだらだらと垂らしちゃってまぁ。そんなに怖がらなくていいのに、二人とも」


「…………き、気づかれてましたか」


 当たり前のように図書館の外から様子を伺っていたサーシャに看破する。彼女は恐る恐る図書館の中に入ると、俺の隣に並んだ。


「本気で隠れなきゃわかるよ。ここからなら一目で図書館中を見れるからね」


 ふふん、と彼女は自慢げに言う。

 

「それで、だ。キミたちはなんのためにここに来たのかな?」


「……聞きたいことがあってきた」


「なるほどなるほど。いいよ、大抵のことは答えてあげる。先輩風をびゅうびゅう吹かせたい気分なんだ」


「ほう。それは好都合だ。俺が先輩に聞きたいのは、俺の祝福と――ロイド・エンブレッドの祝福について」


 ピクリと、彼女の表情が一瞬固まった。


「……へぇ。ロイドくんの、ねぇ」


 髪の隙間から見える緑色の目には、疑惑と警戒の色が浮かんでいる。それはそうだろう。

 

 もしもロイドが原作通りに動いているのなら、現在の時点でカリナ先輩と親しくなっているはずだ。そんな相手をコソコソと探る貴族。警戒するに決まっている。


「念のために言っておくが、ロイドには言ってある。本人に確認しても良い」


「……ふーん。ま、今はキミの言葉を信じようかな。あの子からどんな人物かは聞いていたから。特に、男のキミはね」


「そうか。では、教えてもらえるか。俺と、ロイドの祝福について」


「そうだねぇ」


 何から話そうかと、カリナは一瞬考える。


「通常、平民――貴族の血が薄い者への祝福は大抵、『○○の加護』と呼ばれるものが多い。有名なもので言えば『鉄打ちの加護』、ロイドくんのオトモダチなら『風の加護』の方が通りがいいだろうか」


「そういった知識はある。続いて多いのが、後半部分が二文字のもので、王族となってくると一文字になる、と」


「だ、だから、ロイドくんの祝福は王族クラスになる、ですよね?」


「大正解。よく勉強しているね、キミたち」


 もちろん、全部原作知識だ。当然ながら言うつもりはないが。


「ロイドくんの祝福は王族のものと同格。どうして彼が、って話は省くね。推測にしかならないし、今は関係ないから」


「ああ」


 そんなもの神の気まぐれか王様のスキャンダルぐらいしか候補がない。


「彼の祝福の特異な点は、それ自体がロイドくんが魔法を扱う起点となっていること。通常、魔法に近い効力を示す祝福は、行使の時に微精霊にお願いして魔法を出してもらうって形になってるんだ。けど、彼は周囲の魔力を吸い取り、魔法を出す」


「……微精霊に頼らないで、魔法を扱える。まるで貴族みたいに」


「そう。しかも、周囲の――しかも敵の魔法まで吸い取って自分の魔力に変換することができる。彼の能力を一言で言うなら、無制限の魔力行使だろうね」


 無制限の魔力行使。

 実際に、彼女の見立てはあっている。だが、まだ足りない部分があるのだ。それは、


「まるで、始まりの魔法のようだな」


「ああ、神話の? 精霊神様は最初に『魔法を扱うことが出来る魔法』を授けたってやつ。言われてみればそうだね、盲点だった」


 魔法を扱うことの出来る魔法。

 何だかややこしいが、それがロイドの祝福の正体らしい。原初の魔法と呼ばれるスキルだと気づいた連中が、ロイドをめぐって――。というのがシナリオの後半の流れだからな。


 本題はここからだ。これまでの話は、カリナが真実に辿り着くための準備でしかなく、俺たちの目的はこの次にこそある。


「それで、俺の祝福についてはどう思う?」


「さあ? 知らないよ。そもそも、キミのこと詳しくないし」


 至極真っ当な意見でバッサリと切られてしまった。


「名称はちょっと変だよね。『縁結び』、だなんて。法則からしたら、『縁の結び』になるだろうに」


 そこは本当にどうでもいい。


「……もっとほかに無いのか?」


「そうは言われてもねぇ。あ、ただ、一つ言えることは――」


「おーい、カリナ。こっちにアルベルトとサーシャ来てねぇか?」


「えっ! ロイドくん!?」


 荒々しく扉を開けて、ロイドが入ってきた。

 どこか肌寒かった図書館も一気にぐっと気温が上がったかのような錯覚に陥る。


「お、いたいた」


 俺たちを見つけて笑みを浮かべるロイド。そんな彼の前に立ち塞がるように降り立ったのは、カリナ。大きな椅子から降りたカリナは、自分よりも頭三つ分ぐらい大きいロイドを見上げる。


「どうしたんだい、突然来て。事前に言ってくれればもてなす準備をしていたのに。ああ、ちょっと待っていておくれ。すぐにお茶用意するから」


「ああいや、先輩。オレ、アルベルトとサーシャに会いに来ただけなんで」


「あんまり冷たくされると、しくしくとボクは泣いてしまうよ? 用事があるならここで話をしていけばいい。少し席を外すから、ね?」


 小柄なカリナ先輩がロイドに手厚い歓迎をする姿は、犯罪臭しかしないな。うん。


「うわぁ、カリナ先輩ちっちゃい……萌え」


「聞こえないようにしろよ、それ」


「当たり前。ヒロインにキモがられたら死ぬから」


「あ、そう」


 サーシャはカリナ先輩がロイドを引き止めようする姿を見て、きゃっきゃっとしていた。

 どうやら、彼女にとってアルベルトの次に好きなキャラらしい。俺だけで行こうとしていたこれにわざわざ着いてきたぐらいだし。


「今回はこれ以上無理か」


 この状態になってしまえば、カリナがこちらの話を聞いてくれるとは思えない。というか、主人公を前にこんな話は出来ないからな。


 ……帰るか。

 そう思い、踵を返そうとした時、突然、背後に人の気配が現れた。


「アルベルト様」


「フェリシアか」


 彼女の表情はいつも通り無表情――ではなく、ほんの少しだけ強ばっているように見えた。


「――報告です。厄介な勢力に動きがありました」


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