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ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
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エスカローネの悩み

ヴァルキューレ隊(Die Walküren)はテンペルの補助戦力である。

この部隊は主力部隊の聖導騎士団に対して、それをサポートする部隊に当たる。

この部隊の最大の特徴は女性で構成されるということである。

率いるのが女性なら、構成員も女性というわけだ。

エスカローネは戦士クリーゲリンである。

エスカローネも戦う力を持っている。

彼女の武器はハルバードで、魔法も使える。

目下、彼女には悩みがあった。

ヴァルキューレ隊の訓練所にて、隊員たちは各々に槍で突き、槍術の精度を高めている。

ちなみにヴァルキューレ隊の主武器は槍である。

エスカローネが訓練所にやってくると、二人の友人が寄って来た。

「おはよう、エスカローネちゃん!」

「おはよう、エスカローネ」

「おはよう、ナターシャ(Natascha)、ライザ(Leisa)」

彼女たちはエスカローネの友人で、ナターシャは銀髪のセミロングで性格は天真爛漫、ライザは赤髪の短いポニーテールといった髪型で性格はクールビューティー。

「今来たの?」

「ああ、私たちも今来たところだ。どうした? 何か悩んでいるのか?」

「ええ、ちょっと、ね」

「何々、エスカローネちゃんは何に悩んでいるのかな?」

「それは……」

エスカローネは顔を曇らせた。

力なく笑う。

「おい、おまえたち! そろそろ朝礼が始まるぞ! 整列しろ!」

エスカローネたちも朝礼のために列に並んだ。



エスカローネは自分の悩みを部隊長に打ち明けることにした。

ヴァルキューレ隊の隊長はベアーテ=アレクサンドラ・フォン・ローゼンベルク(Beate-Alexandra von Rosenberg)という名で、ツヴェーデン系シベリア人である。

彼女はもとツヴェーデン軍の女将校だった経歴を持つ。

彼女の武器は珍しく剣である。

彼女は『雷光のベアーテ・アレクサンドラ』という名を持っている。

髪は茶色の長髪で、瞳は赤い色をしていた。

「あの、ベアーテ様……」

「? どうしましたか、エスカローネ? 浮かない顔をしていますが?」

彼女は隊員のメンタル状態に敏感だ。

「はい、ちょっと相談したいことがあって……」

「相談、ですか……」

ベアーテは思案顔をする。

おそらく、今後の予定を考えているのだろう。

「いいですよ、隊長室で聞きましょう」

「ありがとうございます!」

ベアーテはエスカローネを隊長室に導いた。

隊長室は機能的に整えられていた。

無駄な装飾がないのは軍人としての彼女を象徴している。

部屋にはソファーがあった。

二人は対面してそれに腰かける。

「それではいったいどんな悩みをあなたは持っているのですか?」

「私はもっと強くなりたいです」

「それはセリオン殿と関係があるのですか?」

「そうですね……私は弱かったら、セリオンの隣にはいられないと思って……」

「なるほど……そういうことですか。あなたは弱かったらセリオン殿から捨てられる……そう恐れているのではありませんか?」

「はい……」

エスカローネはそう思っていた。

セリオンの隣に立つことができるのは強い女性だけだ。

だから、エスカローネは武術を磨いてきた。

客観的に言えば、エスカローネは強い。

エスカローネの強さはツヴェーデン軍の精鋭部隊が束になってかかっても勝てないほどだ。

エスカローネは自分の強さに自信を持っていいのである。

だが、エスカローネにはそれができない。

なぜなら、セリオンは暴龍ファーブニルを倒してしまったから。

それほどセリオンが強いのなら、並び立つ女性にもそれほどの強さが要求される。

「そうですね……セリオン殿は暴龍ファーブニルを倒してしまった。それがあなたを苦しめているのですね?」

「はい、そうです」

「安心なさい」

「え?」

「あなたは十分、魅力的ですよ」

「そうでしょうか?」

「あなたの流れるような、輝くような金色こんじきの長い髪は女性の私でも嫉妬してしまいそうです」

「は、はあ……」

エスカローネは自分の容姿が優れていることには鈍感だった。

それはエスカローネが自分の容姿に気を使っていないわけではない。

エスカローネはセリオンはエスカローネ自身の金髪の髪を愛していることを知っている。

だからこそ毎日丁重にエスカローネは自分の髪をケアしている。

「あなたはあるがままでいいのです。無理に自分を作り替えようとは思わないほうがいいでしょう。あなたは自分がおびえるほど魅力がないわけではありまあせん。それどころかあなたには男どもが奪い合うほどの魅力がありますよ。自信を持ちなさい」

「ですが、セリオンは容姿だけでは相手を選ばないでしょう」

「そうですね。青き狼ならそうでしょう。あなたがどうしても強くなりなりたいなら、私が時間外で訓練をしてもいいですよ?」

「いいのですか?」

「隊員の能力の向上には良いことですからね。私のおもな武器は剣ですが、槍も私は使えます。それで相手をして差し上げましょう。ですが、私の個人的なレッスンです。これは厳しいですよ? 覚悟はできていますか?」

「はい、覚悟はできています」

エスカローネの瞳には意思が宿っていた。

ベアーテはそれに満足そうにほほえむ。

「わかりました。それでは時間外に訓練をしましょう。あなたの体が悲鳴を上げることになりますが」

「はい!」

「ふふふ、いい返事です。ではこれで話は終わりとしましょう」

エスカローネは隊長室から出て行った。

そんなエスカローネをナターシャとライザが捕まえる。

「どうたったの?」

「ええ、時間外で訓練をしてもらえるようになったわ」

「そうか、これはベアーテ隊長じきじきの訓練だからな、かなり厳しいぞ? いいのか?」

「いいの、私が望んだことだから。私はもっと強くなるわ。そしてセリオンの隣で戦いたいの」

それはエスカローネの望みであった。

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