表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
22/24

ダンスパーティー

テレージエンホーフにて舞踏会は催された。

セリオンはタキシードで、エスカローネはスリットが入った青いドレスで出席した。

雰囲気は上々だった。

会場では多くのカップルがダンスを踊ったり、話をしたりしている。

セリオンとエスカローネも一曲は踊った。

ただ、二人はダンスがそんなに好きではなかったため、あとは窓際で談笑していた。

幸い、ワインや食べ物が用意されていたので、そちらを二人は楽しむことにした。

今セリオンは一人だ。

エスカローネはお手洗いに行っている。

セリオンは窓際に立った。

夜空は眩しい。

今日は星がよく見える。

「もし」

「? 俺に用か?」

そこに現れたのは長い黒い髪に、マーメイド型のドレスを着た美女。

「あなたはセリオン殿ですね?」

「違うかもしれないぞ?」

「フフフ、セリオン殿は冗談がお好きなんですね。私はそう、ソムニフェラ(Somnifera)とでも名乗っておきましょう。もしよろしければ、私と一曲お相手願えますか?」

「ああ、いいぞ。ちょうど連れがいないからな」

セリオンはソムニフェラの手を取った。

そして会場の中央でダンスを踊る。

セリオンはエスカローネと踊っているようにはいかなかったが、ソムニフェラを丁重に優しくリードした。

ソムニフェラの動きは洗練されていた。

彼女はどこかの貴族なのだろうか?

ツヴェーデンでは貴族制度は廃止されたが、いまだに貴族の家出身の市民もいる。

「うふふふふ……いいダンスでしたわ」

「あなたは目が?」

「そうです。私は視覚障碍者です。まったく見えないわけではありませんが、基本的には見えません」

「そうか。目が見えないと大変だな」

「そうでもありませんよ。心の目は養われます」

「心の目、か」

「それではセリオン殿、今夜はこのくらいで。またお会いしましょう」

「そうあってほしいものだ」

「必ず、また会えますとも。それではごきげんよう」

ソムニフェラはそういうと去っていった。

「セリオン!」

「ああ、エスカローネか」

「お待たせ。待った?」

「いや、そうでもない。どうだ、俺たちももう一曲踊らないか?」

「ええ、いいわよ」

その時、会場の明かりが消えた。

「明かりが……」

「エスカローネ、俺につかまってろ」

セリオンはエスカローネを抱き寄せる。

すると周囲の人々が倒れだした。

人々は意識を失っていいるのだ。

「これは!?」

「セリオン!?」

「くっ、ね、眠い……」

「あ、私も……」

セリオンとエスカローネも二人して眠ってしまった。



気づくとセリオンは目覚めていた。

ここはどこだ?

テンペルの中のようだ。

「セリオーン!」

「エスカローネ、無事だったか!」

「無事? 何を言っているの、セリオン?」

「エスカローネ?」

おかしい。

セリオンはエスカローネといっしょにいたはずだ。

いや、おかしくない。

それはそういうものだ。

そうなのだ。

この世界ではそうなのだから。

「その子は……ユリオンとフィオネもいっしょか」

そうだ。

この子は俺とエスカローネの子供だ。

俺たちは結婚した。

そして、子供を二人もうけた。

それがユリオンとフィオネだ。

ユリオンは男の子。

フィオネは女の子だ。

エスカローネは男の子と女の子が一人ずつほしいと言っていた。

セリオンはソードマスターに『なった』。

「俺はソードマスターになったんだな。そんなことも忘れていた」

「ふふふ、おかしなセリオン。じゃあ、そろそろ家に帰りましょう」

「ああ、そうだな。俺は騎士の中の騎士だ。俺は栄誉も愛も手に入れたんだ。……そのはずだ。」

「どうしたの? セリオン?」

セリオンはどこかに深い違和感を感じた。

これは現実だろうか?

セリオンにはそれを疑う自分がいた。

「なあ、エスカローネ、これは現実なのか?」

「ふふ、おかしなことを言うのね。セリオン、これは現実よ。現実になったの。私とセリオンは結婚した。私はセリオンの妻よ」

「そうだな、そうだったな。どこか俺はおかしいようだ。これが現実だったはずだ。俺はソードマスターで、騎士の中の騎士で……」

どうやら疲れているようだ。

こんな幸せを疑うなんてどうかしている。

俺は幸せを手に入れた。

エスカローネと結婚して子供をもうけたのだ。

今の俺には栄誉も愛もある。

この二つとも、俺は手に入れた。

ああ、(しゅよ、万歳! ハレルヤ!

俺は今幸福の絶頂にいる!

だが、セリオンの勘はそれに従わなかった。

これは……偽物だ!



エスカローネは湖のそばにいた。

「? どうしたのかしら? 私は眠っていたのかしら?」

「エスカローネ」

「セリオン! 無事だったのね!」

「もちろんだ、エスカローネ。俺たちは愛し合っているんだから」

「セリオン?」

エスカローネはセリオンに違和感を感じた。

セリオンはこんなんだっただろうか?

いや、『そう』だった。

セリオンはそうだった。

間違いない。

なぜなら、それは疑われることなき真実だったのだから。

「変ね。私、セリオンが変だって思っちゃった」

「ふふふ、おかしな、エスカローネだな。そうそう、俺の言葉を受け取ってほしい」

「? 何?」

「エスカローネ、俺と結婚してくれ!」

「!? ええ!?」

エスカローネは驚いた。

この言葉はエスカローネが『聞きたかった』もの。

エスカローネが現実であってほしいと思っていたことだ。

その言葉が今セリオンから発せられた。

エスカローネは幸せの絶頂に至ってしまう。

「よ、喜んで……」

「エスカローネ、俺は君を愛している」

「私もセリオンを愛しているわ」

二人は見つめ合う。

エスカローネの胸はドキドキとときめきで止まらなかった。

ああ、これが幸せなんだ。

エスカローネは幸せをかみしめた。

これが現実なんだ。

私は幸福の絶頂にいる!

おかしい、変だ。

「ねえ、セリオン、これって現実なのよね?」

「何を言っているんだ、エスカローネ? これが現実だ」

違う! 

このセリオンは本物ではない! 

これは現実ではなく、偽物の世界だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ