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ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
21/24

アンデッド

会場は静寂に包まれた。

観客たちは放心してしまった。

セリオンの強さに心ここにあらずだった。

「さて、ここにはもう用はない」

セリオンは身体強化魔術で観客席の壁を跳び越えた。

そしてそこにいたのはエスカローネ。

「エスカローネ、もう帰ろう。ここに用はない」

「ええ、そうね」

二人は観客がポカンとしているあいだに去っていった。



ポカンとしていたのはジェンティーレも同じだった。

彼は正気に返ると、配下の全アンデッド兵を招集した。

「このままセリオン・シベルスクを返したら、ぼくたちはいい笑いものだ! おまえたち! セリオン・シベルスクの首を取ってこい!」

アンデッド兵はもはや姿を隠さず、公に通りに進出した。

セリオンとエスカローネは追手が来ることを予想していた。

すでにセリオンは大剣を、エスカローネはハルバードを持っていた。

「やはり来たな。ここでアンデッドどもを殲滅してやる」

「もはや隠す気もないようね」

「ああ、こいつらを倒せば、事件は解決だ」

「セリオン、ゴッテス・ハウホを使うわ。時間を稼いで」

「ああ、わかった。俺がその間はくい止める」

セリオンはアンデッドの正面に立ちはだかる。

「きさま、我らに勝てると思っているのか?」

「!? しゃべれるのか」

どうやらこのアンデッド・スケルトンは低級ながら知能があるらしい。

まあ、あのバジーリオにもあったのだから、配下のスケルトンにない方がおかしいか。

だが、それはむしろマイナスに作用する。

なぜなら、それは恐怖をも知覚可能であることを意味するのだから。

この事実に気づくと、セリオンはこれから行われることに対して哀れみさえ覚える。

スケルトンソルジャーは剣と盾が標準装備だ。

こいつらはここの戦闘能力は大したことがないが、群衆で行動するという特性がある。

しかし、それがいったい何だというのだ?

セリオンにはそんなことは関係ない。

セリオンは大剣をスケルトンソルジャーに向ける。

背後ではエスカローネの魔力が高まっている。

エスカローネの大魔法は発動に時間がかかる。

そのあいだは無防備になるため、誰かが守らなければならない。

セリオンはスケルトンソルジャーに斬り込んだ。

大剣が大きく振るわれる。

スケルトンソルジャーの何体かは胴斬りにあった。

「こ、こいつ!?」

「気をつけろ! こいつは手ごわいぞ!」

「バジーリオ様の仇だ!」

セリオンはスケルトンソルジャーの中で舞い踊る。

それはつるぎの舞。

セリオンの大剣の威力はすさまじく、スケルトンソルジャーを粉砕していく。

もちろん、こいつらは胴を切断されても動く。

そのぐらいではこいつらは死なない。

だが、スケルトンソルジャーたちは恐怖した。

セリオンの持つ圧倒的な強さに。

ふと後方で青白い光が上がった。

これは合図だ。

エスカローネの大魔法ゴッテス・ハウホの発動が完了したのだ。

「いいわ、セリオン! 下がって!」

「ああ、待っていた!」

「ゴッテス・ハウホ!」

青白い光の柱が上方からスケルトンソルジャーに降りかかった。

青白い光は聖なる光だ。

この光は闇を浄化する。

スケルトンソルジャーにとっては致死性の攻撃だった。

「ぎゃあああああああああ!?」

「ぐああああああああああ!?」

「がはああああああああ!?」

「きしゃあああああああ!?」

まさに阿鼻叫喚だった。

スケルトンソルジャーたちは存在を浄化されて消えていった。

後にはスケルトンソルジャーが持っていた剣と盾が残された。

なおジェンティーレはツヴェーデン政府のものによって逮捕された。



後の日、セリオンとエスカローネはスルトの部屋に呼ばれた。

セリオンはエスカローネと共にスルトの部屋に入った。

「また何か事件でも起きたのか?」

セリオンの第一声。

こうして呼ばれるのは毎回事件があった時だ。

「いつもなら、そうだというのだが、今回は違う」

「それじゃあ、いったい何なんですか?」

「旧市街地で明日、ダンスパーティーが催される。おまえたちにはテンペルの代表として出席してもらいたいのだ」

「テンペルの代表? 俺たちがか?」

「まあそうなるな。嫌なのか?」

「そういうところって、ドレスコードがありますよね? 私はそんな場所に行けるような服は持っていません」

「俺もそうだ」

スルトは笑顔で。

「安心しろ。その方面はプロに任せてある。おまえたちは指定の服を着用して、パーティーに出席すればいい」

セリオンはどちらかといえばそんな任務は遠慮したかった。

パーティーに出られるほどセリオンのたたずまいは洗練されているとは言えない。

むしろセリオンの動きは武骨だ。

セリオンは戦士である。

文化人ではない。

「セリオン、私このパーティーに出席してみたいわ」

「エスカローネ……」

エスカローネがそう言うのであればセリオンとしてはかなえてあげたい。

セリオンも腹をくくった。

「わかった、俺も参加しよう。それに二人のいい思い出になるかもしれないからな」

「ダンスパーティーの開催は明日の夜、テレージエンホーフだ。おまえたちには今から仕事は休んでいい。今回はテンペルの代表という形だが、おまえたちは好きに出てかまわない。パーティーを楽しんでくるといい」

「ああ、わかった。こんなイベントはなかなかないからな。せいぜい楽しませてもらおうか」

「わあ! セリオン! 私、パーティーが楽しみだわ!」

エスカローネが嬉しそうに答える。

エスカローネとしてはドレスを着られるのがうれしいのだろう。

セリオンもエスカローネのドレス姿には興味がある。

エスカローネはいったいどんなドレスを着てくるのか。

それがセリオンには今から楽しみであった。

エスカローネは最近は特訓ができるほどの時間はなかっただろう。

アンデッドの事件は解決に時間がかかった。

こうしたご褒美があってもいいだろう。

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