闇闘技場
セリオンとエスカローネは今度は闇闘技場の調査に向かった。
闇闘技場は昼は空いていない。
その名前の通り、夜だけ営業している。
セリオンたちは再び、門を通過した。
そこではチップを衛兵に渡した。
セリオンは出場のため、受付に並んだ。
そこでセリオンたちはある人物と出会った。
「あんた、セリオンさんかい?」
「ああ、俺がセリオンだ。何か用か?」
「へっへへ、俺はコルネリオだ。あんたらに用があってね」
「用?」
「そうだぜ。安心しな、あんたは無事にゲストとして招かれたぜ」
「ゲスト?」
「大会の主催者が招く人間さ。だから、あんたは受付に行かなくても大丈夫だぜ」
セリオンはそれを不審に思った。
あまりに準備が良すぎる。
これもジェンティーレの策略かと思うと気にくわないが……。
「おまえはジェンティーレの差し金か?」
「まあ、そんなところだ。あんたも試合に出たがっていただろう? 感謝しな。あんたは観客の注目の的さ」
「どうせ、むごたらしく死ぬことを願っているのだろう? まあいい。アンデッドの調査ができればそれでいい。おまえたちが何を考えているかは知らないが、俺がそれを叩き潰す」
「へへっ! それじゃあな!」
コルネリオは去っていった。
「ねえ、セリオン。本当に出場するの?」
「ああ、もちろんだ。ゲストというんだ。せいぜい暴れさせてもらうさ」
エスカローネが心配そうな顔をする。
「エスカローネは俺のことが信じられないか?」
「そうじゃないわ。私はセリオンを信じている。でも、セリオンだって無敵ってわけじゃないのよ?」
「まあ、こんな闘技場の陰謀なんて粉砕してやるさ。俺は出場する。エスカローネは見ていてくれ」
「ええ……」
セリオンはリングの上に立っていた。
ここは試合の会場。
セリオンの周囲には殺しを楽しむ連中がうやうやいる。
『ゲスト』は特別に試合の招かれる。
ゲストは観客からしたら、いかに殺されるか、そこに楽しみがある。
つまりゲストは彼らがいかに殺したいかと思っている人物が選ばれる。
だが、セリオンはそんな陰険な意図などすでに見切っている。
セリオンは簡単に彼らの望みを叶えてやるつもりはなかった。
セリオンがゲストに選ばれたのは何らかの陰謀によるものだろう。
おそらくジェンティーレが何らかの陰謀を画策しているに違いない。
彼はセリオンを排除したがっている。
ジェンティーレにとってセリオンは邪魔なのだ。
それを合法的に叶えるのが、この闇闘技場というわけだ。
この試合ならセリオンが殺されても『事故』にすぎない。
この闇闘技場では莫大なカネが動く。
「フッ、君がセリオン君かい?」
「そうだが、おまえは?」
「失礼、ぼくはトニーノ(Tonino)。これでも剣士のはしくれでね」
セリオンの前に現れたのは金髪のイケメンだだった。
優男だが、強者特有の強さを感じる。
この男は油断していい相手ではない。
「へえ……ぼくの強さが分かるようだね。それなら、この試合、楽しめそうだ」
<セリオン選手、トニーノ選手! 試合の準備を始めてください!>
アナウンスがセリオンたちに戦いの準備を促す。
セリオンは大剣を構えた。
トニーノも長剣を抜く。
<それでは試合、開始!>
試合が開始された。
トニーノは瞬時にセリオンとの間合いを詰めてくる。
セリオンはトニーノの長剣を大剣で受け止める。
「フッ、よくぞ、ぼくの剣を受けた。だが、ぼくはまだ余裕だよ。さあ、これで斬り裂いてやろうじゃないか! カマイタチ!」
トニーノが技を放った。
風か乱れる。
この技をもろにくらったら、セリオンは死亡するだろう。
この大会はやはりセリオンを殺すことに関心があるらしい。
だが、セリオンは望み通りに死んでやるつもりはない。
セリオンは蒼気を出した。
セリオンの体から凍てつく闘気が放たれる。
それがカマイタチをあっさりとぶち破った。
セリオンからすればカマイタチは穏やかな風だ。
セリオンはトニーノより格上の風使いを知っている。
それはアンシャルだ。
アンシャルの異名は『風のアンシャル』。
アンシャルの技は風だ。
アンシャルの風は暴風雨だ。
「なっ!? ぼくのカマイタチが!? こんなにあっさりとやられるなんて!?」
「これまでか?」
セリオンには冷厳な声の響きがあった。
それは圧倒的強者の声だ。
冷徹な事実をセリオンはトニーノに突き付ける。
「バカにするな! カマイタチは初級の技だ! これほど強力な技はとっておきたかったが、致し方ない!」
トニーノはセリオンと間合いを取った。
「風よ、集まれ!」
トニーノが自分の周囲に風を集める。
風が回転して、トニーノの周囲を巡る。
風はトニーノの長剣に集まった。
「くらええええ! カザヘビ!」
トニーノの風が蛇のようにセリオンに向かう。
この風に巻き込まれたら、全身をボロボロにされるだろう。
この大会は殺しはOKのようだ。
セリオンが蒼気を出す。
セリオンの蒼気は錬られて、強力になる。
蒼気はセリオンの色だ。
セリオンは蒼気を全身から刀身にまでいきわたらせる。
武器と人体が蒼気で一体化した。
「翔破斬!」
セリオンは蒼気を波状に放出した。
翔破斬は扇状に広がっていく。
トニーノはそれに完全に巻き込まれた。
カザヘビはあっさりとかき消された。
「なっ!? ぼくのカザヘビが!? うおおおおおおおお!?」
トニーノは叫び声を上げながら、蒼気の波に巻き込まれていった。
観客は息をのんだ。
トニーノはそれなりに名の知られた剣士だった。
それをセリオンはたやすく倒してみせたのだ。
これは観客の期待とは裏腹だった。
<セリオン選手の勝利です!>
だが、観客はセリオンの勝利を喜ばなかった。
ブーブーと不平を述べる。
「このバカヤロー!」
「てめえいったい何やっているんだー!」
「失望させやがって!」
「金返せコラー!」
トニーノへの罵倒はすさまじかった。
これはトニーノの勝利にカネをかけていたものがかなりいたことを示している。
夜ますます更けていく。




