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ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
17/24

刺客

夜の道をセリオンとエスカローネは歩いていた。

電灯が明るく周囲を照らす。

「何もしっぽを見せなかったわね?」

「まあ、そうだな」

セリオンとエスカローネは並んで歩く。

その近さは恋人のそれであった。

任務中であるため、エスカローネもセリオンの腕を取ったりはしない。

そのくらいは二人ともわきまえている。

任務中はストイックに。

「また出直しだ。今度は闇闘技場に参加してみるのもいいかもしれないな」

「セリオンなら優勝しそうね?」

「まあ、戦いは相性もある。俺が優勝できるとは限らない」

セリオンは謙遜した。

だが、セリオンに優勝への可能性があるのは確かだ。

ただ、闇闘技場なだけあって、セリオンが知らない猛者がいるかもしれない。

それはセリオンにとって楽しみでもあった。

「今日はどうするの?」

「ああ、今日はおとなしく帰ろう……いや、その必要もなくなったか」

「え?」

二人の背後から武装した兵士がやって来た。

全員が黒いプロテクトスーツを着ている。

「巣をつついたら出てきたというわけか」

セリオンは大剣を出す。

エスカローネは愛用のハルバードを出した。

その名はエスカリオス(Eskarios)という。

「おまえたちにはここで死んでもらう」

隊長らしき男が答えた。

「おまえたちのようなやからがやって来たということは、ジェンティーレはアンデッドとかかわりがあるのか?」

「……」

隊長は無言だった。

答えは剣の抜刀だった。

セリオンとエスカローネは戦いの構えを取る。

「どうやら当たりだったようね。私たちをそんな簡単に殺せると思っているの?」

「フン、答える義理はない。さあ、やれ!」

兵士は黒マスクに黒い盾と黒い剣を持っていた。

「そんな盾で俺たちを殺せると思うな? 行くぞ!」

セリオンが攻めた。

セリオンは一撃で兵士を吹き飛ばした。

兵士は縦でガードしたはずだが、セリオンの剣撃はそれ以上の威力だった。

セリオンは兵士たちのあいだで暴れまわる。

セリオンはただ大剣を振るっているだけだ。

だが、セリオンの一撃はプロテクトスーツを叩き壊す。

おそらく骨まで折れているだろう。

セリオンは乱舞を続けた。

セリオンの大剣がひるがえる。

セリオンは戦神のごとき猛攻を仕掛ける。

兵士たちではセリオンを止められない。

次々と兵士は宙を舞っていった。

強い。

強すぎる。

セリオンには豊富な実戦経験があった。

この手の兵士たちは自分たちより弱い相手しか戦ったことがないのだろう。

格上の敵との戦い方をしてこない。

「ええい! 何たるざまだ! いったい何をしている!? 数で囲んでしまえ!」

セリオンはこれでも手加減していた。

セリオンに対して武装した兵士程度では勝てない。

セリオンは戦争や紛争に参加したことがある。

そこでの経験は貴重だった。

それと比べれば、武装した兵士などただの雑兵にすぎない。

セリオンの敵にはなりえない。

セリオンはエスカローネを見た。

エスカローネも戦っていた。

エスカローネは光をハルバードにまとわせる。

エスカローネの技『リヒト・ヘレバルデ』である。

エスカローネはハルバードを縦横無尽に振るう。

エスカローネの攻撃によって、盾は破壊され、プロテクトスーツは粉砕される。

これはエスカローネの力があるというより、技の効果だった。

セリオンはエスカローネのことをちらりと見る。

エスカローネもセリオンの視線に気づいた。

エスカローネはほほえむ。

この程度の敵など問題にならないということだろう。

エスカローネは光の力を使える。

エスカローネは光に特化していた。

モノの数分で二人は兵士を全滅させた。

「くっ!? バカな!? こんなはずでは!?」

隊長が動揺する。

隊長の頭にはこの結果はなかったに違いない。

セリオンが隊長に大剣を向ける。

「これまでだな?」

「フン! なめるな! 闇黒剣あんこくけん!」

隊長の剣が闇に包まれた。

「それは……闇の力か!」

「どこでその力を手にしたの?」

「フン! ここで死ぬきさまらには関係あるまい! くらえい!」

隊長がセリオンに斬りかかる。

セリオンは大剣を持った片手を前に出す。

「なっ!?」

隊長の顔はフェイスマスクで見えなかったが、驚愕しているに違いない。

セリオンは片手で隊長の剣を受け止めたのだ。

セリオンの剣はただの白刃だ。

「そうはいかなかったようだな?」

「くっ!? このバカ力め!」

「終わりだ!」

セリオンは大剣を振り下ろす。

隊長は剣でガードする。

セリオンの大剣は隊長の剣を叩き潰した。

そのまま一撃が隊長に入る。

「ぐっ……不覚!」

隊長は倒れた。

「よし、こいつらから裏側の事情を聴こう」

「!? セリオン! 何かおかしいわ! 離れて!」

セリオンはその場から跳びのいた。

隊長たちは全員爆発した。

「こいつら……口封じか……」

セリオンはせっかくの情報源を失ってしまった。

兵士は全員死んだ。

「危なかったわね」

エスカローネがセリオンの隣に来た。

「せっかくの情報源が消えてしまった。俺のミスだ」

「セリオンのせいじゃないわ。でも、これでジェンティーレは黒ね」

「ああ、もっとも今度会ってもしらばっくれるだろうが」



「何? 全滅しただと?」

「はい、ジェンティーレ様」

執事のジュゼッペが報告する。

兵士を爆破したのはジュゼッペだ。

彼はひそかにセリオンたちの戦いを見ていた。

「ええい、使えない奴らよ! それほどテンペルの戦士は強いというということか!」

「いかがいたしますか?」

ジェンティーレは怒りでジュゼッペをにらみつけた。

ええい、無能な奴らめ!

無能な奴らのおかげでこの私が不始末を片づけねばならないではないか!

「そうだ、いい考えがある」

「といいますと?」

「彼らを闇闘技場に招こう。それなら合法的に始末できる。これで口封じもできるしな」

「かしこまりました。そのように手配いたします」

「頼んだよ」

かくして邪悪な陰謀が行われようとしていた。

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