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ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
16/24

事件再び

セリオンは再びスルトの執務室に行った。

「セリオン、入ります」

「うむ、入ってくれ」

「エスカローネ?」

「セリオン?」

そこにはエスカローネもいた。

どういうことだろう?

エスカローネにも何か用があるのだろうか。

セリオンは驚いた。

「スルト、なぜここにエスカローネがいる?」

「エスカローネを呼んだのはほかでもない。今回の事件に有用だからだ」

「有用?」

「二人とも、まずは聞いてくれ。今回の事件はアンデッドだ」

「アンデッド?」

「そうだ。何者かがアンデッドに人間を襲わせている。アンデッドを操っているのは間違いあるまい」

「それで、エスカローネの必要があるのか?」

「そういうことだ」

エスカローネは光魔法を中心に攻撃魔法、回復魔法が使える。

アンデッドには天敵のような相手だ。

セリオンよりも、アンデッドとの相性はいいであろう。

セリオンはそこまで納得した。

「諜報部隊の報告では闇闘技場と犯人は何らかのつながりがあるようだ。二人はそこに侵入し、捜査を行ってくれ」

「わかった」

「わかりました」

セリオンとエスカローネは退出した。

二人はしばらく無言だったが、エスカローネが話す。

「今回の任務はセリオンといっしょなのね?」

「そういうことになるな」

「ふふっ、なんだかうれしい」

「うれしい?」

「だって、セリオンといっしょにいられるから」

「おいおい、これは任務であってデートじゃないんだぞ?」

セリオンははんばあきれながらも、半分はうれしかった。

エスカローネといっしょに仕事ができるのだ。

こういった機会は初めてではない。

セリオンは前にもエスカローネといっしょに仕事をしたことがある。

それにセリオンはエスカローネの強さをよく知っていた。

エスカローネといっしょに仕事するのは楽しい。

「でも、セリオンといっしょにいられるのは変わらないわ」

「それはそうだが……」

「それで、まずはどうするつもりなの?」

「そうだな。闇闘技場について調べてみるか。そこから何かわかるかもしれない」

闇闘技場はツヴェーデンの暗部だ。

裏社会の闘技場で、莫大なカネが動く。

「確か、闇闘技場を仕切っていたのは、マフィア『ファルファッラ(Farfalla)だったな」

「まずはそこから攻めるのね?」

「ああ、奴らが何か知っているならぼろを出すかもしれない。ファルファッラに探りを入れよう」

「それじゃあ、夜まで仮眠ね?」

「ああ、そうだな。夜になったらいっしょに行動しよう」

「わかったわ」

「そういえば……特訓はどうなんだ?」

セリオンはエスカローネのことが気になった。

エスカローネは今特訓中だったはずだ。

体を酷使されていると聞いている。

セリオンは自分が暴龍ファーブニルを倒したせいでエスカローネにそんなことをさせているのは胸が痛んだ。

「ええ、順調よ。ベアーテ様に鍛えてもらっているわ」

エスカローネが拳を握る。

「あんまり無理はしてほしくないんだが……」

セリオンも言葉に詰まる。

セリオンは自分がエスカローネを無理させているのかと思っていた。

「私が望んでしていることよ。セリオンが気にするようなことじゃないわ。安心して」

「まあ、エスカローネがそう言うんなら大丈夫だろうが……」

二人はこの後分かれて仮眠をした。



夜、今日は新月で月が空になかった。

セリオンはテンペルの前で。

セリオンは門を背にエスカローネを待っていた。

これでは任務というよりデートではないかとセリオンは思案する。

「セリオン、お待たせ」

「ああ、俺も待っていない」

「じゃあ、任務の開始ね?」

「ああ、そうだな」

二人は夜の闇へと歩き出した。

セリオンたちはファルファッラが主催する闇闘技場に侵入した。

侵入は堂々と、表の身分を明らかにして行われた。

青き狼、英雄セリオン・シベルスクとエスカローネ・シベルスカ(Eskaroone Siberska)と名乗ったのだ。

警備は厳重だったが、セリオンがボスに会いたいと伝えるとすぐに入れてくれた。

セリオンたちは観客席で闘技場を眺める。

そこに執事のような老人がやって来た。

「セリオン様、エスカローネ様ですね?」

「あなたは?」

「私はジェンティーレ(Gentile)様の執事でございます。お二人をジェンティーレ様のもとにお呼びするよう言い伝えられて来ました」

「ジェンティーレ?」

「はい、ファルファッラのボスの名前でございます」

「わかった。それではジェンティーレのもとに案内してもらおう」

セリオンとエスカローネは執事の老人について行った。

そこは豪奢な部屋だった。

アンティークの家具が部屋一面に置かれていた。

「初めまして、私がファルファッラのボス、ジェンティーレだ。ジュゼッペから君たちのことは聞いている」

ジェンティーレは金髪をオールバックにした若者だった。

セリオンはマフィアのボスがこんなに若いことに意外な印象を受けた。

「この闘技場はアンデッドも扱っているのか?」

セリオンはいきなり核心を突いた。

だが、ジェンティーレは穏やかな笑みを浮かべたままだ。

「アンデッド? あなたは何か勘違いをしていませんか?」

「昨日、アンデッドによって市民が殺された。そのアンデッドはこの闘技場に入ったという。そういう報告を受けている」

セリオンは正面から斬りこむ。

「何か、勘違いをしているようですね。ファルファッラとアンデッドは何の関係もありませんよ」

ジェンティーレは営業スマイルを崩さない。

むしろさわやかさが増した。

「それは妙だな? 俺たちの諜報部隊の報告ではこの闘技場に間違いなく入ったそうだ」

「はっはっはっはっは! セリオン殿は御冗談が過ぎる。何か誤解しておられるのでしょう」

「本当にそうか?」

「ええ、誓ってアンデッドとは一切関係はありません。さて、私も忙しいのでこれくらいでお引き取り願いたいのですが」

「……セリオン、どうするの?」

「……いいだろう。今回はここで引きあげよう。邪魔をしたな」

セリオンとエスカローネは退出した。

ジェンティーレのスマイルが崩れる。

「ちっ、バジーリオの奴! テンペルに嗅ぎつけられたか! おい、ジュゼッペ!」

「はい」

「奴らをこのまま帰すな! 必ず殺せ! いいな?」

「は、かしこまりました」

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