対ネヴァハ
グールとギャングとの戦いが最高潮に達したころ、そこに闖入者が発生した。
「そこまでだ!」
一人の青年がグールを一刀両断にした。
「なっ、グールを一瞬にして!? おまえは、何だ!?」
ネヴァハが混乱する。
「たかがグールを倒されたくらいで動揺するな、ネヴァハ。こいつはセリオン・シベルスクだ」
マヴァハが冷静に言う。
グールを一刀両断にしたのはセリオンだった。
セリオンは大剣を構えて、グールと対峙する。
「おまえか! おまえがセリオン・シベルスクか! あっはっはっはっは! これはちょうどいい! おまえでグールの性能を確かめるとしようか!」
「おまえたちがグールを操っていたのか? いったい何のためにグールを操って、人を殺した?」
「まず一つはあんたを抹殺するためさ!」
「俺を抹殺するだと?」
「ああ、そうだよ。あたしら闇の勢力にとってあんたは倒すべき敵だからね! それにこいつらを買いたいっていう国もあるのさ!」
「グールを買うだと? まさか……ガスパル帝国か?」
「フッ、その通りだ、セリオン・シベルスク。我らはこいつらを商品としてガスパル帝国に売り込む予定だ。そのための実績として、セリオン・シベルスク、おまえを倒したという実績があればいい」
「それじゃあ、さっそくグールをけしかけようじゃないか! さあ行きな! あいつを殺すんだよ!」
グールの群れがセリオンに襲いかかる。
だが、セリオンは恐れない。
セリオンは『光の』大剣を振るった。
迫りくるグールをセリオンは次々と屠る。
グールはあっさりとやられていく。
「なっ!? グールがこうも簡単に!?」
ネヴァハが驚愕する。
彼女はセリオンが一方的にグールに蹂躙されることを考えていたのかもしれない。
だが、グールに弱点がないわけではない。
グールの弱点は『光』属性だ。
属性は光と闇、風と土、炎と水、雷と氷、そして無の九属性ある。
グールは闇属性を持つため、反対の光属性に弱い。
セリオンの大剣は光輝いていた。
それはセリオンの大剣がグールの苦手な光属性を伴っているということであった。
セリオンの技『リヒト・シュナイデ』である。
「ネヴァハ、あれを見ろ」
「!?」
「あれは光をまとっている。セリオン・シベルスクは光属性を剣に持たせているようだ」
マヴァハが落ち着いて述べる。
「あれで斬られては、グールはひとたまりもあるまい」
「それなら、数で畳みかけるだけさ! 行きな、グールども!」
グールに、ネヴァハが命令する。
だが、グールは攻撃をためらった。
セリオンの光の大剣を恐れているのだ。
「来ないのか? ならこっちから行くぞ?」
セリオンの姿が消えた。
否、消えたと思えるほど速く動いたのだ。
セリオンの光の大剣がグールの首を切断する。
セリオンの剣技は神技のごときだった。
グールを瞬く間にセリオンは斬り伏せていく。
それはまるで、猛獣が荒れ狂っているようだった。
一匹の狼が獲物を蹂躙しているのだ。
セリオンは大剣でグールを斬り伏せ、叩き斬り、両断し、貫いた。
セリオンの攻撃は光属性であるため、グールは次々とやられていく。
これはもはや戦いですらない。
一方的な虐殺だった。
ほんの数分……数分で、グールは死に絶えた。
セリオンが大剣をネヴァハに向ける。
「これまでだな」
それはセリオンの勝利の宣言だった。
ネヴァハは屈辱に震えた。
「おまえー! よくも手塩にかけたグールを殺してくれたな! この報復は絶対にするぞ!」
ネヴァハが激高する。
ネヴァハが手に槍を出した。
黒い槍だ。
「ネヴァハ、気をつけろ。こいつは手ごわいぞ?」
「ぶっ殺してやる!」
「ネヴァハ……」
ネヴァハはマヴァハの言葉を聞いていないようであった。
「おまえの名は?」
「あたしは漆黒の三魔女バシュヴァ(Baschva)が一人、ネヴァハだ!」
「相手にとって不足はない。セリオン・シベルスク、いざ参る」
マヴァハが黒い槍でセリオンを突いてきた。
「死ねええ!」
その突きは鋭い。
だが、激高しているネヴァハの槍を見切ることなどセリオンにはたやすい。
セリオンは身をひるがえしてそれをよける。
ネヴァハは執拗に槍で攻撃してくる。
セリオンは大剣であしらい、それを防ぐ。
セリオンはまずは様子を見ることにした。
ネヴァハの連続突き。
セリオンはそれをあっさりと見切る。
ネヴァハは激高していなければ、もっと強かっただろう。
怒りは必ずしも、戦いに有利に働くわけではない。
むしろ冷静さを失うことによって、いなせるのだ。
「氷結槍!」
ネヴァハが氷の槍を上から落とす。
氷結槍は氷魔法だ。
どうやらネヴァハは氷の技や魔法を使うらしい。
セリオンはとっさに後方に跳んで、それをかわす。
ネヴァハは一気に接近してきた。
槍で大きく薙ぎ払う。
セリオンはそれを受け止める。
ネヴァハの体格は小さく、パワーはそれほどあるわけではない。
ただ、キレがった。
「氷魔槍!」
ネヴァハが氷を槍にまとわせて攻撃してくる。
セリオンは顔をしかめる。
「どうだい! このあたしの氷の一撃は!」
ネヴァハの槍は鋭く刻まれた氷だった。
氷の槍がセリオンに圧力をかける。
しかし、この程度ではセリオンに届かない。
セリオンは大剣を振るった。
セリオンの反撃が始まる。
ネヴァハは氷の槍で防戦に入る。
「くっ、この!?」
ネヴァハが焦燥に包まれる。
セリオンはネヴァハの槍を軽々と振り払う。
ネヴァハはセリオンとの戦いで不利と悟ったのか、いったん間合いを開ける。
セリオンはさらに追撃した。
セリオンの大剣がネヴァハに迫る。
ネヴァハは悔しそうな顔をした。
そこに。
キーンと音が鳴った。
マヴァハがネヴァハの前に立ちはだかったのだ。
マヴァハはネヴァハの前に振り下ろされた大剣を剣で受け止めた。
「マ、マヴァハ……」
「ネヴァハ……ここは撤退しろ」
「なっ!?」
セリオンもいったん跳びのく。
「私はマヴァハ。漆黒の三魔女バシュヴァが一人だ。セリオン・シベルスクよ、今夜はここで引かせてもらう。さらばだ」
「逃げるつもりか?」
「フッ、挑発には乗らない。我らは逃げさせてもらおう」
二人の下に魔法陣が展開した。
それが輝くと、ネヴァハとマヴァハは消えていた。
「ちっ、逃がしたか」




