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ヘルデンリート・ネオン Das Heldenlied Neon  作者: 野原 ヒロユキ
Artemidora ~Der Beginn von Hierosophie~
12/24

事件

こうして夜が過ぎて行った。

セリオンは事件を捜査していたが、なかなか事件と遭遇しない。

新市街地は夜もにぎやかだ。

ネオンが明るく街を照らし出す。

「ねえー、お兄さん! うちの店に寄ってかないー? 安くしとくよー?」

「……」

セリオンは女を無視して先に行く。

夜のシュヴェリーンは欲望の町だ。

ツヴェーデン人はこれを文明の証と見なしている。

セリオンには考えられない。

シベリア人は基本的にみな宗教的である。

町は人でごった返ししていた。

セリオンはただ町を歩いているわけではない。

歩きながら、周囲を知覚していた。

これは気息の修業によって手に入れたものだった。

おもに聴覚を強化して、町全体を探っていたのだ。

今夜もどこかで必ず事件が起きるに違いない。

セリオンはそれを確信していた。

セリオンはその時、血の匂いを感じ取る。

「これは……当たりか!」

セリオンは走り出した。

周囲の人たちはセリオンに注目しない。

あまりに多い人ごみは人の関心をマヒさせる。

本来なら感じるストレスも無視させる。

セリオンは人ごみを欠きぬけて、現場へと急いだ。

セリオンは路地裏に入った。

「ここか!」

セリオンは奥へと進む。

すると、そこにはバラバラになった死体と、食われた跡、そして血だまりがあった。

すでに犯人はここにはいない。

もう、グールの食事は終わった後だった。

セリオンが来るのが遅かったのだ。

「遅かったか……」

セリオンは現場を観察する。

グールはどうやら人間をすべて食べるわけではないらしい。

セリオンの前には食い散らかされた跡があった。

セリオンは通信端末を取り出す。

それから、セリオンは事件の発生と場所を警察に連絡した。

それにしても、ここで何があったのか。

周囲にはモノが散乱していた。

おそらく、グールに激しく抵抗したのであろう。

それが周囲の飛び散っている血の説明ができる。

死体には服がついていた。

頭はそのまま転がっている。

どうやら頭はグールのお気に召さないらしい。

そのまま放置されていた。

足もだ。

足はヒールははかれていた。

この死体は女性らしい。

それにしても、セリオンは自分が事件を止められなかったことを悔やんだ。

セリオンがもっと早くここに来れば、事件を防げたかもしれないのだ。

だが、起きてしまったことはもう取り消せない。

セリオンは女性の遺体に礼をすると、その場から去っていった。

今度こど、犯人を追いつめてみせる。

セリオンにはその意思があった。

それにしても、犯人はいったい何者であろうか?

これほどすみやかに事件を起こす存在。

何者かは分からないが、そこに邪悪な意思と闇の魔の手があるような気がセリオンにはした。

セリオンは路地裏から出る。

そこでセリオンは上空に月が輝いているのを発見する。

月はいつも煌々と輝いている。

月の光は美しい。

だが同時に、月は妖艶な世界への入口でもある。

セリオンは再び、雑踏の中へと歩き出した。



「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」

「ぼくは本気だ! ぼくと分かれるというんなら、君を殺す!」

「いい加減にして! あたしはもうあんたには興味がないのよ!」

「君は、ぼくの心をもてあそんだのか!」

「そんなこと言ってないでしょ! あんたこそ、いい加減にマザコンをやめなさいよ!」

男は震えていた。

女は壁に追いつめられる。

この二人は元恋人同士。

痴情のもつれだ。

どこにでもそんな話はあるだろう。

「殺してやる!」

男がナイフで女を突き刺そうとした。

「ちょっと! やめてよ!」

女は激しく抵抗する。

男は何がなんでもナイフで女を刺すつもりだ。

男と女は同じ職場の同僚だった。

仕事帰りなのか、二人ともスーツを着ていた。

男のナイフを女はハンドバッグで受け止める。

「あー、あー、盛り上がっているところ悪いんだけどさ。こっちに注目してくんない?」

「何だ、おまえは?」

「何よ、あんた?」

そこに現れたのはグール使いの少女、名はネヴァハ(Nevaha)。

ネヴァハはめんどくさそうに、二人に近づく。

ネヴァハの背後にはグールがいた。

グールに理性の目はなかった。

そもそもグールとはそういうものだ。

あるじの指令がなければ動かない存在なのだ。

「あんたらにはこいつらの食事になってもらうよ」

「はあ?」

「バッカじゃないの?」

「さあ、行きな! あいつらを喰っていいよ!」

ネヴァハが命令を出す。

グールの瞳が光った。

一体のグールが二人に襲いかかる。

「ふざけるなあ! ぼくの邪魔をするならおまえも殺す!」

男はナイフを構えて、グールに体当たりした。

グールから血が出る。

「はっはっはっは……はあ……はあ……」

グールの目が生気を取り戻す。

グールは男ののどをかみちぎった。

「!?」

男は一瞬で死亡した。

女が青ざめる。

「な、何なの、あんたたち!?」

「あっはっはっはっはっは! それを知ってどうするんだい? あんたらは潔く食事になればそれでいいのさ! さあ、やりな!」

ネヴァハがもう一体のグールに指令を出した。

片方のグールは男を咀嚼し始めた。

それを見て、女が恐怖する。

「な!? 人間を食べてる!? 来ないで! 警察を呼ぶよ!」

「あっはっはっはっは! そんな暇があるかなあ?」

ネヴァハが陰気な笑顔を向ける。

もう一体のグールは女を押し倒した。

「いやああああああああ!?」

そのままグールは女の首にかみつく。

「あ……」

女はそれで死んだ。

首から大量の血が吹き出る。

ネヴァハはそれを満足そうに眺めていた。

今回も新鮮な獲物を与えることができた。

グールは人間を食べるほどより強くなる。

たくさんの人間を食べたグールはどれほどの強さへと至るであろうか。

ネヴァハにはそれが楽しみであった。

二体のグールは死体をばらし始めた。

本格的な食事タイムだ。

血が一面にあふれていった。

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