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 村の広場では、昼前の陽射しが石畳に落ちていた。

 周囲の人々は、南の坂道に目を向けていた。領主家の紋章を掲げた馬車が、一台ゆっくりと近づいていたからだ。

 出迎えの列はすでに広場に並んでいた。今日は巡察の予定日。保管品の検査や記録の確認があると聞いて、村人たちは前もって準備をしていた。

 ただ、近づくにつれ、違和感を覚える者も出はじめていた。

 馬車には警護の騎士が付いていない。御者席に座る男の服装はよれていて、顔にはゆるんだ笑みが浮かんでいる。隣を歩く数人も、腰の刃物が兵士のそれとは違っていた。

 広場に入った馬車が止まり、扉が急に開いた。

 貴族服を着た男が、一人転がるように地面へ落ちる。口には布、腕は背中に縛られていた。呻きながら顔を上げようとするが、力はないようだった。

 

 広場のあちこちで息を呑む音が漏れた。

 続いて馬車から現れたのは、腰に刃物を下げた男たち。数人。動きに秩序はなく、目は品定めするように広場を見回していた。

 そのうちリーダー格らしいひげ面の男が歩を進め、声を上げた。

「さぁて村人の皆さんよ。この馬車はもう俺たちのだ。ついでに村の物も全部な」

 言いながら、腕を広げて荷台を指差す。中には、同じように縛られた貴族が数人並んでいた。すでに抵抗の気配はない。

 御者席から飛び降りたスキンヘッドが、脇で固まっていた村娘に目を止める。

「大人しくしてりゃ命までは取らねぇ。こっちは話のわかる連中だぜ」

 ゆるんだ笑みが満面に広がっている。

「逃げんなよ。そういうの、嫌いじゃねぇけどな」

 村長が立ち上がりかけたが、すぐに斧を持った大男が一歩踏み出したため、足が止まる。斧の刃が太陽を受けて光る。誰も言葉を発さなかった。

 広場の空気が、昼の穏やかさから離れていった。


こちらも好評なら続けます。

*キャラが区別しづらかったので、修正してもらいました。

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