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第3話差し込む光

担任の原田先生が、黒板に大きく文字を書き始めた。

「今から係決めを始める。委員会に入ってる奴以外にしてもらうからなー。じゃ、司会は、学級委員!よろしく」

なんて丸投げな担任だ、と心の中でツッコミながら、学級委員に同情した。

私は委員会に入っていないので、係になる可能性があった。こんなめんどくさいの、願い下げだ。

ちなみに学級委員は、女子は神田さんなのだ。

学級委員二人は渋々、前に出て、黒板に係が書かれた。

係は教科係、掃除係、カギ係、補助係などで、計18人分。ほぼ確実にどこかに配属される、恐怖の係決めだ。

そして、係決めは、委員会に入ってない人達がどれか一つ立候補し、そこからジャンケンで負けた子達が配属されることになった。

どれもめんどうではあるが、一番人との関わりが無さそうな掃除係に私は立候補する事にした。

私は、掃除係に立候補するべく手を挙げると、誰一人と立候補する人がいなかったのだ。

この場合は、さすがに人を待つのかと思っていた。

「南しかいないから、とりあえず南決定でいいか?」と原田がまた適当なこと言ってきた。

何でそうなるのか。

私は前世でどんな悪事を働いたのか。いや、それより担任に一発くらわせたい気分だった。

「南ちゃんいいの?」と神田さんは心配そうに聞いてくれたが「大丈夫です」と言ってあげた。

神田さんが話しかけてくれたから調子にのってしまったのである。

「南!ありがとう!南以外誰かいるかー?」と担任は、手を挙げた。

誰も挙げる気配はなく、何故か人脈の狭さを感じた。

すると、男子達が少しザワつき始めた。

なんだと思い嫌な気配に視線をやると、小森くんがまわりから煽られているようだった。こういうノリ、本当に苦手だ。申し訳なさで胸がざわついた。

助けて貰った身にも関わらず、迷惑をかけてしまっているこの感じは心がザワザワとしてしまう。

すると、視線を感じたのか小森君は、私に小さく会釈をした。本当に、謙虚な方だ。

そうすると、小森君はゆっくりと手を挙げた。

周りはザワつき、案の定変な笑いが起きた。

小森君のさっきの会釈はそっちの会釈かいと思い、少し一撃をくらわせたくなった。

「小森!南!何かいいコンビになってるな!」と担任が言うとクラスの皆が一気に笑い始めた。

だから、戦犯はお前なんだ!と担任への一撃ゲージが溜まり、奥義の技を発動させた。

「先生、南さん嫌な顔してるて!俺と組みたくないのかも!!」と小森君が歯をむき出しにして言った。

原田は「そんな訳ないやろ!南なあ!」とかこんな状況で話を振ってきたのだ。

許せない心が燃えたのだろう「嫌です」と咄嗟に言ってしまった。

何を私は、本音を言ってしまったんだと耳や顔がどんどん熱くなってきた。

でも言った瞬間、クラスは笑いの渦に包まれた。

「南嫌なんや!」と担任はお腹を抱えながら笑っていた。

「南さんに嫌われてしまった!先生仲良くなりたいので掃除係で!!」とその後続けて小森君は立候補してしまっていた。

私は恥ずかしく仕方なく、煮えたぎった体から湯気が出てしまいそうだった。

「南いい?」とニヤつきながら担任がまた振りやがったので、「仕方ないです」と答えてあげた。

また、先生やクラスメイトはニコニコ笑ってくれて、私と小森君は掃除係になった。

小森君は「南さん、よろしくね!」とふざけたように手を挙げてきたが、私は無視を決め込んだ。

ひと騒動を終え、係決めはそれぞれ決定し、幕を閉じたのである。

経験したことのない疲労感で、その時間が終わると私は大きなため息をついた。

私の適応力は、変人な母と父と一緒に生きてきたなかで育まれたものだ。まさか、それを学校で使うことになるとは思っていなかった。

振り返るとここまで、クラスの中で自分を出し話したのは初めてだったのかもしれない。

それでも、こんな経験ができたことに、ふと口元が緩んだ。

すると、男子数名と小森君がこっちにやって来た。

私は、少し顔を引きつってしまい、小森君達から目を逸らした。

小森くんは「南さん俺の事嫌いになった??」とふざけ始めた。もう疲れてしまってか「大嫌いです」とか何も考えず言っていた。

すると周りの小森子分達は「ふられたぞー!」とかザワザワ笑っていた。

それに気づいてか担任は小森君に近づき、小森君の肩を叩きながら「南、頼りになるから小森よろしくな!何かあったら先生呼べよ!飛んでくるからな」と全く頼りにならないことを言い去っていった。

一番は最初に消すのは、お前だ、原田。心のデスノートに名前を書いてやる。

「南さん、オモロいから仲良くしてみ」と小森君は、何やら子分達に言い始めた。

「確かに、大人しいかと思ってた」

「正直、小森。南さんに救われてたからな」

「どこ中?」

私は、恐る恐るだが「近くの、第一…」と言うと「俺、第二だ近い」とすぐに答えが返ってきた。

小森君もそうだが、子分達も明るくフレンドリーな人達だった。

その後もやや雑談をし、次の授業のチャイムが鳴った。

男子というよりもこの学校で初めてこんなに話しているのではないだろうか。私もすごく驚きの方が大きい。

担任の戦犯かと思っていたが、これはもしかして担任がこの関係を作ってくれたのかもしれないと悪い気はしなかった。

こうして私は、南夏子、晴れて(?)掃除係に任命されたのである。

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