第1話雨子
今日の天気は雨。
ちなみに、梅雨入りはまだだ。
湿気と熱のこもる体育館で、男子がプレイするドッジボールを観戦しているところだ。
男子のドッジは、デスゲームなのかと思うほど白熱しており恐怖を感じる。
この高校は、新一年生の親睦会なのかなんなのか五月初めにクラス対抗でスポーツ大会のようなものがある。
あいにくの雨だが晴れの場合は、男子は野球で女子はサッカーをする予定だった。
そのため、男子はドッジボール、女子は、バスケと変更され体育館の密度と外のせいで煙が発生しそうだ。
私達のクラスは、女子は見事な全敗を遂げ、見事決勝へいった男子の応援に来ているのだ。
メガネを外し、首に巻いたタオルでゴシゴシと汗を拭いた。
すると、隣に座っているクラスメイトがそんな私を見てクスッと笑った。
「豪快に汗拭くね。暑いよね。」
「メガネが曇るんだよね。」と言いながら、私はそのタオルでゴシゴシと拭いた。
「また拭いてるし!豪快だよ!!!南ちゃんって面白いよね。」
その子は、キラキラスマイルで鼓舞してくれた。
私は、少々照れながら「どうも…」と言った。
「ねー、あの中だったら誰がいい?」とニヤつきながらその子は質問を投げかけてきた。
「そうだね。みんなゴリラだからな。」とちょっとボケてみた。
すると「確かに」と笑いながらまたキラキラスマイルでいてくれた。
自分で言うが素晴らしい回避をしたなと思っていた。
しかし、次の瞬間だ。
「アブナーイ!!!!」という声とともに強烈なボールが私の頬をアタックしにきた。
私は当たった反動で倒れ、周りに人がどんどん集まっていくのだけぼんやり見えた。
そういえば、眼鏡外してるから視界がぼやけてるんだと、いろいろと安堵し、ゆっくり体を起こした。
「鼻血…」と誰かから言われ、私は鼻の当たりを押さながらゆっくり立った。
体育の先生のような人から「大丈夫か?」と言われたので、「全然大丈夫です。保健室行くんで。」と言い鼻血を抑えながら保健室へ向かった。
あまりにも、冷静すぎだったのか周りの方が謎に引いていたような気がした。
保健室へ着くと、とりあえず鼻血が止まるまで座って休むことになった。
回答は回避できたが、ボールは回避できなかったなとシャレにならないシャレが思いついた。
鼻血が止まったあとは、保健室の先生に当たった頬を確認してもらうと、若干赤く腫れているようだった。
タオルで纏った保冷剤を当てて、スポーツ大会が終わるまで保健室で休むことになった。
そのまま保健室の椅子に座りながら、私は雨打つ窓をぼーっと見ていた。
今頃、男子は優勝したんだろうかとか隣のあの子の名前なんだったかなとか私雨女だなとかそんなことで暇つぶしをしていた。
約二十分後、担任と一人丸坊主の男子が保健室へ入って来た。
担任は「大丈夫??」と私の隣の椅子へ座ってきた。
「見せて」と言われ、頬を素直に見せると「痛いわ!!これは!!大丈夫かー!」と咄嗟に口に手を添えていた。
それを見てか「本当にごめんなさい!」とその坊主は、私に深く頭を下げてきた。
何だかここまで心配されてしまったもんだから、逆に申し訳なくなってしまった。
「全然、大丈夫です。」と言うと、坊主は小さくまた「すみません」と言った。
「結局男子、優勝はできなかったけど、勇翔めちゃくちゃ活躍したらしい。」
「いや!そんなことないっすよ。」と少し照れながら坊主は言った。
「でも、すごいですね。女子はすぐ負けちゃって」
「先生、俺ら頑張ったんで宿題無しとかないですか?」
「こら。まあ、宿題はな。今回だけな。」
「シャア!!」と坊主は飛び跳ねると、担任は軽く坊主を叩いた。
「あ!次授業二年生だ!ごめん!先生ちょっと行くから!また後で来るな!」と言い担任は急いで保健室を出て行った。
原田先生は、熱血系の先生で担当科目は数学。数学の先生ってわりと理論的で真面目なイメージだが、原田先生は、ムードメーカーでちょっと抜けてる面白い担任だ。
「何か、原田先生って忙しい人よな」と坊主がボソッと話しかけてきた。
「確かに、めちゃくちゃ後距離近いね。面白いけど」
「俺も正直思った!」
坊主は、担任の真似をしながら「痛いわ!!!」と言った。意外と似ていたからちょっと笑ってしまった。
「あっ、本当ごめんな。俺思いっきり投げてしまって」
「大丈夫。私もしっかり受け止めれなかったし。キャッチというか下手なんだよね。」
「下手というか難しすぎるさすがに。」
初めて話したこの坊主と案外会話を弾ませていると、さっき隣に座っていたキラキラスマイルの子が「失礼します」と保健室へ入ってきた。
「大丈夫!?」と眉をひそめながら、その子も偉く心配してくれていたみたいだ。
「大丈夫。もう平気」とこの腫れた頬を冷やした状態なものだから、全く効果はなかった。
「もう!!勇翔!!野球部のくせに球悪すぎでしょ!」
「いやー、本当にミスった。というか避けたんだよ。その相手が。」
「南ちゃんコイツ本当に送球はあんまり良くないんだよ。本当にごめんね」
「えっ、全然。大丈夫大丈夫。むしろ、良い球じゃないかな」
「南ちゃん面白いけど、それは心配になるや」とまたまたキラキラスマイルをしてくれた。
「南さん、面白いよね。大人しい人だと思った。」
「私も今日気づいた。南ちゃん何かよろしくね」
「もちろん」何て言い、ちょっぴり嬉しい気持ちになった。
「はい、これ」と忘れていた眼鏡をその子は渡してくれた。
「ありがとう」と言い受け取り、すぐさま眼鏡を装着した。やはり、安心感が素晴らしい。
「眼鏡無い方が個人的に可愛いけど眼鏡も可愛いらしいけど、南ちゃんのファンにはなったよ」
「確かにな」
二人は終始、爽やかな笑顔で話してくれた後、大会の閉会式があるということで戻って行った。
クラスメイトとここまで話すのは初めてで、どこかあたたかい気持ちになった。
しかし、ずっと私は二人の名前が思い出せず、焦ってもいた。
初めまして!初投稿!樺太郎と言います!
どんな投稿頻度になるのかは分かりませんが、どしどし投稿できたらなと考えています。
夏子の青春をどうか見届けていただけたら嬉しく思います。
これからも、雨子ときどき晴れ男をよろしくお願い致します!!