契約・そして旅立ち
2人を包んでいた闇が次第に消えてきた。目が見えるようになる。
リリアがいない。
ショオン「リリア?リリアどこだ!?」
・・・・・・まさか……。
リリア「ここよ。」
ショオン「どこ!?」
リリア「あ、ショオンのなか。」
ショオン「何で!?」
リリア「何でって一緒になりたいって契約したからでしょ?」
え?いやそうなんだけど。
ショオン「一緒ってそういう一緒なの!?中に入っちゃう系!?」
リリア「あれ?言ってなかったっけ?」
ショオン「うん、一言も。初耳です。」
リリア「あれぇ〜?ま、いっか!」
いっくないです。何か頭の中に直接語りかけられてるみたいだ。いやそれより…
ショオン「え、ねぇ出れないの?俺的には隣にいてほしいんだけど…。」
リリア「かわいい事言うね〜。でも残念だけど契約したら私達は中に入って出られなくなるの。中から力を貸す感じ・・・なん・・・だけど・・・」
また初耳なんですけど。契約したら…ん?って事は成功したのか?・・・ということは主従関係に・・・。と俺が頭の中で独り言してると目の前にリリアが出てきた。
ショオン「何だ、出れるんじゃないか。嘘を吐いて、びっくりさせるなよ。」
リリア「う、嘘じゃないよ!すぐ疑うんだから。っていうか何で出れたの!?」
俺が知りたいよ。でも出てくれて良かった。・・・あれ?さっきと姿が違うような…?
ショオン「出れなくなるのって、絶対?」
リリア「うん、絶対!例外はないよ。」
でも今のこれは例外になるのでは…?
ショオン「原因は分かる?」
リリア「・・・・・・あ〜、多分だけど、契約の時ショオンの言葉が原因かも。」
俺の?あ、恋人になってほしいって言葉か?
ショオン「じゃあ、儀式失敗しちゃった感じ?」
リリア「ううん。ショオンにも私の力がいってるから、成功してるよ。ただ、普通の契約より何倍も強くなってる。分かるの。・・・っていうかショオン大丈夫?何ともないの?苦しかったりしない?」
ショオン「え、うん。何ともないけど・・・。むしろ力が漲ってくるよ。・・・え、もしかして何が起きるのが普通なの?」
じーっとリリアを見る俺に、リリアはギクゥッとする。
リリア「あっ、あのですね・・・、悪魔と契約したら普通は何かしら起きるの。数日間苦しんだり、力が暴走して止まらなくなったり、場合によって力が抑えられなくて死んじゃったり・・・(小声)」
最後の方は小声だった。いやそんなことより…。
ショオン「それ先に言ってくんないかな!?」
リリア「だ、だって!代償の事先に言ったらショオン絶対契約してくれないと思って…。それよりもこの私の強大な力を何事もなく抑え込むんだから、こっちがびっくりしちゃうよ!・・・私最強の悪魔なのに(ボソッ)」
うん、しなかったと思う。最後の方何か聞こえた気もするが気のせいだろうか。
ショオン「へぇ、リリアって強い方なのか?ってか悪魔の中にも強弱があるんだな。」
リリア「う、うん。かなり強い方だよッ!力が強いほど代償も大きくなるの。」
ふむ、なるほどな。・・・っていうかそれも言ってほしかった、といわんばかりの目でリリアを見る。するとリリアは焦った様子で言う。
リリア「い、いいじゃんッ!無事うまくいったんだしぃ!代償が無いのが不思議だけど。」
まぁ、そうだな…。それよりも…。
ショオン「まぁ、上手くいって良かったけど。代償がないのは何でだ?あと、成功したって事は主従関係になっちゃったのか?」
リリア「私もわかんないよ〜。ただ、話して分かると思うけど主従関係にはなってないよ。代償は本来力がない人間がいきなり強大な力を手にする代わりに自分の体に何かしら起こさせるの。力を受け入れる器としての強さ、お互いの相性によって変わってくるよ・・・多分。」
リリアもよく分かってないようだった。
ショオン「主従関係じゃないって事は、まさか─」
リリア「そのまさかよ!あなたがあんなこと言うから私たち・・・こ、恋人関係になっちゃったじゃない!」
リリアが顔を赤くして詰め寄ってきた。怒ってるのかな…。
ショオン「ご、ごめん。・・・リリア怒ってる?」
リリア「・・・!ち、違うわ、怒ってなんかない。そ、その・・・嬉しくて。ショオンにあんな事言われて、照れただけよ。」
ショオン「そ、そうなの?嫌じゃない?」
なんだ、照れて赤くなってたのか。可愛いな。
リリア「う、うんいやじゃないよ。・・・キスされてびっくりしたけど、嬉しかった…。でもよかったの?悪魔の私にキスなんかして…。」
ショオン「え、うん。主従関係はなんか嫌だなと思ってさ、どうせなら親友とかそういうのがいいなと思って…。でもリリアがかわいくてついあんなことを…悪魔とか関係ないよ。少なくとも俺はね─うぉっ!」
リリア「〜♡!」
リリアが抱きついてきた。その顔はとても幸せそうだ。なんか恥ずかしくなった。俺は話題を変えることにした。
ショオン「それより、これからどうしようか。起きてからずっと知らない場所でさ、どこに行けばいいか、何をしたらいいか分からないんだ。」
あえて触れなかったが、これ絶対俺がいた世界じゃないよな。だって悪魔いるし敵とか言ってたし。好奇心が勝った俺は割とすぐ飲みこんだが。
リリア「ショオンが知らないのも無理ないよ。何となくわかってると思うけど、ここはショオンが元いた世界じゃないわ。まぁ、断片的なものはあるとは思うけど。あなたのとこと私達のとこが混ざり合ったって言ったら分かりやすいかな?・・・でも残念ながら原因は知らないわ。」
うん。知らない街の中にコンビニあったもん。すげー変だなって思ったけどお腹が空いていたので気にしなかった。・・・混ざりあった?・・・でも妙に納得できる。
ショオン「なるほどね。・・・俺以外に人間いると思う?」
リリア「他の街に行けばいると思うわ!」
まじか!俺は心が踊った。まだ2日目だけど凄く恋しい。
リリア「ただ混ざり合ってからは何故か敵に街を乗っ取られてたりするの、人間も生きてるか分からないわ。ショオン人間に会いたいの?」
まじか!?俺の心は踊るのをやめた。
ショオン「と、とにかくどこか行こう。そりゃ会いたいよ。・・・何でか分からないけどこの街にもう敵はいないような気がするし。」
元から気配は感じる事はあったけど、今のこれとは次元が違う。
リリア「あ、それは"魔力感知,,よ。私の力の権能の一つ。これも強さによって範囲が変わってくるわ。魔力を持つ生き物の場所を知ることが出来るの。・・・それにしても何にもしてないのに使いこなせるなんて、凄いわショオン!」
そんなものがあるのか。何それ便利。
ショオン「これも同調率?のおかげか?・・・あと人間って魔力あるの?」
部屋を出て街を得るきながら聞いてみる。
リリア「同調率もそうだけど…ショオン、重要な事だから言うね。普通の契約をして成功した場合、身体の中から力を貸し出しするんだけど、私達のそれは力の貸し出しじゃなくて共有よ。・・・ちなみに人間には魔力はないけど何かの種族と契約して成功した場合は魔力があることになるわ。」
貸し出しじゃなくて共有?・・・つまり俺達みたいなのは魔力があるということか。
ショオン「何が違うんだ?」
じゃあどうやって魔力の無かった俺を見つけたのか聞こうとしたけど心当たりがあったので聞かなかった。初めに言ってたしな。そうじゃなかったとしても、リリアなら見つけられるだろう。・・・あとさっきから俺の横で低空飛行するのやめてもらえる?
リリア「貸し出しは、呼びかけやお願いをして私たちがあなたたちに力を貸すの。それで、共有は…そんなことせずに初めから使える状態。しかも、力も馴染んでて、もう使いこなせると思う。普通ならそうはいかないわ。」
へぇ、じゃあ俺ももう使えるのかな。
リリア「それに何よりも凄いのは、出れるはずのない私が出れて、私も同じように力が使えるの。これがどういう事か分かる?」
ショオン「・・・ん〜?…いででッ!」
ピンと来てない俺にリリアはほっぺを引っ張ってくる。
リリア「も〜ッ!バカっ。つまり、弱い悪魔とかならともかく、私のような強大な力を使う存在が2人もいるって事よ!・・・恐らく…いえ絶対!2人で一つの力を同時に使えるわ!」
・・・あ〜、なるほど…。それは確かにやばいかもな。…2人で一つ…。
ショオン「プリキュア的なことか?」
リリア「ぷりきゅあ??」
ショオン「い、いやなんでもない。・・・確かにとんでもない事ってのは分かる。でもそれってダメな事じゃないだろう?他のやつらからしたらとんでもないことだけど、俺がリリアの力を悪い事に使わなかったら問題ないんじゃないか?」
リリア「!・・・まぁ、別にダメな事じゃないわ、どちらかと言うと凄いことだわ。・・・悪い事に使わないって約束してくれる?」
ショオン「ああ、もちろん、約束するよ!恋人からのお願いだしな。」
リリア「〜ッ///」
リリアが後ろから俺の首元に抱きついてくる。飛んでるせいか重さは感じない。悪い事って言われても思いつかないしな、それよりも気になってたが…
ショオン「リリアって良い悪魔だよな。悪魔って悪い事しかしなそうなイメージがあるけど…。本当に悪魔か疑うよ。」
リリア「そ、そんなんじゃないわッ!私はただショオンが悪者になってほしくないどけよ!」
ショオン「そっか、ありがとう。」
でも絶対俺と出会う前からこんな感じだったよな。
街の端が見えてきた。とりあえず俺が街に来た道と反対側に歩いてきたけど…どこに行けばいいか分からないので次の街でも探すか。
途中にコンビニがあったので食べ物などを補給した。(この世界でも近くて便利とは)しまう場所に困っていたらリリアが力を行使した。すると食べ物など入れておいた袋ごと消えてしまった。「え?何したの」と聞いたら「邪魔だったでしょ?だから異空間に移したわ、いつでも出せるから安心して。」とのことだ。・・・なんでもありだなどういう仕組みだろう。
ショオン「コーヒー2つ出せる?」
リリア「コーヒーね!・・・はいっ。」
黒い空間が出てきてリリアが手を入れる。するとコーヒー2つが出てきた。どういう仕組みだろう。聞いても分からなそうなので聞かなかった。・・・俺も使えるのかな?
ちなみにコンビニでコーヒーを見つけたリリアは大量に取っていった。まだ数十本はある。そのコーヒーを2人して飲みながら歩いているとふとリリアが…
リリア「ねぇ、ショオン、どうして飛ばないの?」
危うく俺はコーヒーを吹き出しかけた、・・・え?
ショオン「・・・え?飛べるの?」
リリア「・・・え?飛べるわよ私と契…///恋人になった時から。」
・・・そうなの?てっきり人間だしさすがに飛ぶのは無理だろうと思っていた。早く言ってほしかったな、それ。
ショオン「・・・さすがに練習が必要じゃないか?それに俺羽なんかないし。」
リリア「さっきも言ったけどもう使いこなせると思うわ。飛ぼうと思ったら羽が出てくると思うわ。生えてる私と違って、魔力で羽を生成するの。でも確かに細かいコントロールとかは練習がいると思うわ。」
まじか。・・・そういえばちょっと前、リリアの手を握って空に浮いてたっけ。仮に俺が飛べなくてもそれで飛ぶことは出来たのかもな。
ショオン「でもせっかくなら、歩きたい。知らないところを歩くのは冒険してるみたいで楽しそうだしな。それに・・・」
リリア「それに?」
ショオン「リリアのこの力を試してみたい。敵を倒してみたい!」
リリア「楽しそうねショオン?その顔もとってもかわいいわ,,,。分かったわ、歩いていくのね。じゃあ私が案内してあげる!」
ショオン「え?リリア分かるのか?」
リリア「ええ。私がショオンに会いに行く時に飛んできた道と、少しの範囲だけだけど…ちょうどこの道は通ってきたところ!通った道はマップに埋められるわ!」
ショオン「マップ?」
脳内マップの事だろうか?
リリア「うん、これ・・・」
リリアが右手を出す。すると掌の上で何かが生成された。スマホのサイズぐらいの円形の物だ。所々色鮮やかでその他の所は真っ黒だ。真ん中に青い点がある。…マップだ。
リリア「色がある所は私が行った事ある場所よ。黒い所は行った事がない場所。ちょうどこの先の割と近いとこに別の街があるわ・・・ただこれずっと出してるの面倒なのよね…。そうだわ!ショオン腕を出してくれる?」
なるほどなぁ、と思いながら左腕を出した。するとリリアが俺の左手首辺りに何かした。
リリア「・・・上手くいったわ!これでいつでも地図が見れるわよ!さぁ、街の外に出ましょ。」
あれから結構歩いて街の外に出た。そこに拡がっていた光景に俺は目を奪われた・・・ーーー