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気付けば美人配信者に囲まれてた  作者: 霜惣吹翠
4B.図書館の魔術師 vバナナ
83/83

カルマ

 ぎょろぎょろぎょろぎょろ。


 「ふふっ」と笑う右の席の霞。ぎゅ~っと俺の腕を抱きしめる。

 「ど、どうかしましたか? 浦島さん」英語の若い女の先生がドン引き。

 「いや、どうもしてないです」

 「そ、そうですか? なんか半面狂死ですが」

 「反面教師? 誰がですか? 僕がですか? あはは」

 「たしかにそうとも言える表情(?)ですが……」


 浦嶋理の顔半分、右側(先生から見て)は地獄の真顔。一方の左側(同様)は天国の笑顔。ヤヌス神の親戚だろうか。終わりと始まり。

 終わりの始まりだろってか。

 一方で周りの男共は俺のことを憎らしく羨ましく見やがって。そんなに霞に掴まれたいか。俺だって前までなら死ぬほど憎んだけど。今は改心した。やめとけと忠告してやりたい。反面教師だぞ、おめぇ!


 「あ。ちょうどいいから教科書の八行目を英語で訳してください」

 「Bella,I love you. I want to marry you.」

 「あ。左のページじゃなくて右のほうですね」

 「Please! Leave me alone! I’m begging you, Bella!」

 「(なんかものすごく感情入ってる)よくできました。皆さん、拍手~」


 もちろん。拍手は鳴らない。鳴るのは後ろに置いてある、誰かが家から持ってきたギロチンが落ちる音。ガコガコ……。最新は女子でも簡単に殺傷できる、紐を引くだけ。これには通販番組も感嘆。



 キンキラキンコーン♪


 「ちょうどいいので授業はこれで終わります。渡しておいたプリントを来週までにやってくるように」

 「規律」学級長の優等生男。


 ぞろぞろぞろ。男共が俺のほうへ。


 「おい。やめろ! 離せ!」


 うわぁ。力強すぎ。ゲーマー陰キャじゃ対抗できない。ギロチンひんやり。


 「礼っ!」優等生男パウダーウィッグ。ケーキを顔に叩きつけるだけでなく、喉まで詰まらせてやりたい。


 ギョグン……。

 

 \(^o^)/ ×2


 てんてんてれれん。


 ということで昼休みになったのでトイレと言って待ち構えていた男子この野郎に絡まれる前に窓からダイブ。仕込んで置いた麦藁で凌いだぜ。妹と無限ワンアップ(亀を踏んずけただけ)したはずなのに残機があと二つしかないから慎重に逃げないと。

 

 「まずは購買……じゃない。保健室だ」


 昇降口ひゅいーんがしゃん(自動ドア)。階段わっふぅ!(ケツワープ)。スタスタ(廊下ダッシュ)。先輩男達のプワーンヒュロロヒュロロ。


 「ひあうぃーごー!」スリッパの悪魔。

 「ひあうぃーごーしてくんな!」


 廊下行き止まり反転ジャンプ回避。からの工事中で足場が無い。先輩たちが迫ってくる。やばい。一か八かしゃがんでみる。先輩たちがプワプワ回る、、わけねえだろ!


 「もぐもぐ」下に見つけた。

 「西郷さん!」

 「金ちゃんだよ。もぐもぐ。あっ、理。購買行くけど。どう?」

 「そんな場合じゃない! 助けて!」

 「わっふう!」先輩A。

 「ひゃっはー!」先輩B。

 「駄目駄目駄目!」なんか変なの乗ってる先輩C。

 「助けろってどうしたんだい。まずは説明してくれないと。ほら座って。あ。お茶を持ってくるよ」

 「置いてくな! 西郷さん!」

 「一体どうしよう~この思いどうしよう~」皆で変なの乗ってる。

 「くそ!」


 こうなったら仕方ない。下へ飛び降りろ!


 「うわああああああああああああ!」


 ぽよよん。ぷかん。ほろっと。そこは秋の温かい金の腹の上。人間麦藁かてめえ。


 「だ、大丈夫?」

 「とにかく助かった」

 「うああああああああああああ!」下へ飛び降りてくる先輩方。無事足首を挫く。

 「保健室に急がないと」

 「彼らを診てもらわないとね」

 「違うが!」


 その辺の窓を打ち破り家庭科室。そこを出て曲がって奥。保健室に駆け込む!


 「おりゃああああああああ!」そのままベッドへダイブ!

 

 作戦成功! あとは冷蔵庫にある妹自家製弁当を。

 冷蔵庫を開けて、、え? なんだこれ? 三角の水着? ビキニ? なぜこんなところに。


 「あらら。元気な病人だわね。頭の怪我かしら」

 「えー!」


 浦嶋理が保健室で目にしたものとは?

 右手に鷹を乗っけ、左手でナスを擦る。富士山の恰好をしたお姉さん。


 「なんだ。保健室の先生か」

 「ふーん。保健室に入っていた弁当って浦嶋君のだったの。へー?」ジト目。しかし富士山の白い顔。

 「なんですか」

 「彼女さんの? ほら、噂の」

 「妹のです」

 「あらそう。むん? あっちから地を這いずる男の子が。沢山いるわ。大変大変」

 「逃げないと! (窓ガラガラ)先生、明日も来るからよろしく!」

 「はいは~い」


 さて。どこで食べるか。きょろきょろ――グラウンドに砂煙舞う。そこから悍ましい人影が――なん……だと。

 霞……京子だ。にっこにこでバスケットをゆりゆりしながら。


 「浦嶋君。今日はピクニック日和よ」

 「ごくり……」


 ど、どうするって考えるまでもない。逃げるに決まってる。待て、砂煙が壁になって俺の逃げ場を塞いでいる? ん?――もう一つ人影が。スタイルが良い。スレンダー、あ、あれは!

 腕組みして仁王立ち。ギャル特有のわからせ誘いの剣幕だ!!


 「霞さ。ちょっと出しゃばり過ぎ。うざいんだけど~?」パッチリした目がパチパチ。

 「茨田。かっけえ~」

 「(アイコンタクトなんだけど。何見惚れてんだよ。馬鹿)」照れる頬隠せず。

 「むっ。茨田さん。何の用ですか」霞が見なくてもわかるくらい嫉妬してる。

 「草。用が無いからどっか行けって言ってんの? わかんないの?」

 「わかりませんね。勘違いしてますが、浦嶋君は私の彼氏ですよ。彼女面しないでくださいね。うっ、うざいんですけど??」赤面。チラチラこっち見てくる。可愛いからやめろ。

 「彼氏? ウケる。理に彼女いねえし。てかいるわけないじゃん。お前、自分のこと彼女って? 妄想ばっかしてんなよ~……ストーカー」茨田が仕掛けた。

 「私の邪魔をするのですか。茨田さん」

 「お前が邪魔なんだよ」

 「もう一度言うわ。浦嶋君は私のよ。私の人よ。あなたが邪魔する理由なんてないわ」最後の忠告。

 「っ……」茨田怖いかぁ~強気になって出てきたのにやっぱり怖いか~。ギャル特有の雑魚さ。たまらんですなぁ~(現実逃避)


 ここからは手加減しない。霞の発言は明らかに上位者ゆえの余裕だった。しかし徐に茨田が動じているのを見逃すほど霞は優しくなかった。トドメともいえる一言を茨田へ叩きつける。


 「それともなんなの? あなたも浦嶋君のことが好きなの?」ふふっと。


 茨田には悪いが俺はここから逃げさせてもらう。止めても無駄だぜ。霞の注意が完全にそっちに向いたからな。こんな危険な場面、真っ平ごめんだぜ! スタスタ。

 という足も止まったのは、もちろん俺に人間としての誇りがあったからではない。なんか茨田がラップを始めたからだ。ラップバトルだと!?


 「な、な、な、な、な、な……」

 「(ラップだ。ラップに違いない!)」

 「な、なわけねぇだろ! す、すきとかじゃねーし! 理とかゴミ陰キャのことすすす、好きになるわけねえだろ!」赤面ぐるぐる目。

 「(え、もしかしてワンチャンある?)」

 「へー。好きなのかしら?」なぜか勝ち誇る霞。

 「だからちげえって! つ、つ、つ、つっ……(しーん)。つーか! いいところなんか一つもない。いっつもカスみてえに話しかけてきてうざいし! 足とかチラチラ見てきてキモいし! まじありえねえ!」

 「(あれ、これツンからのデレじゃなくてツンからのキレ? ガチ? でも――)――ご褒美だぁ~」キラキラ。

 「ああ! こうなるんだもんなぁ! あー!!」茨田ガチギレ。


 と、ツンキレと変態がわちゃわちゃしそうなところで空気が氷りついた。一瞬でである。霞京子が……凄然とした。

 

 「浦嶋君がキモい? 聞き間違いでは無さそうね」

 「や、やんのかよ?」汗だく茨田。

 「思い知らせてあげましょうか。完膚なきまでに」


 さて。冷蔵庫の温度が低すぎたのか、弁当箱が冷たい。ああ、茨田か。いいやつだったなぁ。

 と、半ば諦めたとき――野球の球が空からちょうど霞のほうへ落ちてきた。霞が一瞬、ムッと空を見上げた――逃げるなら今しかない。


 「(茨田!)」ぼんやりした目をパチパチ。

 「(しょ、勝負はひとまずお預けってだけ! 逃げるわけじゃないからっ!)」ムッ。

 「(はいはい雑魚ギャルバイバイ~)」スタッ。

 「(理の癖に馬鹿にするな! 今度ちゃんと懲らしめてやる!)」ドロン。


 理と茨田はそれぞれ逃げた。霞京子は少し遅れて二人が居なくなったことに気づく。そのせいで球から目が離れた。球はだんだんと速く鋭くなって霞京子の頭上へ――野球部員が忙しなくやってきた。


 「ボールボール!! 危ない!!」


 その瞬間、野球部員と目が合った。だから一層野球部員は危惧した。のも意味が反転した。部員は自分自身の心配を始めたのだ。その女はまるで人の形相をしていない。鬼と言うにもか弱い。しかし、しかし女は平然としていた。この世にこれほどないほどに……平然としていた。部員が感じた恐怖、その根源たる女の憤怒はおよそ女のものではない。部員は、いや、人間は、このあまりに完美された平然を理解できない。それがゆえに混乱し、末に脳は憤怒と計算つけた。錯覚させた。


 球は――見ずとも。霞京子は左手で球を掴んでいた。

 コロリと霞京子は球を転がしてきた。部員はそれが自分の頭のように見えた。


 「何が危ないのですか」

 「い、いやっ……」

 「とりあえず一階のカメラからね」


 スマホを取り出した。五十七台のカメラ。一階の廊下、教室の様子がスマホの狭い長方形に映っていた。


 砂蹴って、草蹴って、窓は割らずに開けて入ってまた閉めて。どこかいい場所が無いか。おっ、あそこなら見つからないかも。

 すたすたしるべすたすたろーん。がらり。


 「だれもいないし。静かだ」


 隙間なく詰め込まれた本棚が要塞のように並ぶ。ジメジメしていて、だけどちょっぴり温かくて、埃臭く大人っぽい香り――図書室。ここはまだ隠れたことが無かった。

 一歩二歩。読書する人間だって霞のファンかもしれない。本棚に隠れながら。ん? メキメキ音がする。なんだ?



 ふわ~っ。風が咲くように吹いた。白い花吹雪がそよ風と踊って俺を魅了した。運命を感じた。心地のいいこの風に。差し込んだ暖かく輝く昼に。ここに導かれたのだと悟った――黒髪の靡くメガネっ子はふわっと口を開けたまま、俺に気づいて、柔らかく驚いていた。霞や茨田のような美少女じゃない。どこにでもいるもう一人の少女。それが今は幼く神秘的でどうしようもない。間違いなく、この昼がそう映したんだ――誰も逆らえない時間の昼、人の発展がこの場所。この自然そのものが平凡な彼女の背中を押して刹那に咲かせたのだ。これほどの強い運命がどこにあるのか。俺はすっかり、彼女へ惹きつけられてしまった。


 「なんて、綺麗な少女――ぶへっ」口になんか入った。紙?


 白い花吹雪。広げてみればあら不思議。男同士で抱き合う絵が。BLもまた運命……なわけがない。おい待て。この片方の顔、髪型――間違いない。嘘だろ。


 「コレェ……ワイヤナイカイ」


 秋風轟く。また原稿はためく。自然の歓声爆笑、阿鼻叫喚。俺はもう耳を塞いだ。混沌とした運命が今、始まった。

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