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7.公安との共同戦線

 15時を少し回ったとき、俺はゆっくりと目を開いた。

 カナ用の布団も用意したのだが、彼女は寝相が悪いのかいつの間にか俺の布団に入り込んで、俺の肩を枕代わりにスヤスヤと寝息をたてている。

 俺自身に疲れが無かったら、理性が吹っ飛んでいるかもしれないと思いながら体を動かすと、彼女も目を覚ましたらしく、特に驚きもせずに虚ろな目をこちらに向けてきた。

「ふあ……よく眠れましたね」

「…………」

 どうやらコイツを、普通の女の子だと思ってはいけないようだ。


 ベランダ側のカーテンを開けると、その向こう側では鬼狩警部がイケメン青年や革ジャン女子と共に、機材で測定などを行っているようだ。

「お疲れ様です」

 鬼狩警部は、こちらを見ると爽やかに挨拶をした。

「こんにちは。よく眠れましたか?」

「はい……すぐに出発しますか?」

「いや、実は近所のお弁当屋さんで食事を買ってきたので、済ませてから行きましょう」


 間もなく俺たちは食事を済ませると、イケメン青年は手ぶらだったはずなのに、振り返るとナックルを装着していた。

「では、行きますか……」

「ええ」

 革ジャン女子もクロスボウを持っており、鬼狩警部も物々しい槍ハルヴァードや、冒険者を思わせる甲冑を身につけていた。


 カナも胸当てや武器を装備すると、俺もリボルバー式の拳銃を出すことにした。

 すると、公安の3人は驚いた様子で俺を見てきた。

「比名さん……火器使いだったのですか!?」

「え、ええ……敵に襲われたときに、とっさに思いついたのがこれだったので……」


 そう答えると、イケメン青年や革ジャン女子は身を乗り出して、俺の拳銃を眺めてきた。

「銃使いは6課でも珍しいんですよ」

「そ、そうなんですか!?」

 珍しがっていないで、警察なのだから火器類を持ち込めばいいのにと思っていたら、イケメン青年が答えた。

「ええ。ダンジョンの中では、どういう訳かこの世界の武器の威力が大幅に下がりますからね。個人スキルで出した武器で戦うしかないんですよ」

 ダンジョンの中は異世界だから、物理法則でも変わってしまっているのだろうか。


「みんな、準備はいいか……?」

「はい!」

 鬼狩警部は、俺やカナを見た。

「では、比名さんにカナエルさん……道案内をおねがいします」

「わかりました」


 鬼狩警部と、イケメン青年こと長谷川巡査部長ジャン女子こと倉科巡査部長が守るという陣形で、俺たち5人はダンジョンへと入った。


 ダンジョンの中は、表と同じように夕暮れ時だったが、モヤがかかっていたので真夜中に入った時と同じくらいは視界が悪かった。

 それでも目を凝らしてみてみると、最初は森にいて歩みを進めると洞窟の中に入っているということがわかる。

「周りの様子が……よくわかりませんね」

 イケメン長谷川巡査部長が言うと、鬼狩警部は倉科巡査部長に言った。

「倉科君、レーダーお願い」

「はい!」

 彼女は変事と共に、目を瞑ってブツブツと何かをつぶやいた。

 すると、俺の視界の隅に、周辺見取り図のようなものが現れ、青い5つの点が陣形を組むように並んでいた。

「もしかして、この青い5つの点が……俺たちですか?」

「うん、これは私の個人スキル……スリーハンドレッドレーダー。名前の通り半径300メートルが見える」

「べ、便利ですね……」


 鬼狩警部は言った。

「確かに、倉科君の固有スキルは便利だけど、過信は禁物だ……周りに注意を配ることも忘れてはいけない」

「は、はい!」


 それからしばらくの間、特に問題もなく進むことができたが、カナの落ち着きが少しずつなくなっていることに気が付いた。

 そう言えば、昨晩来たときよりもモンスターが襲ってきていないように感じる。


「……!」

 カナが歩みを止めた。

「どうした……?」

「嫌な気配を感じます……場所は……」

 コイツは、じっと夕闇のモヤの中を睨んでいた。


「11時の方向……」

 その方角に視線を向けると、背骨が悲鳴を上げるように震えた。

 体中の毛穴や体の中の血まで騒ぎ、身震いを感じる。こんなに得体の知れない力を感じたのは、生まれて初めてだった。


 倉科巡査部長も言った。

「11時の方角に生命反応あり……大きさはウシほどだと思われます」

 直後に、俺の視界の中にも赤い大きな丸印が映った。

「警戒しろ!」

 鬼狩警部はハルヴァードを構えると、長谷川巡査部長も身構えた。

 俺ももちろんリボルバー式拳銃の安全装置を解除する。


 得体の知れない何かの存在が近づいてくる。

 距離250メートル。

 距離200メートル。

 間違いない、迷いなくこっちを目指して進んできやがる!


「このプレッシャー……エリアマスターじゃないか!?」

 長谷川巡査部長が言うと、倉科巡査部長も女性とは思えない低い声で答えた。

「危険レベルの測定……終わりました。ランクはA」

「いきなりダンジョンマスタークラスかよ!」

「警戒を怠るなよ」

 間もなく、モヤの中からウシのようなシルエットが見えた。いよいよか……。

倉科けいこ(女性)

所属:公安警察6課

能力:スリーハンドレッドレーダー(グレード★★★)

自分の周囲(半径300メートル)をレーダーのように索敵する。気配を消すタイプの敵を見つけることはできないが、地形なども大まかに把握することもできる。



腕力    C ★★

霊力・魔法 B ★★★

行動速度  B ★★★

耐久力   C ★★

技量・作戦 B ★★★

索敵能力  A ★★★★

意志力   B ★★★

経験    C ★★ 


好きなモノ:ツーリング、家呑み、果実酒、家でゴロゴロすること

嫌いなモノ:人混み(後で頭痛に悩まされることが多い)

備考:探索系能力者、対空攻撃


一言:鬼狩隊のレーダー役。欧米系の関係者が注目する実力者の1人。

その場にいながら、ほぼノーリスクで周囲の状況を把握できるため部隊内でも重宝されている。戦闘力はバトル系に比べると見劣りするが、探索系能力者は戦えないことが多いため、彼女はかなり貴重な存在と言える。

なお、家呑みをした翌日は部屋が凄いことになっている。

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