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5.警備局公安第6課の鬼狩

 俺は愕然としながら届いた封筒を眺めていた。

 公安って、記憶が正しければ極右暴力団体とか、極左暴力団体とか、危ない宗教団体とか、そういう連中を監視、場合によっては逮捕する組織だったよな。

 間違えても、俺のようなちっぽけな存在にとっては、一生お目にかかれるモノじゃないはずなんだけど……タイミングの良さが怖すぎる。


 カナエルの場所へと戻ると、俺はゆっくりと腰を下ろした。

「なんの紙ですか……これは?」

「お前にわかるように言うなら……そうだな、特別な衛兵さんからお手紙が届いたってところか?」

「お手紙ですか……」

 俺は生唾を呑むと、ゆっくりと封を切って中を改めてみた。


 そこには、公からのちょっと堅苦しい挨拶文と共に、先ほどニュースでやっていた全国で問題になっている市民の失踪事件のことが少し紹介され、更に情報収集に協力するように呼びかけられていた。


 全てを読み終えてからカナエルに視線を向けると、スマートフォンのバイブレーション機能が起こり、テーブルで音を鳴らしていた。

 そっと手を伸ばして中を見ると、ディスプレイに表示された電話番号は、封筒に書かれている電話番号と一致していた。


「はい、比名です」

【はじめまして。警察庁警備局6課……S県支部に所属する鬼狩おにがりと申します。比名吾郎さんの携帯電話でお間違いありませんでしょうか?】

 ヒミョウゴロウときちんと呼んでくる時点で、俺のことをしっかりと調べていると確信した。普通ならヒナゴロウとか呼ばれるし、馴れ馴れしい奴になるとビミョウ君とか言ってくるんだ。

「間違いありませんが、何か御用でしょうか?」

【お時間が空いた時で構いません。一度お会いできないでしょうか……できれば、昨晩にいらっしゃった有翼人の女性もご一緒だと助かります】


 公安のスピーディー過ぎる対応に、俺は愕然とした。

 日本の警察は優秀という話を以前に耳にしたことはあるが、いくら何でも異世界から人が着いたら、当日に対応ってスピーディー過ぎるだろう。どうなってるんだ公安6課は!?


 どうやらカナエルも会話内容を聞いているらしく、俺が視線を向けると頷いた。私はいつでも構わないと意思表示をしている。

「……そうですね」

 向こうが超絶スピーディー対応をしてくれているのだから、こちらも答えてあげるのが世の情けだと感じた。だとすると……

「では、今からお会いしましょう……場所はどこがいいでしょうか?」


 スピーディーにスピーディー対応をすると、さすがに電話の向こう側で鬼狩という人物が驚いていることがわかった。いや、正確には喜んでいるというべきかもしれないが。

「では、比名さんのご自宅を出て……道を北側に進むとコンビニがありますね。そこで待ち合わせをしましょう」

「わかりました。いったん電話を切りますね」

 携帯電話を切ると、俺はカナと共に近所のコンビニを目指した。



 見慣れたコンビニの駐車場には車が4台ほどあった。

 どれもが見慣れた車だが、肝心の鬼狩さんはどこだろう。そう思いながら見渡すと、ちょうどコンビニから出てきた男性と目が合った。

 スーツ姿ではあったが背格好は俺と同じくらいなので普通。手にはコンビニ袋を下げ、中からは競馬新聞が出ているという、どこにでも居そうなサラリーマンだ。

「お忙しいなか、来ていただいてありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ無理を言ってしまってすみません」


 そう言いながらお互いに挨拶を交わしているので、はたから見たら営業マンと顧客のやり取りにしか見えないだろう。

 そのサラリーマンは、これはまた普通な車へと俺たちを案内すると、ドアを丁寧に開けた。

「ここで立ち話もなんなので……近くの喫茶店にでも……」

 さすがにそれだと、向こうのペースに引っ張られそうなので、俺は代案を出した。

「俺の家でお話しませんか。お手紙を拝見しましたが……その方が都合も良いかと……」

 彼はなるほど……と言いたそうに頷いた。

「お気遣いありがとうございます」


 自分の居場所を明かしてしまうのはリスキーな選択かもしれないが、アパートに手紙が届いた時点で公安警察の皆さんには、俺の周辺はバレているだろう。

 ならせめて、自分のホームで話し合いをした方がベターだろう。

「散らかっててすみません」

 そう言いながらドアを開けて、サラリーマンを迎え入れた。


 俺の部屋にあるモノは、テレビにパソコン、炊飯器、電子レンジという、いかにも貧乏な独身男の1人暮らし部屋という雰囲気丸出しだった。

 サラリーマンは、ここで名刺を出した。

「改めて……警備局公安第6課の鬼狩学と言います」

 差し出された名刺を見て俺は舌を巻く思いだった。鬼狩学さんの役職は警部。ドラマなどでは大勢の部下を持っているような管理職の人だ。


 話を聞いていたカナエルは、どういうこと……と言いたそうな顔をしていたので、俺はそっと中世ファンタジー風に鬼狩警部の役職を説明した。

「大都市の衛兵特殊部隊の、隊長さんのような人だよ」

「ああ~~~って、えええええええっ!?」

 さすがに驚きすぎなので、俺は口に人差し指を立てて静かにと合図した。このアパートはあまり壁が厚くないのである。


「単刀直入にお尋ねしますが、このアパートの側に空間のほころびが現れていますね?」

「はい。正確には、この部屋のベランダの向こう側です」

 俺はそう言いながらカーテンを開いた。

 そこには確かに妙なモヤが広がっているのだが、普通の人に見えるのだろうかという疑問があった。もし、見えているのなら騒ぎになるだろうし、そもそも得体の知れないモノには近寄らないだろう。


 鬼狩警部を見ると、彼の瞳には確かにモヤが映っていた。

「……確かに見えますね。これは……かなり大規模なダンジョン」

「なぜ、ここに現れたことがわかったんですか? 俺も気が付いたのは昨晩でした」

「詳しいことは言えませんが、公安6課には優秀な探索系能力者がいます。調査の結果……3か月前から、このK市に空間の歪みが現れることがわかっていました」

「そうだったんですか……」


 そこまで言うと、鬼狩警部はじっと俺を眺めてきた。

「ところで一緒にいる彼女の……名前を教えては頂けませんか?」


 いよいよ本題が来たようだ。

 相手は公安のお偉いさんだ。下手な答えを返せば、どんな結末が待っているかわからない。かといって、この子は天使です。なんて答えを出してもいいものなのだろうか。


 これは間違いなく、難しい駆け引きになる。

【作者からのお願い】

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 遂に、タグでも紹介した公安第6課の関係者を出せました。もちろんこれは架空の部署です。


 気に入って頂けたら【ブックマーク】や、広告バーナー下の【☆☆☆☆☆】に評価をよろしくお願いします。

 また、★ひとつをブックマーク代わりに挟むことも歓迎しています。お気軽に、評価欄の星に色を付けてください。

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