42.不動産魔王との駆け引き
不動産魔王エリア・フォーティーフォー。
かつて、俺とカナエルの力を奪うために巧妙な罠を張ってきた難敵である。俺はてっきり敵として現れるかと思っていたが、同盟の提案をしてくるとは……世の中わからないものだ。
「なるほど。願ってもない提案だね。君は俺たちに何ができる? 俺たちに何をしてもらうことを望む?」
そう質問すると、カナエルはぎょっとした様子で俺を見てきた。恐らく、経験や年齢を奪われることを心配しているのだろう。
だけど、これは同盟の提案だ。これで能力を奪ってくるようなら敵だとはっきりするし、小細工をして用が済んでからトリガーするような魔法をかけてきても、天使カナエル、天狐ここのそじあまつむり、一角獣グリーンアウグス、鬼狩学警部がいるから、誰かが気づく。
不動産王は、嬉しそうに笑ったようだ。
【単刀直入で重要な質問ですな。私は古城にいる天使や一般兵士たちを無力化させることができます。貴殿は、深夜のうちに古城を通り抜けてラグアデス王国側のゲートにカギをかける】
なるほど。そうすれば確かに……ラグアデス王国をこの領域からつまみ出すことができる。もし、またこじ開けてきても、緩衝地帯は俺たちのモノなのだから対処もしやすい。
「やって欲しいことはわかった。それで、君の望むものは?」
【古城エリア、修練場エリア、南の森エリア、王国ゲート前エリアの4エリアを頂きたい。そこに街を作りたいのです】
俺は仲間たちを見た。グリーンアウグスは頷き、ココも頷き、カナエルも頷ぎ、最後に鬼狩警部も頷いた。反対する人間はいないなら、大丈夫だろう。
「わかりました。同盟を締結しましょう」
【では、手打ち料として……カナエルさんの能力をお返しします】
その言葉と共に、カナエルの姿は高校1年生くらいの姿から、高校3年生くらいの姿へと戻った。
俺の姿は成功報酬といったところか。
話が決まると、後は物事が進むのは早かった。
エリア・フォーティーフォーは、約束通りに深夜帯に古城エリアにワールド側能力を発動させ、駐屯していた兵士たちを閉じ込め、俺たちは洞窟から駆け出すと、最短ルートで王国側のゲート前へとたどり着いた。
正直、どうやってゲートを閉じるのか知らなかったから少し不安だったのだが、相手側のゲートを見たとたんに、俺はあることを思いついた。
この空間同士をつないでいるゲート。これは扉や自動ドアのように、カギとなっている部分があるんだ。
その構造が俺には……わかる!
マジックガンを出すと、俺はそのゲートと呼ばれている異界同士をつないでいる門の一部。付け根となっている場所に銃弾を撃ち込んだ。
弾はまっすぐに飛んで行き、その接合部分に到達すると、ゲートの中には波紋のようなものが広がっていく。俺は続いて次の付け根に向かって弾丸を撃ち込んだ。
同じように弾が貫通するとゲートの中に波紋が広がっていく。俺は次々と弾を撃ち込んで、最後の一発が最後のゲートの付け根に着弾すると、ゲート全体に亀裂が走っていき……王国側のゲートがバラバラに崩れ落ちていった。
これでもう、俺たちの故郷がドラゴンとかいう魔導兵器に蹂躙されることもない。
そう思いながら気を抜いたとき、声が聞こえてきた。
【ああそうそう。ゴロー様……ひとつお尋ねしたいことがあるのですが……?】
俺は視線をゆっくりと古城側に向けた。
そこには確かに、エリア・フォーティーフォーの気配がある。
「なんでしょう?」
【あなたはこのあと、ダンジョンマスターを目指されるのでしょうか?】
ダンジョンマスター。要するにこの緩衝地帯の王になりたいかどうかという話か。
俺は笑いながら答えた。
「王は何人いてもいいと思いますし、必要もなく誰かを蹴落としたいとは思いません」
そう答えると、エリア・フォーティーフォーは微笑んだように見えた。
【左様ですか……貴方様なら立派なダンジョンの王になれるでしょうに……】
「俺はどんな立場であっても、比名吾郎です!」
言い切ると、風が吹いて僕の頬を撫でていった。
まだ、僕の戦いは……ひと段落が付いただけだ。生きている限り、戦い続けなければいけない。
僕はアパートのある、日本側の出入り口を睨み……そして歩き出した。
比名吾郎(男性)
所属:公安6課非常勤職員・裏庭ダンジョンのダンジョンマスター
部下:カナエル、一角獣、白の九十六
能力:ウィザードガン(グレード★★★★)
回転式の魔導拳銃を出す能力。装弾数は6発。任意のタイミングでリロードを行えるが、装弾数に比例した体力や精神力を消耗する。通常弾頭で有効射程距離は50メートルほど。
また、特殊な弾頭を作り出す力と、弾頭を解体することで体力を少しだけ回復する力がある。
能力:天啓(★★★★★)
自分の管理下に入った者の能力を拡張する力、実戦経験時のレベルアップ速度のブースト、危機感知能力、更にゲートを解析する力があるようだが、仔細は不明。
腕力 B ★★★
霊力・魔法 S ★★★★★
行動速度 S ★★★★★
耐久力 A ★★★★
技量・作戦 A ★★★★
索敵能力 A ★★★★
意志力 A ★★★★
経験 A ★★★★
好きなモノ:カナエル、半額商品・半額セール
嫌いなモノ:激務(理由はお察しください……)
備考:対空攻撃、アーマーピアシング弾(魔導貫徹弾)、キャストブレッド弾(鋳造弾)、多層マジックシールド、スネークショット(さく裂弾)、弾丸加速、ゲート破壊弾
一言:成長を完了させた主人公の能力。
仲間たちの援護があったとはいえ、魔導兵器ドラゴンの搬入を事前に察知するなど、高い情報収集力を持っていることが明らかとなった。
もし、ドラゴンが送り込まれていたら、たとえ王国側のゲートで動きを阻止・爆発させていたとしても、S県K市には甚大な被害が出ていたため、間一髪の作戦勝ちだった。
この後の話だが、比名はカナエルと結婚したのち、相棒のアウグスやココと共に、公安警察の職員・ダンジョンの主として勤めを続けている。
ちなみに、公安警察の面々のその後は、大半がわかっていない。彼らは常に正体を隠し続けているため、その足取りを掴むのは容易ではないのである。
【作者からの挨拶】
最後まで、ベランダ先のダンジョン攻略は、エンジェル少女と共に! を読んでいただき、ありがとうございます。
現代日本にダンジョンが現れる。というタイプの小説を書いてみたいと思い、どうせなら公安警察と主人公が仕事をする内容……という形で、本作は執筆させていただきました。
最後の駆け引きは、戦いという形で終わらせるか駆け引きをメインにするかで悩みました。
ドラゴンとの戦いで勝つ……というシナリオもありましたが、敵に情報戦を仕掛けて戦わずして勝つ方が公安には相応しい勝ち方だと思ったので、最後は駆け引きメインの話を選ばせていただきました。
現代ファンタジーを実際に書いてみてわかったことは、私の筆質に合っているのか、書きやすかったという印象を受けました。
主人公はもちろん現代人ですし、周囲にも現代人が多いので、もう少し非日常を見たときの反応や恐怖、戸惑いなどを考えながら、それでも戦う理由を丁寧に描いていければ、今まで以上におもしろい作品が書けるのではないかと、我ながら考えています。
次回以降は【進化するダンジョンとヒーロースレイヤー】という作品の製作に移ります。
人外という差別される主人公が、ダンジョンの長として成り上がっていくタイプの作品です。ぜひ、お手に取って頂ければ幸いです。
では、短くはありますが、今後ともよろしくお願いいたします。




