37.ゴブリンエリアの討伐
俺は、ココこと白の九十六に、公安の鬼狩警部と和解するように促してみたが、彼女は難色を示していた。
「主は例外じゃ……童は未だに人を信じることはできん」
恐らく、隣の部屋で公安の人々も聞き耳を立てているだろう。状況を知りつつも放置しているのは、鬼狩警部の気遣い……といったところか。
ならば、少しでも公安が有利になるように誘導するのがベターだ。
「じゃあ、ココ……ゴブリンの支配している地域を解放し、そこに君の拠点を作ってもらう……ということはお願いできないかい?」
ココは頷いた。
「お主の期待に沿えるかはわからぬが、それで良ければ引き受けよう」
ココはアウグスからゴブリンエリアの説明を聞くと、やがて頷いて一角獣の泉へと歩いて行った。
その様子を見ていたカナは心配そうに言う。
「彼女1人で大丈夫なのでしょうか?」
「俺たちは、警部から場所を守るように命令を受けている。彼女だって情勢が不利と見たら戻って来てくれるでしょう」
「確かに、状況が読めないような方には見えませんね」
ココは、一角獣の泉を通り抜けると、森林地帯を越えて洞窟へと入り、洞窟を西方面に向かって進んでいき、やがてゴブリンが支配する渓谷へと到着した。
「お前たち……」
そう彼女が言うと、樹木や岩陰から次々と仔ギツネたちが姿を見せた。
数はおおよそ68匹。前の俺との戦いで減っているものの、それなりの戦力を温存しているようだ。
「これよりゴブリンたちの数を減らす……頼んだぞ」
仔ギツネたちは頷くと、次々と合体して中ギツネになった。
3頭の中ギツネは、次々と夜の闇の中を駆けだすと、そのうちの1頭が野営をしていたゴブリンの小隊へと襲い掛かった。
ゴブリン小隊は慌てて迎撃の体勢を取ろうとしたが、中ギツネの速度にはついていけないらしく、ボス格のホブゴブリンが真っ先に倒された。
ボスを倒された一般ゴブリンは逃げようとしたが、ここで中ギツネの強みが発揮された。
彼らは分裂すると、仔ギツネ22匹へと変わり、次々とゴブリンへと食いつくと、集団で攻撃して被害を出さずにゴブリン小隊を全滅させた。
仔ギツネたちはまだまだ暴れ足りないらしく、再び合体すると夜闇の中を睨んだ。
『ちっ……ソッチにハ先客か』
その直後に他の中ギツネも、別のゴブリン小隊に攻撃を仕掛けたようだ。
大きな体の状態でホブゴブリンを倒し、逃げ出すと分離し身軽になって追いかけ、集中砲火で倒していく。
本体であるココこと白の九十六は、ゴブリンたちの巣窟となっている渓谷を眺めていた。
あちこちからゴブリンたちの悲鳴が響き、中ギツネたちは先を争うようにゴブリンの小隊を蹴散らしていく。
ゴブリンが10個小隊ほど消えたとき、彼女は仮面の下で鋭い目をしていた。
「どうやら、小鬼どもに捕まって虐げられている女子供がいるようじゃな」
彼女は瞳が不気味に光った。
「人間は嫌いじゃが……ここまで救いを求められては無下にはできぬ。力を貸してやるとしようかの」
その美しい手が仮面を取ると、月明かりが切れ長く美しい瞳と、昔ながらの化粧を施された日本人的な顔をした少女が立っていた。
「ここのそじあまつむり……参る!」
彼女の身体が白い大ギツネに変化すると軽やかに大地を進んでいき、ゴブリンの巣穴へと突入した。
ゴブリンは、その姿を見ただけで目を潰し、体中から瘴気を浄化されて消え去っていく。ホブゴブリンたちは向かっては行くものの、一吠えで同じように触れることなく浄化された。
甲冑を着たゴブリンナイトは、浄化されることなく向かってきたが、それも爪の一薙ぎで砂のようにバラバラに蒸発して消し飛んだ。
「ん、今……一匹、強いのがいたが、今のが頭か? まあ、相手が悪かったの」
彼女は人間の姿へと戻ると、キツネの面を付け直して洞窟の奥へと進んだ。
そこには粗末な構造の牢獄があり、傷だらけになって縄で拘束された女性や少女たちが囚われていた。
「な、なに……!?」
「ひい、悪魔!」
「ご挨拶じゃの。別に取って食ったりはせぬよ」
そう言いながら彼女は、囚われていた女性たちを解放した。
「あ、あの……さっきまでいたゴブリンは?」
「あの痴れ者どもか? 今頃地獄の鬼たちに可愛がってもらっている所じゃろう」
ココは女性たちを見た。
「身寄りのある者は申し出るがよい。人里まで送ってやろう」
そう伝えたが、女性たちは誰しもが下を向いていた。
恐らく、ほとんどの人間が、旅の途中で捕まって酷い目に遭わされたか、故郷が破壊されてしまったかのどちらかなのだろう。
「なるほど……ならば、童に仕えてみるか? こう見えても古の神だったものじゃ。お前たちにも力を授けることができるぞ」
女性や少女の何人かが顔を上げた。
「我こそはと思うモノは名乗り出よ」
そのうちの1人が前に出ると、ココは指をはじいた。
女性の前には1匹の仔ギツネが現れた。その身体には十六という数字のような模様があり。じっと女性を見上げている。
「さあ、手を伸ばすがいい」
その全身が傷だらけ、泥だらけ、さらにボロを身につけているだけの少女は、手を差し出した。
すると、キツネは霊力を燃やすように蒸発していき、少女の身体の周りに煙となって降り注いでいく。
「……!」
少女の身体は一瞬にして清められたうえ、体中の傷もみるみる癒えていった。
それだけでなく、ボロが光って蒸発すると同時に、彼女は巫女服を身に纏っただけでなく、鎧や鉢がね、更に薙刀を持つ戦士へと変わっていく。
最後に仕上げと言わんばかりに、彼女の右の甲には16という文字が、左手には拾陸という文字が、更に頬にはヒゲが生え、耳や足など体の一部がキツネのモノへと変化していた。
「さあ、他にも望む者がいれば名乗り出よ」
他の少女たちはお互いを見合っていたが、別の少女が前へと歩み出た。
白の九十六(女性)
愛称:ココ
所属:比名吾郎
能力:九十六(★★★★★)
96の使いギツネたちを操る能力。彼らは個々が意志を持ち、状況によって20~25匹で合体したり、分離したまま偵察や戦いをする。やられても一定時間で復活するようだ。
能力:ニコイチ&サンコイチ(★★★)
身体が半壊してしまった使いギツネ同士を合体させて、戦力になるキツネを作り出す。融合で消滅したキツネは全損扱いになって1週間出ることができない。
能力:九十六(★★★★★)
力を望んだ少女や女性を巫女として登用する。力を与えるには制約があり、キツネ番号6、16、26など、6の番号のついた仔ギツネを憑依させなければならない。
なお、巫女として登用する際には仔ギツネとの相性もあるため、誰でも望めばなれるものでもない。特に最終番号の96は、誰も認めたことがないため否定の仔ギツネと言われている。
腕力 A ★★★★
霊力・魔法 S ★★★★★
行動速度 A ★★★★
耐久力 測定不能
技量・作戦 A ★★★★
索敵能力 A ★★★★
意志力 A ★★★★
経験 S ★★★★★
好きなモノ:稲穂の波、英雄、素朴な人々
嫌いなモノ:人間の負の面、火や煙
備考:ヒール、人間変身
一言:ココの最後の能力が判明。
6番台の仔ギツネには武器適性があり、薙刀、大弓以外にも札や杖など種類も多い。
基本的にここにいる仔ギツネどもはスケ……ゲフンゲフン。女性を巫女にすることが多いが、番号によっては男を神官に迎えるタイプもいる。




