36.魔導弓vs魔法拳銃
上空に現れた天使一行は、俺や一角獣アウグスを確認すると、次々と弓矢を構えて攻撃態勢をとった。
「やれ!」
4枚ばねのマティスが指示を出すと、こいつらは次々と弓矢を放ってきた。
一方でアウグスは、大地に働きかけて次々と岩壁を作り出し、俺が身を守るためのバリケードを作ってくれている。
天使たちの放った矢は次々と向かってくるが、岩壁に突き刺さるだけで俺やアウグスには1発も当たらなかった。
「敵は俺の拳銃を警戒しているみたいだ。不用意に近づいてこない」
『そのようだな』
このまま黙ってやり過ごそうと考えていると、敵リーダーであるマティスは、宝玉付きの黒い長弓を出してきた。あれが……噂のアーティファクトか!
その姿を見た俺の背筋には、氷でも入れられたかのような冷たさが全身を駆け巡った。あれをまともに受けたら……俺の10枚シールドでは防ぎきれない。
俺はアウグスの側面に立つと、首周りを両手で抱きしめて全ての防壁を彼の前へと展開した。彼も自分の正面に岩の防壁を次々と突き立てていき、更に俺のシールドに自分のシールドを重ねていく。
合わせて20枚のマジックシールドと、その外側を守る岩壁3枚を展開した。
そこを目掛けて、マティスは強烈な攻撃を撃ちおろしてきた。
最初の防壁は紙のように砕け、次の防壁も秒で消し飛び、3枚目の壁も根元を残して吹き飛ばされ、俺の1枚目とアウグスの1枚目が消し飛んだ。
それを皮切りに、次々と俺とアウグスのマジックシールドがヒビだらけになって崩れていく。
着弾から1.5秒後には、俺のシールド5枚とアウグスのシールド5枚が吹き飛ばされているが、まだ撃ちだされた矢の威力は衰えない。
それぞれの6枚目と7枚目がヒビだらけになっていく。
俺はこんなところで死んでたまるかと心中で叫んだ。その間にもそれぞれの8枚目が打ち崩されていく。俺の額やこめかみには血管が浮き出てきたが、その直後にそれぞれの9枚目がヒビだらけになって砕けた。
あと1枚ずつしかない!
最後のアウグスのマジックシールドがヒビだらけになって打ち崩された。矢にはまだまだ威力がある。それは俺の最後のマジックシールドにヒビを入れていく。
それが針を突き付けられたラップのように脆くも崩れていくと、俺は笑って拳銃を構えた。
――パァーーーン!!
撃ちだした弾は通常弾ではない。
徹甲弾は天使マティスの撃ちだした矢とぶつかり合い、俺の弾丸は打ち砕かれたが、矢の進行方向もわずかにそれて、俺たちの背後へと飛んで行き、樹木数本をなぎ倒していく。
これで喜んでいてはいけない。俺はすぐにマティスを睨んだ。
こんな奴を逃せば、次にアウトレンジから仲間を即死させるような技を再び繰り出される。俺は脳内で50メートル以上上空にいる奴を撃ち落とせる弾を求めた。
すると、俺の魔導拳銃の形状が変わりはじめた。
銃口や、シリンダーの形状も最適化されていく。俺はだいぶ大きくなったハンドガンを構えると、マティスに向かって引き金を引いた。
マティスはとっさに弓を盾にして、俺の弾丸の軌道を逸らしたようだ。
弓は宝玉が壊れると真っ二つに千切れていき、神々しいほどの霊力も溶けるように蒸発していく。マティス自身もバランスを崩して墜落しそうになっていたが、それは近くにいた天使族の部下たちが支えて何とか踏ん張っていた。
その様子を見ていた、一角獣アウグスも不思議そうに俺を見た。
『今の技……一体、なにを撃ちだしたのだ!?』
「狙撃用歩兵銃の弾頭を、マジックガンから撃ちだしたんだ」
それ以上の説明ははぶいたが、実際の拳銃の中にもライフル弾を発射できるものはあるそうだから、拳銃だってバカにはできない。
攻撃を受けたマティスは、悔しそうに俺を睨んでいたが、やがて自分の持っていた弓の弦が真っ二つになっていることに気が付いたらしく、青ざめた表情をしていた。
「ゆ、許さんぞ……サル風情がっ!」
マティスは吠え面をかいていたが、俺は無視してアウグスと話を続けていた。
『で、その狙撃用歩兵銃というのは?』
「ああ、あとで画像でも見るか? 特徴的な形状をしてて興味深いぞ」
『ほう……』
4枚羽のマティスは不機嫌そうに去って行ったが、俺は相手にしなかった。
こういう素直な相手をほどほどに挑発すれば、また新たな武器を持って攻めかかって来る可能性がある。下手に絡め手を使われるよりは、よほどやりやすいというものだ。
カウス・メディア
4枚羽の天使、マティスが使ってきたアーティファクト。聖ラグアデス王国の国宝のひとつ。
初代騎士団長の魂が封じられており、遠距離から強烈な一撃を見舞うことができるが、もちろん制約もある。
相手が王国にとって重大な敵であるとカウス・メディアが判断する。
使用者が4枚ばね以上の天使である。
天候が晴れている。
攻撃前5秒と、攻撃後5秒が無防備になる。
使用者の寿命を最低でも1年、最大で10年分が減少する。
これを壊してしまったマティス……




