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33.元、神の眷属との戦い

 今までの言い合いでわかったことがある。

 目の前の白い大ギツネは、本当に人間に呆れている。それだけでなく怒っている。許せないものとして認識している。

 だけど、まだ、完全に切り捨てることができないんだ。


 そのことをはっきりと意識して欲しい。そう思いながら言葉をかけた。

「人間が憎いのなら……失敗作だと思うのなら、どうして俺を家来にしたい!? 言っていることがおかしいだろう!」

 大ギツネは、目尻に血管を浮き上がらせた。

『童は……お前に、身の安全と、財力と、権力……この世の全てを持たせ……そして、人間の本質を確かめたいのじゃ』

 牙を光らせた。

『ここがまだきれいな社だったとき……誰しもが望んでいたことじゃ。それを実現してお前がどうなっていくか見たい!』

 何だか、安心した俺は笑っていた。

『何がおかしい!?』


 そう言いながら、大ギツネは風の刃を放ってきた。

 俺は銃弾を放つと、その弾頭は風の刃とぶつかり合ってお互いの威力を相殺した。

「やっぱり理論が破綻してるよ。お前は心の底では人間が大好きなんだ!」


 本当は破綻なんて言い過ぎだれど、人間が嫌いなのなら、俺に財力や権力なんて与える必要なんてない。人間はゴミ……そう言って捨て置けば済むことだ。

 しっかりと大ギツネ……いや、元・神の眷属を見た。

「来いよ神様……俺が人間の強さを思い出させてやる!」


 こいつは神の眷属だ。どこの馬の骨かもわからない三十路男がどうこうできる存在ではないのはわかっている。

 だけど、意外にも人間臭いんだ。だから言い合いなら引かずに戦える。心はそう簡単には折られないと感じた。


 大ギツネは、再び爪を振りかざして風の刃を放ってきた。

 俺は走ってその攻撃を交わすと、後ろに生えていた大木が真っ二つに斜め切りにされた。その切っ先はとても鋭く、まるで細胞を分離させたかのように鮮やかだった。

 よく、銃弾一発で無効化できたな俺……。


 俺は地面に手を付いて前回転すると、低く銃を構えて大ギツネに向かって3連射した。

――パァーーーン、パァーーーン、パァーーーン!


 1発は、手下の中ギツネに命中して、その身体は25あまりの仔狐へと分裂した。

 2発は本体に命中していたが、効果はあっただろうか!?


 白い大ギツネは、額から血を流し口元からも血を流していたが、微笑を浮かべている。

『効くではないか……だが、この状況をどう打開するかのぅ!』


 その直後に俺はハッとした。

 なんと白い大ギツネの体の下から、無数の仔ギツネが出てくる。数は……ざっと50。


 俺は更に1発の銃弾を白い大ギツネの胸元に叩きこむと、銃を握りしめたまま走った。

 無数の仔ギツネたちが俺を追ってくる。数は今……81対1だ。数でも質でも分は向こうにある。だけど……俺はここで膝を屈したりしない!


 その直後に、空間に亀裂が走る感覚を察した。

 この気配はカナエル!? もしや……この場所を突き止めて、結界の外から攻撃を仕掛けているのだろうか。

 白い大ギツネを見ると、不機嫌そうな顔をしながら亀裂の走った場所を睨んでいた。

『おのれ……またしても邪魔をするかトリ女! 忌々しい奴め!!』


 そう言うとなんと大ギツネは、結界を自分から開くという行動をとった。

 勢い余ったカナはよろけながら中へと歩みを進めてくると、目を紫色に光らせた大ギツネが牙を剥きだしにして襲い掛かっている。

 やばい、こんな行動をとられたら、さすがのカナでも……!


 彼女はハッとすると、背中の両翼を実体化したまま空中へと打ち上げた。

 大ギツネは、その翼の方向に飛び上がっていき、噛みついていた。


 その直後に地上にいたカナが、大弓を出して矢を素早く番えていた。

 近くにいた仔ギツネたちはブロックしようと飛びかかっていく。カナはそれらの動きを無視したまま、多くの霊力を込めた一発を放った。


 周囲には突風が巻き起こり、木々が軋みながら小枝などを折っていく。

 矢はまっすぐに大ギツネの喉元を貫き、血しぶきを雨のように降らせてきた。だけど、喜んでいる場合ではない。無数の仔ギツネたちが、親の仇を取ろうとカナに飛びかかっていく。


 俺は全速力で走ると、仔ギツネどもを振り払いながらカナを抱きかかえて走った。

 仔ギツネどもは追ってきたが、それでも本体がいなくなった影響らしく、少しずつ動きが鈍っていく。俺は社の後ろ側に身を隠すと、カナをゆっくりと座らせた。

「大丈夫か!? 足とか……だいぶ噛まれただろう?」


 そう言いながら彼女のズボンを上げてみると、あれ……? 傷が1つも付いてなかった。

 どういうことだろう。あそこまで仔ギツネたちに密集された攻撃を受ければ、いくらカナエルだってマジックシールドが崩されるだろうし、傷だって負うはずだ。


 それに、もっとおかしいことが……

 そこまで考えを巡らせていた時、彼女は微笑んだ。

「大丈夫。傷はつきませんよ」

「え……?」


 その直後に無数の視線を感じた。

 仔ギツネたちは、ゆっくりとした足並みで歩いてくると、俺を取り囲みながら、何匹かがカナの側に寄って行って甘えている。

 この異空間が消滅していない理由。まだ仔ギツネたちが動いている理由。彼女の足が全く傷ついていない理由。それらは全て、最悪の方向に話が進んだことを意味していた。


「ま、まさか……!?」

 その先の言葉を遮るように、カナは妖しい笑みを浮かべた。

「その通り……そのまさかじゃ!」

合体ギツネ

所属:白い大ギツネ

能力:分離(グレード★★★)

仲間の仔ギツネと合体したり分離したりする。脳を司る部分にいる仔ギツネは、他の仔ギツネに比べてステータスが高い傾向がある。



腕力    B   ★★★

霊力・魔法 B   ★★★

行動速度  C~B ★★☆

耐久力   B   ★★★

技量・作戦 C~B ★★☆

索敵能力  B~A ★★★☆

意志力   B~A ★★★☆

経験    B~A ★★★☆  



好きなモノ:5円玉、果実(個体による)、鶏肉、小動物の肉、子供(個体による)

嫌いなモノ:火や煙、怖いモノ


体重:300キログラム~400キログラム


一言:仔ギツネたちが合体した、中ギツネ。

彼らの強さの肝となるのは、頭を担当する仔ギツネである。これがダメージを受けて気絶したり、自らの意志で分離すると、元のバラバラの状態へと戻る。


 仔ギツネの中には悪知恵の働く者がおり、前のドラッグストアの戦いでは、一旦は公安に捕まって取り調べを受けている途中で集団脱走し、担当した刑事に始末書を書かせるという屈辱を味合わせている。

 なお、撃退した比名に謝礼が渡された時点では、脱走していなかったとみられる。

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