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29.公安6課の鬼狩隊

 鬼狩警部は、すぐにカナエルに敵戦力などを確認していた。

 敵勢力の名は聖ラグアデス王国。唯一神の存在を絶対とし、その血を受け継いだ王家こそ神として、人々を支配する王国なのだという。


「私の住んでいた国は、ラグアデスによって滅ぼされました」

 その言葉を聞いていた一角獣アウグスは視線を上げた。

『奥方殿のオーラは、普通の有翼人とは違う気がする。亡国の令嬢……それも地位の高い者なのではないか?』

 彼女は驚いた様子でアウグスを眺めていた。

「そうですが……国がなくなった今となっては、地位など何の価値もありません」

『我にはそうは思えん。もし……責任のある立場なら、ダンジョンを閉じるより大切なことがあるのではないか?』


 カナエルは少し視線を下げてから言った。

「正直に言えば、私は王族の血を引いています」

 その言葉は、俺だけでなく鬼狩警部も驚かせるものだった。

 アニメやゲームなどで、連れの女の子が実は……というケースはよくあるが、実際にそんなことは滅多になく、公安さえ驚くような案件だということがわかる。

「…………」

 ひとつだけ、気になることがあるので後で聞いてみるとしよう。


 カナエルはそこまで言うと視線を上げた。

「しかし、世間には公表されませんでした。父は王ですが……母親は侍女だったからです」

 なるほど。隠し子だったからこそ、彼女は国が滅びても生き延びていると考えられる。

 頷くと、彼女は話を続けた。

「エリア・フォーティ―フォーの言った通り、我々とラグアデス王国は魔導兵器を用いて多くの町と人々の命を奪いました。今はまだダンジョンの先に広がる、この世界のことを詳しく知らないと思いますが……」


 そこまで言うと、彼女はしっかりと俺や鬼狩警部を見た。

「知ったら、ラグアデス王国がどう判断するかわかりません。似たような戦争を引き起こす前に……このダンジョンの入り口……できればラグアデス王国側の出入り口を閉じる必要があります」


 俺は彼女の説明を聞いて納得した。

 このダンジョンは、巨大なトンネルのようなものなのだろう。だから、日本側の出入り口とラグアデス側の出入り口が存在するということか。

「…………」

 日本側の出入り口を閉じるというのは、言うなれば最後の手段だ。この出入り口をこじ開ければ、すぐに日本側の……このアパートの目の前に敵が攻め寄せてくることになる。

 だけど、ラグアデス側の出入り口を封鎖することができれば、俺たちはダンジョンという領土……つまり緩衝地帯をつくることができる。


「ひとつ質問していいか……カナエル」

「なんでしょう?」

「その魔導兵器とやら……ダンジョンを突破して、いきなりこの国を攻撃することはできるか?」

 彼女はしっかりと答えた。

「原理的にも物理的にも不可能です。魔導兵器は土地のマナを熟知し……理にそって作るものです」

 カナエルは右手の人差し指を立てた。

「まずは、ラグアデス側のマナの理」

 彼女は中指を立てた。

「次に、ダンジョン内のマナの理」

 最後に薬指を立てた。

「3番目に、ニホン側のマナの理……その全ての理を熟知していたとしても、土地に侵入するわずかな間に飛び道具の性質を瞬間的に変え、その土地のマナに適合させる……そんなことをする技術はどちらの国にもありません」


 鬼狩警部は、険しい顔をした。

「裏を返せば、日本側に橋頭保を作られたら……核爆弾に匹敵する兵器を搬入され、我々に宣戦布告……ということも起きり得るわけだね」

 カナエルは険しい顔をした。

「ニホン側のマナの解析を行えば、それも可能になるでしょう」


 一角獣アウグスは、壁を眺めながら言った。

『いつまでも、壁の向こう側で聞き耳を立てていないで入ってきたらいかがか?』

「鍵も開いていませんから、どうぞ」

 そう伝えると、複数の足音が聞こえてきて、やがて俺のアパートのドアを開く音が聞こえてきた。

 入ってきたのは、ドラゴン刑事長谷川。レーダー刑事倉科。聖騎士刑事、大工刑事、クノイチ刑事、占い師風の女性刑事もいる。


「大勢で押しかけてごめん、とても狭くなった」

 レーダー刑事の革ジャン倉科が言うと、俺は苦笑しながらも頷いた。

「いま、テーブルを退かします」


 鬼狩警部は言った。

「とにかくお前たち……話は聞いていたな?」

「はい!」

 一同が歯切れよく返事をすると、警部は言った。

「最優先事項は人質の救出。次点で、このダンジョンを隅々まで確保することだ……このヤマは、日本国の存亡がかかっている。各自、その点を心に留め置いて任務にあたるように!」

「はい!」


 彼らはそう返事をすると、俺の部屋から次々と立ち去っていった。どうやら、各自が準備を進めるようだ。

 鬼狩警部は、俺やカナエル、更には一角獣アウグスを見た。

「この作戦……我が部隊の3分の2の人員を割く。君たちは日本側の守りの要だ……今のうちに十分に体を休めてくれ」

「わかりました」

【現在、判明しているダンジョンのエリア】

 洞窟エリア

 比名がカナエルと共に初めて入ったエリアであり、公安の鬼狩ともここを歩き回った。

 ウシと呼ばれるエリアマスターがおり、それは隣エリアで比名が倒すも、今度はゴブリンたちが自らの領土としようと侵攻してきた場所でもある。

 どこか隣接するエリアにゴブリンの巣窟も存在すると思われる。


 密林エリア

 比名が逃亡先でウシと遭遇し、激戦を繰り広げた場所。

 様々な野生動物が闊歩しているが、エリアマスターとはまだ遭遇していない。

 ちなみに、一角獣の入り江とも隣接している。


 一角獣の泉(比名の領土:統治者グリーンアウグス)

 天使マティスが、一角獣グリーンアウグスと戦いっていた場所。その戦いで空間に亀裂が走り、比名のアパートに通じたと思われる。

 位置的には洞窟エリアから離れているが、比名のアパート部屋からショートカットできる数少ないダンジョン内の領土。

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