27.決着
俺が一角獣の火炎放射攻撃を受け止めている間に、カナエルは一角獣の背後を取り、強力な弓技を至近距離から放とうとしていた。
しかし、一角獣は脚元に恐ろしい量のエネルギーを圧縮しており、その大地系魔法が上空に向かって解き放たれた。
地響きと共に浮き上がった尖った岩柱は、次々とカナエルに向けて飛び出していくが、カナエルはアクロバティックな動きで回避、渾身の霊力の籠った一撃を一角獣に向かって撃ちおろした。
放たれた矢は、一角獣のマジックシールドとぶつかり合うと、一角獣は角を光らせた。
自分自身をドーム状に守っていたシールドを、俺がやったように一か所に集めてカナエルの矢をはじき返そうとしているのだ。
シールドが1枚、また1枚と粉々に吹き飛んでいく。
彼女は命がけで突っ込んできて、活路を開こうとしてくれている。
俺だけ、俺だけ安全な場所で自分の身を守っていては駄目だ。地獄でもなんでも飛び込んで、活路を探さないと……この一角獣には到底勝てない!
やけどを覚悟でマジックシールドを解くと、体の一部が焼けながらも、衣服が燃えながらも一角獣を睨んだ。
「リロードぉ!」
俺は拳銃を一角獣に向けた。使うのは……あれしかない!
銃口をしっかりと向け、撃ち放った弾を見た一角獣は目を大きく開くと、なんと自分の鎧を残らず消して対抗してきた。
――どうして、この場でノーガード戦法を……!?
一角獣は歯を食いしばりながら、俺の弾丸を腰で受けた。目尻に血管を浮き上がらせ、歯を食いしばり、体中に冷や汗を流しながらも痛みで我を忘れないように、気合を入れているように見える。
直後に俺はハッとした。
このウマ……俺の弾丸の貫通力を知って、体内に弾丸が残らないように、あえてノーガード戦法を取ったんだ。
そしてその弾は、コイツの狙い通りにカナエルの膝に着弾し、彼女は悲鳴を上げていた。
そうか、地獄に飛び込んだのは俺だけではなかったということなんだ。
俺が全力で血路を開こうとするように、コイツもたったひとつの自分の居場所を、必死に……死に物狂いで守ろうとしている!
だけど、違うんだよ! 俺はお前の居場所を奪うつもりなんてない!!
一角獣は、駆け抜けた後で方向転換し、カナエルの頭に前脚を乗せようとしている。人質にするつもりなんだ。
そうはさせるか。俺は一気に走ってカナエルを援護しようとした。
一角獣が先か。それとも俺が先か。
一角獣が体の向きをこちらに向けようとしている。だから、俺もカナエルの側に立った。
そして、銃口を一角獣に向けた。
もう、弾はない……リロードをする時間もない。ついでに体力もない。全身は火傷で痛む。体も熱い。もはや満身創痍だ。だけど、相手だって……相手だって弾丸で体を貫かれている。
一角獣は、角を赤く光らせたまま俺を睨んだ。
『降参しろ……我の……』
「お前こそ……俺の仲間になれ!」
そう言いながら俺は、右手でこっちに来いと合図した。
俺たちは最初から戦う必要はない。お互いに相手が強いことを理解しただろう。最低でも俺は……お前のこと、頼りになるやつだと思っている。
「…………」
「…………」
一角獣は耳を絞った様子で、俺を睨む。
俺もまた、痛みを堪えながら銃を下ろす、そして来いと再び合図する。
「…………」
一角獣も、後ろ脚を動かした。
何か術を発動させるつもりだろうか。いや、銃弾を受けた場所の出血が止まっていない。ユニコーンならヒーリングで傷口をまずは塞ぐはずだ。
こいつは、間違いなく追い詰められている!
俺はなるべく、息が上がっていることを隠すために深く呼吸をした。まだ、皮膚が生きている所から冷や汗が流れ出ている。体中が痛い。痛みで……頭がおかしくなりそうだ!
だけど、俺は……!
その直後に、小さな手が俺の足に触れた。
カナエルが俺に、治癒術をかけている。痛みが引いていく……少しずつ、活力がみなぎって来る。
これを言うのは一か八か……賭けだ。
だけど、やれと俺の勘は言っている!
「リロード!」
俺の左手の拳銃に2発の弾が補充されると、一角獣はビクッとした様子で耳を動かした。
「見ろよ一角獣……お前がまだ、俺の強さに不満があるのなら、何もないところに発砲してやるぜ……」
思わず笑った。
「あと……2発だけだけどな」
一角獣は、呆れたような笑っているような、複雑な表情をしていた。
『お前を……真の馬鹿者として認めよう』
彼もまた笑った。
『私を……使いこなして見せよ』
比名吾郎(男性)
所属:公安6課非常勤職員・裏庭ダンジョンのエリアマスター
部下:カナエル、一角獣
能力:ウィザードガン(グレード★★★★)
回転式の魔導拳銃を出す能力。装弾数は6発。任意のタイミングでリロードを行えるが、装弾数に比例した体力や精神力を消耗する。通常弾頭で有効射程距離は50メートルほど。
また、特殊な弾頭を作り出す力と、弾頭を解体することで体力を少しだけ回復する力がある。
能力:天啓(グレード不明)
自分の管理下に入った者の能力を拡張する力、実戦経験時のレベルアップ速度のブースト、危機感知能力があるようだが、仔細は不明。
腕力 C ★★
霊力・魔法 A ★★★★
行動速度 A ★★★★
耐久力 A ★★★★
技量・作戦 A ★★★★
索敵能力 B ★★★
意志力 A ★★★★
経験 B ★★★
好きなモノ:カナエル、半額商品・半額セール
嫌いなモノ:現実(理由はお察しください……)
備考:対空攻撃、アーマーピアシング弾(魔導貫徹弾)、キャストブレッド弾(鋳造弾)、多層マジックシールド
一言:一角獣との戦いを通して、更に成長したため能力を再編集。
彼を従えたことにより、裏庭ダンジョンに橋頭保を獲得したことになる。先ほど倒した一角獣はダンジョンマスターに引けを取らない存在なので、魔王や竜王はもちろん、神族さえ三顧の礼を尽くしてでも欲しがる逸材である。




