25.男天使との罵声合戦
カナエルは一角獣を睨んだ。
「どこのどちら様か、存じ上げませんが……私を抜きに話を進めないでください」
そう言われると、黒い一角獣は意外そうな顔をしながらカナエルを見ていた。
『貴殿は……そちら側の人間ではないのか?』
カナエルは目を細めた。
「私の課された使命は、このダンジョンを塞ぐことです。同じ使命を持つゴロー様とは一心同体。ゆえに、ゴロー様のご判断に従います」
彼女の声が低くなった。
「それに彼らは……敵対勢力の天使です」
彼女がそう言うと、相手方の天使は目を剥いて怒りを露にした。
「貴様……さては、堕天使どもの生き残りか! 先から言っていることがおかしいと思っていたら……」
カナエルは男を無視すると、俺を見た。
「さあ、ゴロー様……ご決断ください!」
俺は迷わずに天使男を見た。
「そこの人、俺はなるべくことを荒立てたくない。なぜ争っているのか……その辺りから話を聞かせて貰えると助かるんだが?」
そう伝えると、天使風の男は答えた。
「そこの堕天使も言っただろう。私もまたエリアマスターどもを葬り、この歪んだ空間を正そうとしている。お前たちと目的は一致しているはずだが?」
「確かに、ダンジョンを塞ぐことは俺たちの目的だ。その理由はモンスターが紛れ込んだ人間を襲うからだ……このお馬さんは、むやみやたらに人を襲うとは思えない」
そう伝えると、天使風の男は失笑した。
「バカげたことを……この空間そのものが悪なのだよ。そこに存在する魔物を全て制さなければ……ダンジョンを無力化したとはいえん!」
コイツは弓矢を構えた。
「堕天使などと一緒にいるだけあってお前も魔物だな……人の形をした悪魔め!」
「人を他人を罵倒するとき、自分のコンプレックスをぶつける!」
そう言い返すと、一角獣とカナエルはよくぞ言ったといいたそうに頷いた。
「こ……この、毛無しサル風情が!」
男が弓矢を構えると、俺も銃口を男に向けた。
「ケナシさるランドへようこそ、偉大なる天使様!」
天使風の男が大弓から矢を放つと、俺は魔導拳銃を放った。
弾丸は大弓の矢を破壊して、そのまま男に向かっていく。
「ぐっ……」
男はマジックシールドで俺の弾丸を受け止めた。
周囲にヒビが走ったとはいえ、防ぎきるとは……伊達に4枚羽の天使はやっていないようだ。
俺は更にもう一発の弾丸を発射した。
天使風の男は回避行動をしながら腕を出してガードしたが、マジックシールドの亀裂は一気に広がり、3発目を放つとマジックシールドは粉々に崩れ落ち、更に男の頬を掠めた。
「ぐ、コイツ左利きか……やりづらいし、なんだこの凶悪な威力は!?」
「まだ暴れ足りないか?」
天使風の男は、悔しそうに俺を睨みながら言った。
「おい、堕天使……コイツの名前は何という?」
「俺に聞け馬鹿!」
俺はそう言いながら男を睨むと、男は咳払いをした。
「くっ……お前の名は?」
「ゴロー、ヒミョウゴローだ」
「ヒミョウ家で5番目に生まれた者……か。我が名は4枚翼のマティス。首を洗って待っていろ」
そう言い残すと、4枚翼のマティスは飛び去っていった。
カナエルはマティスの後ろ姿を睨みながら言った。
「まさか、こんなに早く連中が現れるなんて思いませんでした」
「4枚も翼があるから強いということはわかるが……どのくらいの地位の奴なんだ?」
カナエルは視線を上げた。
「そうですね……公安警察という部署で言えば、ドラゴン刑事長谷川さんや、聖騎士刑事さんのようなポジションの方でしょう」
つまり向こうの天使課の課長代理という立場か……。成り行きで戦いになったが、まかり間違って命を奪ったりしなくてよかった。確実にトラブルになるもんな……。
『勇者ゴローよ』
一角獣に目を向けると、彼はじっと俺を眺めながら言った。
『ヤツが言ったことも一部は事実だ』
「というと……?」
そう聞き返すと、一角獣は険しい顔をした。
『我を野放しにしている限り……この空間を塞ぐことなど夢のまた夢……』
その全身から霊力があふれ出した。
『我と勝負せよ……我が勝ったら、二度とこの世界に足を踏み入れないと誓ってもらう!』
「待て、俺はお前と争う理由は……」
『ゲートを塞ぐというのなら同じだ。我は自分の居場所を守らなければならない』
視線が厳しくなった。
『エリアマスターだからな』
マティス(男性)
所属:聖ラグアデス王国
能力:4枚の翼(グレード★★★★)
2枚ばねに比べて飛行が安定し決して墜落しないという特技を持つ。霊力などのブーストもありそうだが、翼が体から離れることがないので判別は不可能。
腕力 B ★★★
霊力・魔法 A ★★★★
行動速度 A ★★★★
耐久力 A ★★★★
技量・作戦 B ★★★
索敵能力 B ★★★
意志力 A ★★★★
経験 A ★★★★
好きなモノ:単独行動、翼のブラッシング
嫌いなモノ:雨、自分の足(すね毛が濃いことを気にしている)
備考:飛行、空中戦闘、対空攻撃
一言:実力的には鬼狩警部と互角。制空権は持つが単純な火力は警部の方に分があるという状況である。
実は年齢も体格も、カナエルよりも上手なのだが、彼女の方が強い設定となっているのは、主人公の存在が大きく関係しているようだ。
ちなみにすね毛の件は禁句である。




