24.家の中に出現したダンジョン
俺はブラシを手に取って風呂の掃除をしていた。
ずぼらな俺は、よく風呂掃除をサボるので、水垢が風呂の隅の方にたまり始めている。これを無視していると本格的なカビになるし、足で踏んだ時にぬめっとして嫌な気分になるので、こうして処理しているわけだ。
無事に掃除も終わったので、風呂場から出ようとすると、カナが室内にいるにも関わらずカナエルになっていた。なぜ、臨戦態勢になっているんだろう。
「どうした……?」
「見てください」
彼女の視線の先を追うと、なんと部屋の中に歪んだ空間が出現していた。
「な……まさか、こんなところにまで!?」
しかも、その空間の中のマナが大きく乱れている。まるで、何かと何かが激しく争っているようだ。
俺は迷わずに魔導拳銃を出すと、カナエルと共にその空間に踏み込んだ。
空間の先は泉のある森だった。
そこでは天使姿の男と、真っ黒な一角獣が戦っている。
天使姿の男は金髪で碧眼。背中には翼が4枚あり、長弓を持ち、腰には短剣も刺している。顔も見えたが男とも女ともいえない姿をしていた。
一方、真っ黒な一角獣は、鎧のようなものを身につけ角や瞳は緑色だ。こっちの性別は確実にオスと言える。
「これはもしや……エリアマスター同士の戦い……?」
そうつぶやくと、カナエルも頷いた。
「そのようですね。見かけに騙されてはいけません」
どちらの味方をするべきか、判断に困る事態だ。
俺たちは物陰から様子を伺っていると、テレパシーが聞こえてきた。
【そこの青年。我は森を守る者……この空間の平穏を守るために助力を求める!】
どうやらユニコーンから救援要請が来たようだ。
とはいっても、どうして戦いになったのかがわからない以上は、下手に加担すべきではない。俺はすぐに質問を返した。
【いや、その前に……どうして襲われてるんだ。そいつ……天使っぽいが?】
【奴はエンジェルではない。いたずらに生き物の命を奪う……忌みべき存在!】
そうなのかと思いながらカナエルを見ると、彼女はアゴに手を当てて考えを巡らせていた。
「……私には、あの一角獣がモンスターには見えません」
カナエルがそうつぶやくと、天使は目を剥いてカナエルを睨んだ。
恐らくだが、天使の方がカナエルに助力を求めたのだろう。2人が同時に双方から援軍を求められるとは……これは、どちらも余裕はないと見える。
どうするべきか。そう思っていたら再びユニコーンがテレパシーを送ってきた。
【見たところ、貴様は危険な宗教思想に染まっていない。ならば冷静に考えろ……なぜ、空間が歪んだか考えたことはあるか? 危険な思想に染まった人間どもが魔導実験や化学実験を繰り返し行った結果だ!】
考えても見れば、今の俺たちの世界は科学技術が栄えた文明圏だ。
カナエルの地域は魔導技術が発展しすぎた文明圏と仮定する。
その2つの地域が、片方が魔導技術で膨大なエネルギーを出し、もう片方が科学……例えば核実験などで膨大なエネルギーを出せば……2つの地域が合体するということも起こらないとは限らない。
【なあ、一角獣さん……その危険思想に染まった人間が、魔導実験を行ったのは何年前だ?】
【……およそ80年前から、30年前に魔導実験禁止条約が締結されるまでだ】
俺はスマートフォンを出すと、受信状態こそ悪かったがアンテナは生きていた。
核実験が行われた時期を見ると、こちらも約80年前から30年前までに頻発している。つまり、過去に放たれた膨大なエネルギーが時間をかけて、ゲートのようなものを30年かけてつなげようとしている。そういう仮定が成り立ってしまう。
【……なあ、一角獣さん?】
【なんだ?】
【いまだに、小国や独立勢力が隠れて魔導実験をやっていたりするか?】
その一角獣は頷いた。
【する。ここ10年の間だけでも3度ほどな】
テレパシーが伝わると同時に、一角獣の声をかき消すように男天使が叫んだ。
「そこの女、一角獣を倒せ……そいつは危険だ、堕天使的な思想を持っている!!」
カナエルは一角獣を睨んだ。
カナエル(女性)
所属:比名吾郎
能力:エンジェルオーラ(グレード★★★★☆)
生きとし生けるものに活力を与え、アンデッドや魔法生物の能力を低下させたうえに、徐々にHPとMPを減少させる。(腕力+★)(霊力+★☆)(行動速度+★)(耐久力+★)(技量作戦+★)
腕力 C ★★☆
霊力・魔法 A ★★★★☆
行動速度 B ★★★☆
耐久力 C ★★☆
技量・作戦 A ★★★★
索敵能力 B ★★★☆
意志力 A ★★★★
経験 A ★★★★
好きなモノ:比名吾郎、甘いもの
嫌いなモノ:比名吾郎に言い寄る女性
備考:飛行、ヒール、空中戦闘、対空攻撃
一言:エリア・フォーティ―フォーの能力によって、能力の一部を奪われた状態となっているカナエル。
白☆は本来の彼女の強さを表現している。
今、一角獣を睨んでいるが、果たして彼女はどのような決断をするのだろう?




