23.戦果報告
けっきょく集まったゴブリンの耳は、ホブゴブリン12。ゴブリン143匹分だった。
それらをクノイチの公安刑事は、袋にまとめるとバイクに跨った。
「では、これらは本部に届けてきます」
「疲れてるところすまんな。頼んだぞ!」
クノイチ公安刑事がバイクで走り去ると、公安刑事たちは俺の隣部屋へと入りながら言った。
「今回のはヤバかったな。たった5人で……こんなに戦ったの初めてだ」
「ああ、比名君やカナちゃんが助太刀してくれなければ、今頃この辺りはゴブリンに襲われていただろう。礼を言わせてくれ!」
俺はすぐに答えた。
「我々は自分の家を守ろうとしただけです。お役に立てたでしょうか?」
そう聞き返すと、すぐに大工風の公安刑事が答えた。
「当然だ。お嬢ちゃんの大出力魔法がなければ、今頃は数の暴力にやられてただろう」
「それに、君のチート能力だよ! 体力バカのホブゴブリンをシールドごと1発で沈めるんだから、火力がとんでもない!!」
「ああ、ホブゴブリンを1発抜きできるのなんて、うちの課じゃ鬼狩警部くらいじゃないか?」
「長谷川巡査部長でも無理だろうな……さすがに……」
今はジーンズ姿だが、騎士になっていた刑事が聞いてきた。
「あれってやっぱり、特殊な弾頭を使ったのかい?」
「いいえ。通常弾頭です。特殊弾頭は使うと疲れてしまうので……」
答えを聞いた2人は、目を丸々と開いてお互いを見合った。
「き、聞いたか……完全にエースじゃねーか」
「いや、エースは女の子の方で、彼は切り札とかゲームチェンジャーと言うべきだろう」
それから5分ほどで、鬼狩警部は2人の部下を連れてやってきた。
「話は聞かせてもらった。人員を増やすから……今日はゆっくりと休んで欲しい」
応援が来たことで俺たちは安心した。彼らが見張ってくれると言うので、これで朝までぐっすりと眠ることもできるだろう。
部屋に戻ると、俺は言った。
「カナ、先にシャワーを浴びてくれ。お前の方が疲れてるだろうからな」
「わかりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」
彼女は平服のままシャワールームへと入ると、指をはじいてからシャワーを使いはじめた。指パッチンで脱衣できるのだから、何とも便利な能力を持っていると思う。
こうして俺とカナはシャワーを済ませて眠ったわけだが、再び起きたとき隣で眠っていたはずのカナがいなくなっていた。
トイレにでも行ったのだろうかと思いながら視線を動かすと、なんとカナは寝た場所と反対側で寝息を立てていた。
「……マジ?」
どうやらコイツは寝ている間に俺を乗り越えて、布団の反対側へと行っていたようだ。寝相の悪さもここまでくれば大したものである。
もうひと眠りしようかと目を瞑ると、今度はその手が伸びて俺の顔を掴んでくる。一体コイツはどんな夢を見ているというんだ?
とりあえず起き上がると、カナエルも起きたらしく目をゆっくりと開けた。
「おはようございます……」
本人はブサイクな顔をしているというのだろうが、それでも普通の女性よりも美人なのだから彼女の容姿はかなりのものだろう。しかし、この寝相の悪さはどうにかならないのだろうか?
どうにか起きて着替えや洗顔を済ませると、玄関のインターホンが鳴った。
「ゴロー様。警部殿がいらっしゃいましたよ」
どうやらカナエルも、玄関の先に誰がいるのかがわかるようだ。
「わかった。すぐに出る」
鬼狩警部を招き入れると、彼は例によって資料を持っていた。
「昨日は応援出撃に応じてくれてありがとう。今朝がた査定が出たよ」
彼はテーブルに資料を出して説明してくれた。
どうやらゴブリンは1匹あたり3千円。ホブゴブリンは1匹当たり3万円の計算になったようだ。ホブゴブリンは12匹。ゴブリンは143匹を撃退したので、チームで789000円を稼ぎ出したこととなっている。
「今回は単純に5等分して、税金を引いた額を振り込むことになるよ」
俺たちには157800円ずつのお金が振り込まれたようだ。というかカナエルもいつの間にか銀行口座を作っていたんだな。
すでに俺の口座には凄い金額が入っているが、コイツの口座もとんでもないことになりそうだ。
鬼狩警部は言った。
「これで、ゴブリンの数もだいぶ減っただろうから……これから本格的にダンジョンに乗り込んで行ってボスを倒しに行こうと思う」
その言葉に俺も頷いた。
「賛成です。この機会を逃さず……」
その直後に、インターホンの音が鳴り響いた。
どうやらドアの向こう側には、鬼狩警部の部下である長谷川巡査部長が来ているようだ。
「ちょっと出てきます」
ドアを開けると、長谷川は少し焦った様子だった。
「比名さん、警部はいらっしゃいますか?」
「ええ、打ち合わせが終わったところなので……どうぞ」
鬼狩は「どうしたのかな?」と質問すると、長谷川は鬼狩の耳元でささやいた。
「……わかった。すぐに行こう」
実は会話内容は俺にも聞こえており、橋の下に新たなダンジョンが出現したのだという。
しかも、長谷川巡査部長が慌てているのは、ぐうぜんそのことに気が付いた怖いもの知らずな学生たちが、冒険者気取りで中に入ったという目撃情報を得たからである。
警部たちが立ち去った後にカナエルを見ると、彼女はとても深刻な顔をしていた。
「……どう思う、カナエル?」
「まずいですね。ダンジョンが人を食べている危険性があります」
予想以上に恐ろしい答えが返ってきたので、俺は身震いを感じていた。
バイト先の戦いで、訓練を積んでいない一般人でも魔物を相手にある程度は戦えることはわかっている。
それが、邪な心を持つ悪霊や精霊に操られでもすれば、公安刑事と言えど下手をすれば病院送りにされるだろうし、公安刑事が乗っ取られでもすれば一大事になるだろう。
「……でも、昨日の一件があるから、このアパートから動くのも危険だよな」
そう伝えると、カナエルも困り顔になった。
「そうですね。昨日のような襲撃が再び行われれば、我々抜きで持ちこたえるのは難しいと思います」
ここは、公安刑事たちの手腕に任せるしかなさそうだ。
そう思いながら、俺はだんらんのひと時を楽しもうとしていたが、闇の魔の手はすぐそばまで浸食していることに……まだ気づいてはいなかった。
騎士姿の男性(男性)
所属:公安6課
能力:スリーミニッツ・パラディン(グレード★★★★)
3分間パラディン化することができる。3分間を使い切ると4日間使用不能となるが、1秒でも残っていれば一晩寝れば1分回復する。
腕力 B ★★★
霊力・魔法 B→A ★★★☆
行動速度 C→B ★★☆
耐久力 B→A ★★★☆
技量・作戦 B ★★★
索敵能力 D→B ★☆☆
意志力 B→A ★★★☆
経験 B ★★★
好きなモノ:ハンバーグ、倉科けいこ巡査部長(愛らしいから)
嫌いなモノ:細かい作業全般(特にスマートフォンで文字打ち)、倉科けいこ巡査部長(よくいじって来るから)
備考:ヒール(パラディン時のみ)、ファランクス(自分の周囲にいる敵の移動に干渉する能力。パラディン時のみ)
一言:鬼狩警部の部下の1人。欧米系の関係者がよだれを垂らしながら注目する戦士の1人。
普段から、硬い、強い、遅いと前衛の壁役に適した能力を持つが、パラディン化することで一気に敵キャラ泣かせ聖騎士になる。
ドラゴン刑事とも言われる長谷川巡査部長に並ぶ、S玉支部の猛者。




