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22/42

22.数の暴力

 ダンジョンの入り口に陣取り、市街地へモンスターが侵入することを阻止する公安部隊だったが、ゴブリンはなんと第6陣を差し向けてきた。

 その数はなんと18匹。俺はさすがにちょっと待てよと言いたくなった。


「下がってください!」

 再びカナエルが風の広範囲攻撃魔法を発動させると、18匹すべてがバラバラになって崩れ落ちたが、それから20秒も経たないうちに、今度は第7陣の気配を感じた。

 今度の数はおおよそ15。先ほどよりも数自体は少ないが、数の暴力にさらされていることに違いはない。


 大工風の男性が大金槌を振り下ろすと、7匹のゴブリンをまとめて倒した。しかし、コブリンは走り去ることをせずに、そのまま男性に短剣やナイフを突き立ててきた。

「効かねーよ!」


 男性の周囲にはマジックシールドが発動し、コブリンたちの攻撃は尽く弾き返された。

 しかし、シールド自体にもダメージがあり、あちこちがヒビだらけになっている。

 騎士風の男性が、剣で3匹のコブリンを薙ぎ払っても、クノイチがクナイで1匹を倒しても、カナエルが弓矢で1匹を仕留めても、コブリンは構わず大工風の男性を狙ってきた。


「くらえ!」

 大工風の男性は1匹を蹴り倒し、騎士風の男性も1匹を倒し、残りはクノイチがクナイで仕留めたが、すぐに次のコブリンの第8陣が迫ってきた。


 今度の数は16匹である。

 味方の陣形はかなり崩れていたが、カナエルが前に立って風の全体魔法を放つとコブリンは一掃され、公安部隊はなんとか、隊列を整えることができた。


 しかし、次の問題が起ころうとしている。

 度重なる連戦で、仲間たちのMPや体力が削られていたのである。特に大工風の男性は、マジックシールドまでヒビだらけになっているので、どれくらい持つかわからない状態だ。


 決して予断を許さない状況が続くなか、コブリンの第9陣が迫ってきた。

 数は、恐らく15くらいだろう。先ほど全体魔法を使ったカナエルは後ろに下がり、大工風の男性は大金槌を振り上げて、ゴブリンの群れに打ち下ろした。

 今回の攻撃はきれいに決まり、一度に11匹のコブリンを撃破した。

 隣の騎士風の男性も、2匹を一振りで薙ぎ払い、残った2匹は、クノイチがクナイ投げと忍者刀で倒した。


 すると、再び洞窟の奥から多くの足音が聞こえてきた。数は……おおよそ22匹。

 間違いなく第10陣だろう。数の暴力とはいうが、ここまで徹底していると、敵ながらあっぱれと言いたくなる。


 カナエルは先ほどより強い風の気を纏うと、再び最前列に立って、ゴブリンの第10陣が迫ったところで、風の範囲攻撃魔法を放った。

 22のコブリンは残らずなぎ倒され、さすがの彼女もふらついたため、慌てて俺が受け止めた。


「いくらなんでも、これ以上は無理だ。いったん下が……」

 俺の声を打ち消したのは、新手のゴブリンたちの足音だった。しかも、さっきよりも足音が力強い。


「………!」

 暗闇の中から見えたモノは、筋骨隆々のホブゴブリンたちだった。

 数は12体もおり、全員がマジックシールドを展開しながら向かってくる。散々にゴブリンをけしかけられたうえに、こんな連中が来るのだから、さすがの公安の戦士たちも苦笑するしかなかったようだ。


 大工風の男性がひきつった顔で言った。

「マジかよ……」

「し、死んでも……守り切るぞ。6課の根性見せるぞ!」

 騎士風の男性がそう言いながら武器を構え直すと、大工風の男性も大金槌を振り上げた。

「ああ、せめてシールドくらいはぶっ壊してやる!」

 そう言いながら大金槌が打ち下ろされると、前6体のホブゴブリンのマジックシールドが粉々に吹き飛んだ。しかし、屈強な肉体を持つゴブリンたちが向かってくる。


「任せろぉ!」

 騎士風の男性は剣を振り下ろして1体を倒し、忍者風の女性も印を結んだ。

「火遁……かきつばた!」

 その言葉と共に炎が花弁のように広がると、マジックシールドの吹き飛んだホブゴブリンたちに襲い掛かった。その攻撃で4体を撃破したが、7体のホブゴブリンは一斉に大工風の男性に向かってくる。


 俺はここで遂に、銃口をホブゴブリンに向けた。

 狙いは、まだマジックシールドの残っているホブゴブリンだ。まだまだ敵が出てくることを考えると、ムダ撃ちはできない。俺は引き金を引いた。


パァーーーン!


 最初の1発はホブゴブリンの脳天に命中。一発で仕留めた。

 すると、交戦しているにも関わらずクノイチが、驚いた様子で俺に視線を向けてくる。


パァーーーン!


 次の弾も、ホブゴブリンの眉間に命中。

 先ほどと同じように仕留めると、今度は騎士風の男性が口だけでなく目も見開いて俺を見た。


パァーーーン!


 3発目は、ホブゴブリンの喉に命中。

 今度は大工風の男性が、驚愕した様子でこちらに視線を送ってきた。


パァーーーン!


 4発目は、ホブゴブリンの胸を貫いた。

 その巨体が崩れ落ちると、公安刑事の3人はホブゴブリンに視線を戻したが、いずれも驚いたままのようだ。


パァーーーン!


 5発目はホブゴブリンの鼻先を貫通し、これも一発で仕留めた。


パァーーーン!


 最後の1発も、ホブゴブリンの胸を貫いた。

 残った1体はカナエルが矢を命中させて倒し、俺は拳銃のリロードを行うとゆっくりと息を整えた。最初の頃に比べてリロードの負担は少なくなったが、それでも1500メートルを8分台で走り終えたくらいの体力を消耗している。


「…………」

 直後に、俺は暗闇の中から視線を感じた。

 その視線は、公安3人組はもちろん、俺やカナエルの様子を舐めるように観察を終えると、立ち去るように少しずつ気配が遠のいていった。

「今の気配……なんだ?」

 カナエルも、表情を曇らせながら言った。

「わかりませんが、深追いはしない方がいいでしょう」


 とにかく、ゴブリンから街を守るという目的を達した。俺たちは倒したゴブリンたちの耳を切り取ると、ダンジョンを後にしてアパートへと戻った。

忍者コスプレの女性

所属:公安6課

能力:火遁5計(グレード★★★)

サザンカ・カキツバタなど、花を由来とした5つの炎術を持つ。術によって威力や効果範囲が変わる。


腕力    C ★★

霊力・魔法 B ★★★

行動速度  B ★★★

耐久力   C ★★

技量・作戦 B ★★★

索敵能力  B ★★★

意志力   B ★★★

経験    B ★★★  


好きなモノ:花や鳥、虫など自然を感じるもの(ただしクワガタムシ以外)

嫌いなモノ:深酒して呂律が回らなくなった倉科巡査部長(後始末が大変なため)。クワガタムシ


一言:鬼狩警部の部下の1人。本物の忍びなのに、あえてコスプレをするという変わった思考の持ち主である。客観的に見れば、この姿で秋葉原辺りを歩いていても普通だから、諜報活動に適しているともいえる。

ちなみに嫌いなクワガタムシも、触ったり自然に帰したりすることならできるが、嫌悪レベルは深酒した倉科巡査部長<<<クワガタムシである。

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