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21.攻め寄せる者

 胸騒ぎと共に目が覚めると、時間は午前3時を少し回った頃だった。

 身体を少し動かしてカーテンを退けると、ダンジョンは相変わらず真夜中の海や湖のように、暗い光を放っていたが、俺の背筋は再び震えた。

 決して肉眼では見えなかったが、目に見えない何かが暗闇の中を這うように向かってきている。


 隣に目を向けると、カナはいつの間にか目を開けており、背中の翼も実体化していた。

「来ていますね……」

 俺はすぐに隣の部屋に目を向けていた。そこには公安の誰かがいるはずだ。できれば長谷川巡査部長か倉科巡査部長がいてくれると助かる。

 そう思いながら壁をノックして隣の部屋に合図すると、隣からすぐに同じくらいのノック音が返ってきた。どうやら彼らも理解しているようだ。


 間もなく隣の部屋の窓が開くと、3人の若者たちが出てきた。

 ひとりは筋肉質な大工風の男性。もう1人は忍者コスプレをした外国人風の少女。最後の1人はジーンズ姿の普通の男性だ。残念ながら長谷川や倉科の姿はないが、強そうな3人組である。

「お気づきですか皆さん?」

 そう小声で話すと、3人組の1人であるジーンズ姿の若者が答えた。

「ええ、厄介なヤツが来てますね」

「俺たちもお手伝いします」

 そう伝えると、ジーンズ姿の男性は少し視線を上げてから答えた。


「なるべく、貴方がたには安全な場所にいて欲しかったのですが……今回は、相手の数が数です。臨機応変に行きましょう」

 大工風の男性も笑いながら言った。

「後方支援を頼んだぞ……兄ちゃんたち!」

 俺も頷くとリボルバー式拳銃を出し、カナエルも大弓を握っていた。



 今回は、攻めてきた敵をダンジョン内で迎撃する作戦である。

 俺とカナエルを含める、公安の3戦士はダンジョン前で能力を発動して武器や防具を実体化した。


 大金槌を持った大工風の男性と、先ほどまでジーンズ姿だった騎士風の男性が前衛。

 コスプレ少女は、本物のクノイチの姿へと変わると中衛に立つ。

 そして拳銃使いの俺と、長弓使いのカナエルが後衛という配置に自然と落ち着いた。

「行くぞ!」


 騎士風の姿になった元ジーンズ姿の若者が言うと、俺たちはダンジョン内へと踏み込んだ。

 その先はちょうど洞窟の出入り口であり、ここを突破されると文字通りダンジョンを抜けて市街地まで魔物が侵入することを意味する。


 待機すること20秒。無数の足音を耳が捉えた。

 それからさらに10秒すると、聞き覚えのある叫び声と共に魔物の気配をしっかりと感じた。この雰囲気だと……ゴブリンたちだ!

 暗闇の中から、およそ7匹くらいのゴブリンが突っ込んでくると、大工風の男性は大金槌を振り下ろして衝撃波を発生させた。

 ゴブリンが一度に7体全てが倒れるのだから、なんとパワフルな攻撃だろう。


 しかし相手はゴブリンである。すぐに新手の第2陣が押し寄せてきた。その数は8匹。

 今度は騎士風の若者がいっぺんに2匹を切り飛ばしたが、残る6匹が押し寄せるようにこちらに向かってきた。忍者風の女性が忍者刀で1匹。カナエルが風魔法で1匹、水魔法で2匹を吹き飛ばし、残った数は2匹。

 俺はとっさに手前のゴブリンの顔面に蹴りを入れて倒し、最後の1匹はカナエルがナイフで倒した。


 ホッとしたのもつかの間、ゴブリンの第3陣が迫ってきた。数は11匹。

 この敵は、大工風の男性が大金槌を振り下ろして9匹をまとめて吹き飛ばした。残る2匹のうちの1匹は忍者風の女性がクナイを投げて倒し、残りはカナエルが風魔法で倒した。


「くそ、思った以上にたくさんいやがる……」

「こんなのが市街地に出たらとんでもないことになるぞ!」

 前衛の2人が愚痴った後に、ゴブリンの第4陣が迫ってきた。数は14匹!

「下がってください!」


 カナエルは前衛よりも前に出ると、霊力を目に見えるほど高めていき、近づいてきたゴブリンたちの前に手をかざした。

「ワールウインドっ!!」


 放たれた無数の風の刃は、次々と向かってくるゴブリンの肉体を切り刻んでいき、洞窟内が静けさを取り戻した時には、ゴブリンだったもの……つまり肉片だけが辺りに散らばっていた。

「さすがはカナエル!」

 そう賞賛の声を上げた直後に、背筋に悪寒が走った。

「ま、マジか……!?」


 なんとゴブリンには第5陣があったのである。その数はなんと17匹。

 カナエルは先ほど、大規模な魔法を撃ってしまったため少し、術のチャージを行わなければならない。急いで後方に退避させると、今度はクノイチが前に出た。


「火遁……サザンカの術!」

 彼女が術を放つと、現れた炎が花のサザンカのように広がってゴブリン5匹をいっぺんに火だるまにした。そのあとで、大工風の男性が大金槌を振り下ろすと8匹のゴブリンを吹き飛ばした。

 騎士風の男性も2匹を切り裂くも、残った2匹がこちらに向かってきた。


 俺はすぐに銃口をゴブリンに向けるも、カナエルは弓矢で1匹、更に接近してナイフで残る1匹を仕留めてみせた。

「おいおい、俺だって6発撃てるんだぞ?」

 そう言ったら、彼女は険しい顔をしながら洞窟の奥を睨んだ。

「いいえ。切り札は温存しておくものです……特に、この奥にいる者が現れるまでは……」


 その直後から、猛獣のような唸り声が聞こえてきた。

 果たして、この小鬼たちをけしかけてきている敵は何者なのだろう?

大工姿の男性(男性)

所属:公安6課

能力:グレートハンマー(グレード★★★)

重量物を振り下ろした時に周囲に衝撃波を発生させる。巻き込まれた者は大ダメージを被る。


腕力    A ★★★★

霊力・魔法 C ★★

行動速度  C ★★

耐久力   B ★★★

技量・作戦 C ★★

索敵能力  D ★

意志力   B ★★★

経験    B ★★★  


好きなモノ:日曜大工、木材の香り、木目、茶菓子

嫌いなモノ:アスベスト、シロアリなどの害虫


一言:鬼狩警部の部下の1人。いつもタオルを鉢巻代わりに巻いており、日焼けしていることが多い。

茶菓子の中でも特に好きなのが、団子やどら焼きだという。疲れたときに食べると頭がすっきりするとか何とか……

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