15.再び登場する鬼狩警部
翌朝、9時ごろになってやっと起きた俺は、ゆっくりと伸びをした。
すでに起きていたカナエルことカナは、ぼろきれを雑巾代わりに窓の掃除をしている。
「おはようございます。ゴロー様」
「おはよう」
そう答えると、俺は再び大あくびをしてから伸びをした。昨日はアルバイトをした上に、化け物と戦闘を行ったので、さすがに疲れた。
今日くらいはゆっくりと休みたいものだ。そう思いながら起き上がり、トイレや食事の支度などを整えているとインターホンが鳴った。
【ピンポーン!】
俺は洗面所に居ながら、玄関先に鬼狩警部が来ていることを察した。
天啓とやらを感じてからというもの、こういう第6勘が鋭くなってとても助かるものだ。まあ、昨日のニセ稲荷の言葉から、いいことばかりという訳ではなさそうだが。
「はーい!」
そう言いながら玄関を開けると、鬼狩警部はにっこりと笑いながら言った。
「比名さん。お話がありますので……今、お時間はよろしいでしょうか?」
こちらとしても、昨日のバイト先の騒動がどうなったのか気になるところだ。
速やかに警部を部屋の中へと招き入れると、彼は口頭で説明しながらテーブルの上に封筒から出した資料などを出し始めた。
どうやらバイト先は俺が思っていた通り、当分の間は営業を見合わせるという。
敷地内は閉鎖されて、警察官や公安職員たちが定期的に巡回も行うようだ。そして警部はニセ稲荷の映った資料と共に、モンスターの体の査定額の入った資料を出してきた。
「手取りで391万円……車が1台買えるような金額ですね」
そう伝えると、彼は深刻な顔で頷いた。
「今回の問題は、異界からやってきたはずのモンスターが、我が国の妖怪のような姿をしていたことです」
横目で見ると、カナエルの表情が曇っていた。どうやら彼女も、警部と同じことを心配しているらしい。
俺もまた、頷きながら言った。
「よく理解できます。昨日の化け物……まるで、お稲荷様の姿を真似しているようでした」
「本部に問い合わせてみたのですが、このような事例は今まではありませんでした。今までは起こらなかったことが……このS県で起ころうとしているように思えるのです」
じっと資料に目を通すと、キツネの化け物の強さが記されていた。
総合戦闘力はBランクの上位。公安のモンスター討伐部隊1個小隊で、戦うことを推奨する強さである。もし、あれほどのモンスターがあちこちに出現したら、公安だけでは手が回らなくなることは、容易に想像できる。
「あのニセ稲荷ですが……なぜあのような姿で現れたのでしょうか? 日本には他にも妖怪はいくらでもいるはず……」
鬼狩警部は「これは証拠ではありませんが……」といいながら、20年前の町の地図を出してきた。
俺のバイト先である、ドラッグストアの場所には小さな神社があり、その場所に丸印が書かれている。
そう言えば、店が異界と繋がったとき……お社があったような……
「この神社、今はどうなっているんですか……?」
「調べてみたところ、この神社はお店が出店する際に、近くの神社と統合されたようです」
その言葉を聞いたカナエルも頷いた。
「実は昨日、ゴロー様の危険を知らせて下さった方がいらっしゃったのですが……」
俺は、その話にすぐ興味を持った。このアパートの在り処を知っているのは、公安の人と母親くらいだからである。
「どんな人だった?」
「白と赤の民族衣装のような服を着た女性でした。頭にはキツネを思わせるお面をつけて、変わった靴を履いていました」
思わず鬼狩警部を見ると、彼も察した様子でこちらも眺めていた。
「……今度、お参りに行くことにします」
「その方が良さそうですね」
鬼狩警部の出した書類にサインすると、彼は思い出したように言った。
「そう言えば、前の報奨金は口座に届きましたか?」
「……そういえば、まだチェックしていませんでしたね。少し確認してみます」
俺はパソコンを起動すると、S玉銀行のホームページにアクセスした。
比名吾郎の口座には、ありえないほどの額が入金されており、振り込んだ相手が公共機関でなければ、一瞬で電話が来そうな状況だと思える。
「た、確かに……受け取りを確認しましたが……なんか赤文字で注釈が書かれてますね」
「これは……直接出向いて説明する必要がありそうですね」
そう鬼狩警部が答えたとき、カナエルは言った。
「そういえばゴロー様……郵便物が投函されていましたよ。こちらの銀行という団体のものでは?」
「ちょっと見てみよう」
確認してみると、確かにS玉銀行からの郵便物だった。中を確認してみると、多額のお金が入金されたので、銀行側が俺に説明を求めているようである。
確かに、公共機関が送ったといっても、年中金欠だった男の口座に2000万円以上の大金が送られてきたら、銀行側だって驚きもする。
特に最近は、マネーロンダリングも問題になっているわけだし、細かくマネーの動きをチェックしないと、内外からうるさく言われるのだろう。
「後で、銀行に行ってくるか……」
買い物をしていたお母さん(女性)
所属:不明
能力:スパイクシールド(グレード★★)
トゲ付きのシールドを出す能力。普段は60センチメートルくらいの大きさを出せるが、イメージ次第で1メートル台の大盾を出すこともできる。60センチメートルならショルダータックルで敵にダメージを与えることができる。
腕力 C ★★
霊力・魔法 C ★★
行動速度 D ★
耐久力 B ★★★
技量・作戦 D ★
索敵能力 C ★★
意志力 C ★★
経験 D ★
好きなモノ:子供たち、買い物、食後のだんらん
嫌いなモノ:近所のママ友のマウント合戦(うんざりするが、孤立したくないため我慢している)
一言:一般的な日本のお母さんを絵にかいたような人物。
基本的には男性は攻撃的な能力を持ち、女性は危機を回避したり防御する能力を目覚めやすいが、もちろん例外もいる。
また、男性の方が筋力や耐久力が高くなりやすく、女性は索敵能力や霊力が上がりやすく、合計すると同じくらいになる傾向がある。




