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14.オーバーキルへの答え

 キツネの化け物から分裂した、仔キツネどもは不敵に笑っていた。

『天の……愛コ! 旨ソう!!』

 仔キツネが飛びかかって来ると、俺はカウンターで銃弾を浴びせた。

 攻撃を受けた仔キツネはその場に崩れ落ちたが、相手には数がいる。次の仔キツネが飛びかかって来る。


 くそ、なんて相性の悪い相手だろう。

 俺の持つ拳銃はリボルバー式だ。一度に込められる弾は6発しかないし、そんなにたくさんは撃てない。この大狐から分裂した、仔キツネどもはそれを見透かしたように襲ってくる。


 仔キツネたちと交戦していると、俺の拳銃の弾は残り1発となっていた。

 カナエルも他の仲間たちも、どこからともなく現れた二足歩行の動物兵たちを相手にしていて応援は期待できない。コイツは……俺一人で倒すしかないのか!


 また1匹、仔ギツネが向かってくると、俺は最後の1発を撃った。

 これでもう弾はない。リロードか? だけど、まだ仔ギツネの化け物は20匹くらいいる。次のキツネが飛びかかってきたので、俺は蹴りで対処した。

 やったか……!?


 蹴飛ばしたキツネは壁に頭と背中を打ち付けて動かなくなった。どうやら、俺の脚力でも、この魔物は倒せるようだ。

 しかし、その考えは無しだ。こいつらは、俺の拳銃にもう弾がないことを見越したのか、次々と牙を見せながら俺との距離を詰めてきやがる。どうすればいい!?

 このままじゃ、数の暴力で……本当に喰われる!


 足を後ろに下げると、俺の足にはサッカーボールが当たった。

 これは先ほど、子供が怪物にぶつけたものだ。これであのデカかったキツネの怪物は、いくつにも分裂して今のような状況になってる。


「待てよ……」

 そこまで思い出すと、俺はあることに気が付いた。

 この怪物どもに、通常弾はオーバーキルなのではないだろうか。今のままではリロードはできて、あと1回だ。だけど……もう少し威力の低く、簡単に出せる弾頭はないのだろうか。


 そう思った直後に、仔キツネの何匹かがカナエルに攻撃を仕掛けた。いけない、彼女は奥から攻め寄せてくる動物兵どもを単独でけん制してるんだ。こいつらに側面を取られたら……一気に食いつかれる!


 彼女は左手で風系魔法を飛ばし、襲ってきたキツネたちを一気に3匹も倒したから、何とか事なきを得たが、鈴木や大石さんの方もギリギリだ。このままでは……い、今、カナエルが仔ギツネに腕を食いつかれた!

 俺は全身で命の危機を感じると、頭の中に文字が浮かび上がった。


――キャストブレッド弾!


 俺は直感的に、鉛で通常弾の代わりのモノと作ることを思いついた。

 鉛は柔らかいうえに熱にも弱いから、攻撃力も有効射程距離も短くなるが、これだけキツネたちに追い詰められているのなら外しようがない!


「リロード!」

 そう言いながら銃弾を補充すると、あまりの負担の軽さに驚いた。

 通常弾が長距離走の負担に例えると、鉛……いや鋳造弾は同じ距離を歩く程度の体力の消耗だ。


 俺は狙いを定めると、次々と弾丸を発射した。


 想像した通り仔ギツネたちには、この程度の弾丸でも致命傷になるようだ。いや、通常弾のように貫通しないで体に残る分、キャストブレッド弾の方がこいつらには相性がいいかもしれない。

「リロード!」


 連続して仔ギツネの怪物を撃つと、俺は再びリロードをかけた。

 どうやら、通常弾1発と鋳造弾4・5発が同じくらいの負担のようだ。


 キツネたちを無事に全滅させた俺は、カナエルのフォローに入った。

 すでに動物兵の数は少なくなっていたが、こいつらは散会して戦っており、カナエルは敵の素早さと隠れる場所の多さに苦労しているようだ。

 だが、俺にとっては、敵はいい的である。 

「カナエル、鈴木たちのフォローに!」

「わかりました!」


 彼女を鈴木たちのところに向かわせると、戦いの流れは一気にこちら側に傾いた。

 今までは防戦一方だった彼らも、カナエルのエンジェルオーラの効果で戦闘力が増したようだ。


 どれくらい有利になったのかと言えば、子供がサッカーボールを蹴る威力が、二足歩行の悪魔動物たちにとって致命傷となるほどだ。

 客の大石さんがバールを振り下ろすと、周辺には衝撃波のようなものが走って、3・4体の悪魔動物たちが一度に消し飛んでいく。

「なんだ、サクサク倒せるじゃないか!」

「気持ちよく無双できますね!」


 気を良くした大石さんや、子連れ親子、更には鈴木まで撤収するという目標を忘れて、悪魔動物を退治することを気持ちよさそうに行っていた。

 間もなく、カナエルは大声で叫んだ。

「あまり私から離れないで!」


 その直後に大石さんはバールを振り下ろしたが、悪魔動物の1体を倒すことしかできなかった。彼はカナエルからだいぶ離れており、エンジェルオーラの支援をあまり受けられなくなっていたようだ。

 鈴木や大石さんは、すぐにカナエルの側まで後退し、俺が先頭に立って銃を構えると、悪魔動物たちも散会したため、店外まで撤収することができた。


 店外の駐車場まで出ると、店内にいた多くの客が駐車場の奥まで退避しており、パトカーや警察官まで到着していた。

 店長だけでなく、ゾーンマネージャーも慌てて走ってきた。

「皆さん、お怪我はありませんか!?」

「ええ、大丈夫です」


 どうやら気を抜くと実体化した武器は消えるらしく、バール、ナイフ、スパイクシールド、サッカーボールのいずれもが消えていた。

 俺も店長と話をしていると、警察関係者の中に鬼狩警部が混じっていることに気が付いた。


 話し終えると、俺は何気なく鬼狩警部に近づいて話しかけてみた。

「警部。やはりいらっしゃったんですね」

「このお店は、比名さんのアルバイト先でしたか……」

「はい。まさか、こんなことになるなんて……驚きました」


 鬼狩警部は、険しい表情のまま言った。

「我々は店長と共に、店内に人が取り残されていないか……もう一度確認してきます」

 店長もエリアマネージャーと相談した後で言った。

「救急車も呼んでいるから、ケガをした人はすぐに病院に行って欲しい」


 俺は鈴木や大石さんと視線を合わせると、やがて言った。

「特にけがはありません」

「わかった。今日の分の給金は就業時間まで出すから、アルバイトは先に家に帰って欲しい」

「はい。ではお先に失礼します……」



 バイト先のことを鬼狩警部に任せると、俺はカナエルと共に家へと急いだ。

「はぁ……この様子だと、当分の間はバイト先はお休みだろうな」

「そうでしょうね……」

 もしかしたら、もう二度と店は営業できないかもしれない。まとまったお金は入るとはいえ、これから先は大変になりそうだ。

 そう思いながら歩いていると、おや……俺の視界の隅に、影のようなモノが動いたような気がした。


 カナエルも表情を変えて同じ方向を見ているので、見間違いではなさそうだ。

「なあ……今、なにかいなかったか?」

「ええ、今の気配は……明らかにこの世界の生き物や精霊とは、かけ離れていました」


 彼女は、険しい顔をしたままつぶやいた。

「シャドークリーチャーで……なければいいのだけど……」

大石猛(男性)

所属:不明

能力:メイド・イン・オオイシ・バール(グレード★★)

鉄の棒を出す能力。一見するとシンプルな能力だが、彼の場合は腕からだけでなく背中や足からも出現させることができるため、グレードは最初から★2つとなっている。



腕力    B ★★★

霊力・魔法 D ★

行動速度  C ★★

耐久力   C ★★

技量・作戦 D ★

索敵能力  D ★

意志力   D ★

経験    D ★ 


好きなモノ:ウインドウショッピング、仕事後の入浴

嫌いなモノ:仕事先の朝礼(上司がムダに長い話をするため)


一言:健康体の一般的な成人男性。万が一ダンジョンに入り込んでしまっても、ゴブリンやコウモリといった下級悪魔には勝てるが、ヤマイヌが相手となると互角。クマ系の魔物には例外が起らない限りは勝てない。

 例外とは、近くにエンジェルや八百万の神々がいることである。その場合は、能力にブーストがかかるためCクラスのボスと互角に戦うことも可能。もちろん、剣道や柔道といった武術を習っている人の方がより強い神ブーストを得られる。

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