☆隠しアイテム探そう! サマンサ編 - 改訂 -
お店に入ると、あたしたちは試着室にベルさんを押し込んだ。
「すんません、ベル様……」
「うむ、妥当な判断だ」
「ちょっと待ってて下さい、似合いそうな服見繕ってきますんで」
「ホリン、お前はいいやつだな」
ホリンが服を選んで、あたしは店のお姉さんの気を引いた。
他の服も気になって戻ってきたって、嘘を吐いちゃった……。
「なら、これなんてどうかしら?」
「あ、あたしにはちょっと……露出が多すぎる気がします……」
「男の目なんて気にしちゃダメよ。自分が好きな格好をすればそれでいいのよ」
「で、でも、お腹が出るのは、ちょっと……」
最初は嘘だったけれど、話していたらもう1着欲しくなった。
男は女のヘソに弱いって、お姉さんに教わった!
ホリンに見られないように、服を包んでもらうことにした……。
「な、何をするっ、ホリンッッ?!」
「すんません。でもその頭もちょっとお行儀がよすぎるっす」
「朝晩、ちゃんとクシを入れている」
「だから目立つんすよ」
「だがこの格好、どうもだらしなくないか……?」
「それが普通の男です。……さ、コムギに見せてやりましょう」
あっちも終わったみたい。
あたしも店のお姉さんも更衣室に注目した。
「わぁ……!?」
「ぬぅぅ、どうも落ち着かん……」
人間って、服装と髪型を変えるだけでこんなに変わるんだ……。
貴族の若君にしか見えなかったベルさんは、やり手の剣士風に姿を変えていた。
服は絹から丈夫な麻に。
サラサラヘアから、ボサボサ頭の無造作ヘアになっていた。
「どうだ、コムギ? 変ではないか……?」
「ううん、バッチリッ! これなら町の剣士様にしか見えないよ!」
「そこはカッコイイって言ってやれよ」
「カッコイイ! まるでユリアンさんみたい!」
「おい、そりゃ褒め過ぎだろ……」
ユリアンさんを引き合いに出したら、ベルさんは確かめるように自分の姿を見回した。
ベルさん、ユリアンさんに憧れているのかな……。
次第にベルさんは誇らしげになっていった。
王様が海賊に憧れてもいいと思う。
ユリアンさんはそれくらい魅力的な人だ。
「ならばよい。店主、金はこれだけあれば足りるか?」
機嫌をよくしたベルさんは、お店のお姉さんにおっきな金貨を渡して驚かせた。
それじゃバレバレだって、ホリンに怒られていた。
「金銭感覚は隠密行動に必要不可欠ということか……」
「まあたぶん……。俺らには一生関わりのない悩みっすけどね……」
こんな大金は受け取れないとお姉さんが言うので、結局ホリンがお金を立て替えた。
ベルさんはあたしと同じような世間知らずだった。
最初は怖い雰囲気だったけれど、ますます親しみが湧いてきた。
『コムギ、すまないが私の話を聞いてくれるか?』
だけどこの話は、ベルさんのイメチェンだけでは済まなかった。
普段物静かで口をはさまない攻略本さんが、やけに真剣な声であたしを呼んだ。
『たった今、私のページが2つ増えたようだ』
「え……? 攻略本さんって、急にページが増えたりするの……?」
『こんなことは初めてだ……。いやともかくだ、私の内容を今すぐに確かめてはもらえないだろうか? サマンサのページに違和感がある』
「ちょっと更衣室借りるね!」
更衣室に駆け込んで攻略本さんを開いてみた。
ページがいきなり増えるなんて半信半疑だ。
だけど本当に新しいページが増えていた!
それはキャラクター紹介だった。
左のページがサマンサ王で、右のページがサマンサ王の変装姿だって、挿絵付きで説明が入っていた!
しかも驚きはそれだけじゃない。
右側の変装姿は、細部こそアレンジされているけど、今のコーディネートそのまんまだった……。
『大発見だ』
「発見……?」
『そうだ、これは発見だ。喜べコムギ、君たちは歴史を変えたようだ』
「え……そういう大げさな話……?」
『そうだとも。君たちとサマンサ王の出会いが、彼に変装の趣味を与えた』
それって、あたしたちに褒められて、自信を付けたから……?
わーー、それにしても絵にすると、ますますカッコイイ人だなぁ……。
『歴史は変えられる。アッシュヒルの運命も、君ならば変えられるということだ』
「あっ、そっか!! 攻略本の内容が変わったってことは、そういうことなんだっっ!!」
あたしたちはアッシュヒルの運命を変えられるか、ずっと不安だった。
どんなにがんばっても何も変わらないんじゃないかって、弱気になる日もあった。
でもそれは違った。
未来は変えられる。攻略本の内容が書き換わったことが証拠だった。
「やったねっ、やったね攻略本さん!」
『ああ……。あらためてとなるが、どうか頼む。私の代わりに故郷アッシュヒルを救ってくれ……』
「うん! あたしに任せて!」
あたしはもう一度、追加されたページをニンマリと微笑みながら確かめた。
それから更衣室から飛び出して、2人に言った。
『さあ、宝探しに行こう!』と。
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