・隠しアイテム探そう! サマンサ編 - この国暑い!! -
立派な宿を出て、10歩くらい歩いてあたしは青空に叫んだ。
「あっつーーーーいっっ!!」
「田舎じゃないんだから町中でいきなり叫ぶなっ!」
「だって暑いよっ、さっきより暑い! 何この国っ!?」
「南の国ってのはそういうもんなんだよ」
同じ田舎者のくせにホリンは知ったかぶった。
見上げれば紺碧の青空!
爽やかで凄く好きだけど、真夏みたいに燦々とした日差しが降り注いでいた!
ユリアンさんと歩いた時は薄曇りだった。
サマンサがこんなに暑いなんて、攻略本には載ってなかった!
「提案だけどよ、ちょっと奮発して服を先に買わないか……?」
「そうだね、そうしよ……。えっと、服屋さんは……」
『では私が案内しよう。倒れられても困るからな』
攻略本さんに導かれて、あたしは日陰の多い裏通りに入った。
裏通りではこんな暑さなのに、子供たちがボール遊びをしていた。
男の子っていいな……。
上半身裸でも恥ずかしくなくて……。
「そうか、俺も脱げばいいのか……」
「ちょ、ぬ、脱ぐなぁーっっ!!」
ホリンとわーわーやってたら大通りに出た。
少し先に服屋さんを発見して、あたしたちはお店の中に駆け込んだ。
・
「えっ、安い!! 何このお値段っ!?」
「なんか怪しいくらい安いな、ここの服……」
お店の中は過ごしやすかった。
それにかわいい服もいっぱいだ。
あたしはハンガーにかけられた沢山の洋服に飛び付いていた。
「この服とか、モクレンで同じの見たことある! これの3倍くらいの値段だった!」
あたしは興奮した。
洋服がこんなに安く買えるなんて、思ってもいなかった!
この国、凄い!
あたしが興奮していると、そこにお店のお姉さんがやってきて微笑んだ。
「あ、すみません、コイツ騒がしくて……」
「あ、お邪魔してます! 素敵なお店ですね!」
「だからよ、そういう馴れ馴れしい挙動が田舎者っぽいんだって……っ」
「別にいいじゃない。ホリンは気にしすぎ」
「あらあら、かわいいお客様ね。肌が白いってことは、外国からきたのかしら……?」
「はいっ、海の向こうのアッシュヒルからきました!」
「はぁぁ……っっ」
失礼なホリンは無視しよう。
あたしとお店のお姉さんは一緒に服を選んだ。
「でも、なんでこんなに安いんですか?」
「んーー……それは多分、船で運んだからじゃないかしら? この国は南方の植民地から、生糸や羊毛を買って作ってるの」
「へーー……」
「お前、あんまわかってねーだろ?」
「なんとなくはわかるよー! 町だとパンとかお野菜が高いようなもんでしょ?」
「ふふふ……本当に田舎からきたのね」
ホリンは田舎者扱いされるのが嫌みたい。
あたしは迷っていた服の中から1着取って、試着室ってところに入った。
「大丈夫、彼氏がのぞかないように監視しておくわ」
「のぞかねーっすよっ! 俺も着替えます、そこ借りますね!」
お店で服を脱ぐのって、なんかドキドキする……。
でもホリンも別の試着室に入ったみたいだ。
あたしは気になっていた白と薄緑色のワンピースに袖を通した。
素材は絹。肌に触れるとサラサラとして凄く気持ちよかった。
「お、お待たせしました……。あ……」
「お、おお……」
試着室を出ると、着替え終わったホリンがあたしを待っていた。
なんか変な声を上げて、あたしのことをやけに熱心に見つめている……。
「そんなに見られると、恥ずかしいんだけど……」
「お、おお、すまねぇ……なんか、意外でよ……。まるでお姫――いや、なんでもねぇよ……っ」
なんだか嬉しくなってきた!
涼しくて、オシャレで、ホリンが見つめてくれるこの服が気に入ってしまった!
「ホリンも似合ってるよ。カッコイイと思う」
「じゃあこれにするか。お姉さん、お会計を頼みます」
ホリンは肩の出るシャツと半ズボンに着替えている。
ズボンにはポケットが付いていて、生地もとても丈夫そうだった。
「お買い上げありがとう。ふふ……たくましい肩をしているのね」
「うわっっ、ちょっ?!」
でもホリンがお姉さんに肩を触られて、顔を赤くしているところは気に入らない!
いつも剣を振り回しているだけあって、顔に似合わない凄い筋肉だった!
「いくよっ、ホリン! もう船旅で2日も使ってるんだからっ、1日でも早く帰らないとロランさんとフィーちゃんに迷惑だよ!」
「さっきまで笑ってたのに、なんで急に不機嫌になるんだよ……」
あたしはお姉さんに手を振って、ホリンを引っ張ってお店を出た。