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・隠しアイテム探そう! サマンサ編 - 黄金の国 -

 船旅で疲れたし、もうちょっと休むつもりだった。

 だけどホリンは元気そうだったし、あたしは攻略本さんを取って彼の隣に座った。


「で、この国にはどんな隠しアイテムがあるんだっ!?」


 アイテムの詳細はホリンには秘密にしていた。

 到着してからのお楽しみにした方が、楽しさが膨らむから。


「えっとね……。A.鍋のふた+99」

「な、鍋の、ふた……?」


 ホリンには見えないけど見えるように本を寄せて、朗読してあげた。


――――――――――――

 A.鍋のふた+99

 B.バリアリング

 C.小さ過ぎるメダル

 D.2800G

 E.力の種

 F.鉄壁の実

 G.氷の盾

 H.幸運の林檎

 I.不死鳥の羽根

――――――――――――


「氷の盾、バリアリング!! どっちも超レア装備じゃねーかっ!!」


 教えてあげると、ホリンは興奮して身を寄せてきた。

 ちょっと近い気がして、あたしは肩1つ分だけ距離を取った。


「氷の盾って言うくらいだから、凍ってるのかな……?」

「凍ってなきゃ氷の盾とは呼ばないだろ。だけどその盾、なんか涼しそうでいいなーっ!」


「うん、そうだね! この国暑いし!」


 サマンサは綺麗な国だ。

 だけど暑い。町の人たちは大胆な薄着だった。


「あ、そうだ! 普段使いしないならうちの家の倉庫に置かせてよ!」

「あ? まあいいけど、なんでだ?」


「決まってるじゃない! うちの倉庫を冷やすの!」


 そしたら食材の鮮度も上がる。

 うちのパンがもっと美味しくなるかも!


「おい……」

「なーにー?」


「さっき俺……超レア装備だって言っただろっ!? 氷の盾で倉庫を冷やすとかっ、んなの聞いたことねーよっ!?」

「そうかなー? 戦いで使われるより、生活の役に立った方が氷の盾さんも嬉しいと思うけど……」


 この件についてはホリンと全く意見が合わなかった。

 でもパンの効果が上がるかもって言ってみたら、あっさり折れてくれた。


「おかしなことと言えばよ、この鍋のふた+99ってなんだ? 99回強化されたって意味だよな……?」

「きっと、凄いお鍋のふただよ。ホリンがいらないなら、それあたしにちょうだい!」


「おう……。押し付けられてもいらねーって突き返すからよ、安心しろよ……」


 『E.力の種』『F.鉄壁の実』『G.氷の盾』『H.幸運の林檎』の方は、あたしたちの旅の目的そのものだ。


 これは何が何でも、絶対回収して帰らなきゃ。


『不死鳥の羽根は必ず確保してくれ。これは死にかけの人間を蘇生してくれる超希少品だ』

「えー、そうなんだー!? フィーちゃんのおみやげにしようかと思ってた!」


『彼女に持たせてもいいかもしれないな』

「え、そうなの?」


『保険くらいにはなるだろう。あの塔は最前線だ……』

「あ、そっか……」


 フィーちゃんのことが心配になった。

 けど今は考えても仕方ない!

 あたしは立ち上がって攻略本さんをバッグにしまった。


「その本と何を話してたんだ?」

「フィーちゃんの話。さ、そろそろお宝探しに行こ!」


 あたしが手を引っ張ろうとすると、ホリンが逃げるようにイスから飛び上がった。

 村では許してくれるのに、なんで町では嫌がるんだろう……。


「もう少し休もうぜ」

「平気だよ!」


「俺が疲れてるんだ」

「そんなふうにはちっとも見えないけど……?」


 結局、もう少しだけ休んでから行くことになった。

 今は昼だし、外はもっと暑いと言われた。


 しょうがないしあたしはベッドに寝そべって、バッグの中の攻略本さんを顔の上で開いた。

 大きくて、やわらかくて、ふかふかの寝心地だった!


『長い船旅で君は疲れている。君は疲れを自覚していないだけだ』

 

 攻略本さんに言われてホリンを横目で見た。

 ホリンはあたしを盗み見ていて、目が合うとごまかすようにソファーに寝そべった。



 ・



 攻略本の情報からは、ストーリーの全てをうかがうことはできない。

 どんな展開になるのか匂わすだけで、具体的な情報は避けて書かれていた。


『もしや、未来のサマンサで何が起きるのか、興味があるか?』

「あ、うん……ある」


『ここでの冒険は陰惨だった』


 攻略本さんの話を要約すると、サマンサでの物語はこんな感じだ。


 勇者は海賊ユリアンの船に乗ってサマンサにやってきた。

 そこで学者さんから、金鉱山に危険が迫っていることを知らされる。


 だけどそれをこの国の王様に直訴しても、王様は信じなかった。

 一緒に謁見した学者さんは、悪い大臣の命令で牢屋に入れられてしまった。


 勇者は学者さんを助けるために、金鉱山へと証拠探しに向かった。

 鉱山に入るために四苦八苦して、ようやく入れるようになったかと思えば、そこに王様が現れた。


 王は勇者の道を阻んだ。

 だけど、学者さんが危惧していた大事件が起きた。


 金鉱山からおびただしい数のモンスターと毒があふれ出した。

 そんな中、勇者と王様は坑道に乗り込み、そこでボスって怪物を力を合わせて倒した。


 王と勇者は和解し、学者さんは解放され、金鉱山は閉鎖された。

 あんまりめでたくないけど、めでたし、めでたし……。


『悪い男ではないのだ。王の立場からすると、金鉱山の閉鎖は避けたいところだった』

「でも、最後は閉鎖にしちゃったんでしょ……?」


『ああ、最後は手を貸してくれた。本当に愚かな王なら、金の採掘を止めなかっただろう』

「ふーん……」


『サマンサでの物語は、黄金に目がくらんだ人々の物語だった』


 アッシュヒルに少し似ていると思った。

 物語の都合で悲惨な事件が起きて、多くの人が苦しむ。


 そう思うと、他人事に聞こえなかった。

 あたし、もっとがんばらなきゃ……!!


「ホリンッ、そろそろ行こ!!」

「おう、これ以上は休んでくれそうもねーな……。よし行こうぜ、コムギ!」


 あたしたちは元気いっぱいで宿を出た。

 さすがに暑いと思ったのか、ホリンは脱いだ鉄の鎧を着直そうとはしなかった。


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